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テクマクマヤコン テクマクマヤコン

「ひみつのアッコちゃん」という赤塚不二夫さんの漫画がテレビで流行っていた。昭和40年代、私は幼稚園児だった。

「ひみつのアッコちゃん」はアッコちゃんという女の子が、困った時コンパクトを開いて「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、〇〇になあれー!」と言うとあら不思議、大人にでも男の子にでも犬にでも変身してしまうのだ。

そして、そのコンパクトが売られていてテレビのCMの中では女の子がそれを使って変身していた。

アッコちゃんに憧れていた私は、オモチャ屋さんでアッコちゃんのコンパクトを見つけて、すぐにおじいちゃんに頼んで手に入れた。

包みを開けるが早いか、物陰へ行き、(アッコちゃんはいつも隠れて変身していた)「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、犬になあれー!」とやってみた。

しかし、何度やっても犬にならない。コンパクトの真ん中にルーレット型のクルクル回る物が貼り付けてあって、それを回すと女の人や犬や男の子とかの絵が出てくるのみである。

私はニセモノだ!と思った。そしてまたおじいちゃんに、このコンパクトはあかん、ニセモノやった!と泣いて、今度は違うコンパクトを手に入れた。

また走って物陰へ行きやってみたが、これもまたニセモノである。今度のはコンパクトに貼ってあるシールの角度によって違うキャラクターが見えるのみである。
私はガッカリしてまた、おじいちゃんに、あかん、これもニセモノや!と言った。

おじいちゃんは何度も泣かれて嫌になってきたのか、
「何で、どこがあかんねん?」と聞いてきた。「テレビみたいに変身できへん」、と話すと呆れた顔で、
「そんなん当たり前や。オモチャやがな!」と言ったので、私は
「でも、女の子が変身してたで!」と泣きながら訴えた。

テレビと現実の区別がつかない孫娘を、おじいちゃんは困った顔で見ていた。

私はどこかにホンモノがあるに違いない、と思いたかったが、この日、テレビでやってるおもちゃのCMが全部本当でないことに気づいてしまった。
夢が敗れた悲しい出来事である。


#おもちゃ #魔法 #テレビ #思い出 #笑い話

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