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スラムダンクに見るバスケのルールの変遷

バスケットを少しでもかじったことのある人なら、大多数が映画「The First SLUMDUNK」を懐かしさと新鮮さを感じながら見たと思います。
すごい映画でした。

映画が素晴らしいのは疑う余地はないのですが、純粋にバスケットのルールという視点で見ると、当時のルールを知らない人からすると違和感を感じるシーンがいくつかあったと思います。
私は連載当時にリアルタイムでバスケットをしていましたし、その後も自身がバスケットをしているのでルールの変遷もわかった上で懐かしんで見れたのですが。

そんなわけで、スラムダンク(漫画)が連載されていた当時と今のバスケットのルールの違いを細かく見てみました。

スラムダンクの連載期間のルール

スラムダンクの連載は1990年10月-1996年6月です。
日本のバスケットの歴史においては、1985年に大きなルール変更がありました。
詳しくは以下の記事に解説しています。

1985年ルールの最も大きな点はスリーポイントが採用されたことです。
このルールがなければ三井寿というスーパースターは現れていませんでした。
その後、91年と95年にルールの変更がなされています。

連載開始直後の半年ほどはギャク漫画のようなテイストでしたので、あまりバスケット試合の詳細が語られることはなく、最初に試合のシーンが描かれたのは#27から始まる綾南との練習試合でした。

この時点で1991年17号(4月15日号)。
おそらく3月発売ですが、すでに1991年4月からの新ルールが発表されているはずなので、スラムダンクは1991年ルールが適用されていると考えてよさそうです。

なお、ルールについて最初に語られるのが#6で赤木との対決で桜木が犯したトラベリングです。
トラベリングという言葉は出てきませんが、「ボールを持って3歩以上歩いたらダメ」と言っています。

連載当初はギャグ漫画のテイストだった

試合が前後半制だった

スラムダンクと今のルールの最大の違いが、試合が前後半制であることというのは間違いないでしょう。
バスケットの試合が現在の4Q制になったのが2001年からなので、スラムダンクの連載期間(1990-1996)に行われている試合は全て前後半制です。

綾南との最初の練習試合。前後半は漫画の展開としてメリハリがつけやすい。

スラムダンクの特徴として、前半は色々あっても比較的あっさりと進んで終わってみればほぼ互角(かちょっとビハインド)、後半に怒涛の展開が待ち受けている、という構成の試合が多いので4Q制だったら漫画の展開も大きく変わっていたことでしょう。

翔陽戦でリバウンド王として開花した花道。
海南戦。前半にキャプテン赤木がけがで離脱するも、流川の踏ん張りで後半につなぐシーン。赤木の怪我をものともしない奮闘と流川の体力など前半のフリが後半にしっかり効いている試合。
綾南戦。流川が後半に爆発することを予感させるシーン。
山王戦。前半も花道VS美紀男など見どころは十分だが、ここから怒涛の後半戦へ。恐怖のオールコートプレスが始まる。

24秒じゃなくて30秒

次に有名なのがこれ。
一定秒数以内にオフェンスはシュートを打たないといけないのは今も変わりませんが、当時は「30秒」でした。今でもおじさんたちは癖で「30秒!」と言ってしまうのですが、24秒になったのは2001年なのでもう20年以上も前のことです。

綾南戦。両チームのディフェンスの良さを表現するために30秒バイオレーションが何度も吹かれています。

アンスポじゃなくてインテンション

現在のアンスポーツマンライクファウルの前身はインテンショナルファウルでした。
スラムダンクは結構インテンショナルファウルが多く、しかも展開の中で重要な役割を果たしていることが多いです。湘北の試合ではほぼ1試合に1回インテンションがあります。(主要な試合でないのは綾南戦だけ)
95年からはアンスポーツマンライクファウルという名前に変更になったと漫画内でも解説がついています。

翔陽戦の桜木。桜木のファウルトラブルだけでなく、入ったばかりの藤真のプレースタイルまでがこのファウルだけで分かってしまうシーン。初めてコールされたので解説がついている。
海南の牧。この時は牧が桜木を吹っ飛ばしているが、このファウルがあったおかげで、試合最後の桜木のダンクが際立ってくる重要なシーン。
全国大会1回戦の豊玉戦。エースキラー南のヒジ打ちで流川が負傷。この試合を象徴するファウルであり、後半の豊玉のゴタゴタにつながっていく。
山王戦。物語のクライマックスに突入していく重要なシーン。

ヘルドボール、後半の開始がジャンプボール

ヘルドボールや後半の開始時にジャンプボールが採用されています。
現在ではオルタネイティブポゼッションルールで、試合開始だけしかジャンプボールをしません。ジャンプボールシチュエーションという名前でその名残が残っていますが、最初のジャンプボール以降は交互のスローインでゲームが再開されます。

ヘルドボールがあったときはジャンプボールで試合が再開。

ノーチャージエリアがない

ノーチャージエリアがないのでオフェンスファウルが取られやすくなっています。

豊玉戦の南。オフェンスファウルが吹かれたが、この流川のポジションは現在のルールだとノーチャージエリアに見えるため、ノーファウルになると思われる。とはいえ、この南はゴールじゃなくて流川に突っ込んでいっているようにしか見えないので、悪質な行為として別のファウルが吹かれるかも。

テクニカルファウルの処置が違う

実際のフリースローのシーンは描かれていませんが、テクニカルファウルで2個のフリースローと解説があります。
現在はテクニカルファウルに対するフリースロー1本です。

綾南VS海南。キャプテン魚住がテクニカルファウルで退場。

番外編:宮城のプレーはゼロステップ?

翔陽戦の宮城のドライブ

翔陽戦で宮城がビッグマンの中に突っ込んでいくプレー。
これはゼロステップでないと説明がつきません。
もちろんこの時はまだゼロステップというルールはありませんのでトラベリングじゃないかと思います。
詳しくは以下の記事で解説しています。

ということで、スラムダンクの連載当時のルールと現代のルールの違いを見てみました。
これを機にルールに興味を持ってもらえたら幸いです。


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