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リップスラーの話(Aug, 2020 ver.)

おはようございます。

河野企画代表、チューバ奏者、指揮者の河野一之です。

今日はリップスラーの話。

リップスラー

音と音の変わり目でタンギングを行わず、滑らかに繋がっているかのように演奏する技法がスラーだ。

それを金管楽器における各管が持つ倍音間で、同じ管=運指で唇の振動数だけを変え各倍音へ滑らかに上下する奏法がリップスラーだ。

・滑らかに音を変えるだけならスラー
・運指を変えず=響かせる管を変えずに倍音間で音を上下させるのがリップスラー

簡単に言うと、運指やスライドを動かさないで音を変える技術がリップスラー。Lagatoな演奏、例えばこういうBachの演奏もスラーやリップスラーを多用する。

この「片翼の祈り手」のような=Legatoではない曲ではあまり出てこないよね。

と言う風にリップスラーは滑らかに同じ倍音の中にある音と音を繋げる奏法で、これを使うと音楽表現の幅が大きく増える奏法だ。

上の動画でも解説はしてるけど、今日はそのやり方Aug, 2020ver!

金管楽器で音がなる原理

これが理解できてアウトプットまでできるようになれば90%できている状態と言っても過言ではない。あとは吹くだけという感じ。

歌を歌うとき、僕たちは息を吸って喉にある”声帯”という膜のような帯のようなものを振動させて歌声を出す。絵は下リンクから

一度喋ったり声を出しながら喉を触ってみると喉の中にある声帯が細かく震えているのがわかると思う、特に低い声は感じやすいかな。

高い声や低い声を出すときに息を吐くよね、そして息がなくなったらまた吸って満タンにする。逆に息を吸いながらだと声は出ない。

つまりこの声帯というのは肺から空気が押し出されているときにしか音を出せない=振動しないという作りになってる。

これが金管楽器で言えば唇にあたる。なので肺から空気を押し出して唇をマウスピースの中で振動させると楽器が鳴る。

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唇を振動させる(Buzzing)

→その振動によって楽器の中の空気も振動する
・普通に息を履いた時の空気の感触と、振動させながらでてきた空気の感触は違う。触ってみて。

→その楽器の中の空気が振動して楽器自体=金属が共鳴する
・汚い音でもなんでも空気さえ振動していれば楽器は共鳴する。
綺麗な音にするにはスムーズに振動する唇とその楽器に合った振動数を与える必要がある。

これが金管楽器が鳴っている=音が出ている原理。

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音を変える

声を高くしたり低くしたりするとき僕たちの声帯は細く鳴ったり真ん中の穴を狭めたりする。そうすることでそこを通る空気の速さを変え声帯自身が振動する速さ=数を変えているのだ、そうして声を高くしたり低くしたりする。

なので金管楽器の場合でも
息の速さを変える
→唇の振動数が変わる
→楽器の中の空気の振動数も変わる
→楽器が共鳴する
→音が変わったように聞こえる

となる。なのでリップスラーというのは息の速さを変えればできるということになる。

ここで息の速さを変えるために使える箇所をご紹介。

・唇
・口の中
・胴体

顔の目の前に紙を用意し、それを最初遅く、徐々に息の速さを早くしながら揺らしてみてほしい。その時に使った体のパーツが息を変えるために使う箇所だ。

もし慣れてきたら無駄に使っている筋肉がないか意識しながら力を抜けるところは抜いていってみる。よく力が入ってしまうのは胸や喉、肩や首の後ろの筋肉だ。

そして慣れてきたら口笛を吹いてみてほしい、その時に口の中が動いているのがわかると思う。

口笛が吹けなくても吹こうと真似をするだけでも口の中が動くのがわかるはずだ。

こうして僕たちは息の速さを変える=音が変わる=リップスラーができる。

ということになる。

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リップスラーをできなくする方法

たった一つだけ

唇の振動をさせなければいい。

・唇が振動しないぐらいマウスピースに押し付ける。
・唇が振動しないぐらい息の速さを(出したい音よりも)遅くしたり早くしたりする。
・唇がマウスピースの中で振動できないような姿勢をする。
・息を吐かない
・とても少ない息の量で吹く
(息を吐き切ってから歌ってみてほしい)
・どんな、なんの音を吹こうかイメージしない
(歌や口笛も何も考えずに初見では奏でられない)
・身体中に力をいれて息を吸ったり吐いたりし辛くする
・口を動かしまくる
(そうやって歌や口笛を奏でてみてほしい)

5分考えただけでこれぐらい出てくる。

とにかくマウスピースの中で唇が振動をしていれば鳴る。リップスラーの音の変えるときも振動し続けていれば音は鳴る。音を変えるには

・唇の振動する回数を変える
・唇を通過する風の速さを変える
・息の速さ+通り道を変える

これだけ。

早いリップスラー、大音量、極小音量でのリップスラー、様々なアーティキレーションやリズムのリップスラー、様々な音色のリップスラー

これらすべての基礎は唇が振動していればできる。そして徐々に息の出し方やリズム感、音感、イメージする能力が簡単で基礎的な練習を続けていくとできるようになってくる。どこかをスキップして練習をすればどこかでつまづく。

Enjoy lip slur-ing!

Thank you


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