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ステージマネジメントにしひがし#4 - 舞台制作タイムライン編 Part 3 - 小屋入り後

ぼんやりとしたアイディアからスタートした公演も稽古期間を経ていよいよ小屋入りまでしました。(前回の記事はこちら

テクニカル・リハーサル

プロダクション・マネージャーに率いられた搬入クルー(ステージ・マネージャーやASMが行うこともあり)によって舞台の準備が整ったら、いよいよキャストも小屋入りしてテクニカル・リハーサルの開始です。日本では「場当たり」とか「舞台稽古」とか「テクリハ」とか呼ばれている…のかな?(ぼんやり・情報求む)イギリスやアメリカでは略して Tech と呼ばれます。

短いもので1〜3日、規模の大きいミュージカルなんかでは2週間〜1か月(!)行われる Tech は、文字通り照明・音響・映像や装置転換など Technical Theatre と呼ばれる領域に属する部門の "ために" 行われる舞台稽古。スタジオで稽古していたキャスト陣を含め、これまで各々準備していた各部門がすべて集結するポイントです。(なので"Where the magic happens" なんて言われたりする)

裏方にとっては Tech は1番の正念場。なんせ初めて全部の部門があわさる機会なので、時間がかかる。でもオープンの日は決まっているので、時間は有限です。朝9時から夜10時までの長丁場で、全集中力を投下して舞台を仕上げていく数日間は、体力的にも精神的にもきついけれどその分充実もしています。

テクリハを進行するのはステージ・マネージャー。インカムで各部門とコミュニケーションしながら、どこで止めたいか、どの部分を繰り返し行う必要があるか、残り時間は…とあらゆる要素を見て、公演のはじめから終わりまでちゃんとリハーサルできるように配分していきます。場面場面で止めては調整していくので、キャストにとっては少し待ち時間が長いことも。できるステージ・マネージャーは舞台上でキャストに「照明さんが調整してるから、動かないでもう少しだけ待ってね」なんて声をかけながら、その場の全員が気持ちよく稽古できるようにはからっていきます。

ドレス・リハーサル

日本では「ゲネプロ」と呼ばれる本番同様の通し稽古は、英語では Dress Rehearsal(略して Dress)と呼ばれます。ゲネプロはドイツ語源の舞台用語 Generalprobe の略で、大陸ヨーロッパの影響が強いオペラ・カンパニーでは Dress の代わりに General を使うこともあります。

ドレス・リハーサルは1回のみのこともあれば、2回以上行うことも。テクリハの進行状況によって回数を調整することもしばしばです。本番同様の通しなので、このときにカメラマンを入れて、オープン直前の宣材写真を撮ったりもします。また、リバイバルの場合などカンパニーによっては家族・友人や劇場のメンバー(ファンクラブのようなもの)を招待した Open Dress を行うこともあります。

Dress のあとは Notes と呼ばれる、演出家からのいわゆる「ダメ出し」の時間が設けられ(もちろん良いことを褒めることもある)、時間が許せばそのまま舞台稽古をしたり、俳優なしでのテクリハ(Dry Tech)を行ったり、最後の調整をしていきます。

プレビュー

タイムライン画像からは省略しましたが、商業公演などでは正式な初日の前にプレビュー期間を設けることがあります。数日〜1週間、長いもので1か月間、一般の観客を入れて反応を見ながら調整していく期間です。新作の場合には作家も出席して、反応を見ながらメモをとり、この時点でシーン丸々書き直し(!)なんていうこともあります。作家と演出が意図していることが伝わっているか、コメディーなら笑いのポイントはきちんと受けているか、などなど、本格的なオープン前のいわば実験期間です。演劇マニアやあちこち見まくっているスタッフの中にはあえてプレビューとオープン後、両方を見に行って何が変わったかを楽しむ、なんて人もいます。

初日

プレビューを経て公演が固まったら、いよいよ待望の初日!正式なオープンです。商業公演での初日はたいてい Press Night というメディア向けの公演で、劇評家やメディア、家族、パートナー、友人などの招待者を中心に披露されます。夜には盛大な Press Night Party が行われ、オープンを盛大に祝います。

オペラのレパートリー公演などで Press Night を特にしない場合にも、初日は Opening Night として盛大に祝いつつ、全員の健闘をたたえるのが習慣。カンパニーから記念のギフトがあったり、キャスト同士、スタッフ同士で Thank you カードを贈りあったり、なんともあったかくお祭り騒ぎなのが初日です。

オープン後は?

オープン後はもちろん、チケットをもったお客様に向けて日々公演をしていきます。演出家やメインのデザイナーたちは次の仕事へ、ここからはステージマネジメントチームが、日々の公演のクオリティを担保するための要です。アメリカではステージマネージャーが、アンダースタディのリハーサルを仕切ったり(演出家的役割として!)しますが、イギリスでは Resitent Director と呼ばれる劇場付きの演出家などが行うことが一般的です。オリジナルの演出家やデザイナーたちが時々ふらっと現れて、公演の様子を見に来て調整したりすることもあります。

ロングラン公演は時折キャストやスタッフが入れ替わりながらも、続く限り公演を続けていきます。いずれにせよ、チーム一丸となって千秋楽まで駆け抜け、千秋楽後はスタッフ陣は撤収(Get-out)が待っています。そうしてようやく「お疲れさまでした」となるのでした。

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簡単ですが、アイディアが具体化されて公演になり、稽古してオープン、そして撤収までの流れ・イギリスバージョンを3記事にわたってまとめてみました。日本でも用語の違いはあれ、ざっくりは一緒なんじゃないかな?という想像…!舞台人、イベントスタッフの日常の片鱗が少しでも伝わったらうれしいです。

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