『オーガニックが普及しない原因は、消費者理解ではなく農家理解が進んでいないからかもしれない。』というわけでもない。
※12月7日に投稿されて、9日にはTwitterアカウントも含めnoteの記事を削除されてしまったので、一部表示されない所があるかもしれません。
いつも刺激的で、考えるきっかけを下さる、タベモノガタリ 竹下さん(https://note.com/takeshitayurie)の投稿(投稿は削除済)を読んで、小規模ながら有機肥料も使って栽培する東京の小規模農家の考えを書いてみたいと思います。
SNS運用は農家でもやっている人は多く、Twitter,インスタ等々それぞれの特徴に合わせて切り口を変えて発信している人も多いと思います。
Twitterは文字主体で140字という制限内での発信になり言葉足らずで炎上、なんてことは日常茶飯事。特に食に関する安全安心ネタは良い着火剤であり燃料です。
燃える原因は、私見ですが、立場や知識量、思い込み等から見えてる景色が違うからかなと思います。
例えば
「天然塩ならいくら食べても大丈夫」
と言った時に
「いくら」がせいぜい2-4g程度だろうと思っている人と
10kgを想像している人とでは、互いにその数値を言わずに「天然塩ならいくら食べても大丈夫」かどうかを議論しようとしても、そりゃ嚙み合わないですよね…
塩の話は置いといて、
さて、本題。
「農薬不使用=安全」確かにそう思いたいし、そういう部分も大いにあると思います。
竹下さんも仰るとおり『実際は適正に使われていたら安全性は問題ないとされているのですが、私たち消費者からしたら農家が正しく使用したかは判断しきれないので不使用と書いてあるものの方が安全だと私は思っています。』
そう思うのも、もっともだと思います。『農家が正しく使用したかは判断しきれない』確かに!農家でなければ知らない事情がそこにはあるのです。
実はそれを担保するのがJA出荷や市場出荷等での抜き打ちの残留農薬チェック。
自分は市場やJA出荷していないので詳しくないのですが、出荷している方の書き込みを見るとなかなかに厳しいのが現実。
東京で調べてみました。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/z_nouyaku/kekka/index.html
(ちなみにここで出てくるppmという単位は、100万分のいくらであるかという割合を示すparts-per表記による単位。 「parts per million」の頭文字をとったもので、100万分の1の意。 1ppm = 0.0001% であり 10,000ppm = 1% である 引用 wikipedia)
出たとしても、いわゆる気にしなくていいレベルの数値です。
逆に不使用と書いてある物は誰が担保できるのでしょう?
担保の必要のない信頼関係が結べている農家から直接買うのであれば良いかなと思います。(それがまさに竹下さんの運営されているタベモノガタリの農産物定期便)
マルシェ等で直接農家さんと話して納得して購入するのもありだと思います。
ちなみに、化学農薬、化学肥料を使っていない担保ができるのは有機JAS、もしくは各地域で設定しているエコ農産物認証(呼び名は各地で違うかも)例えば東京には東京都エコ農産物認証制度があります。
こちらは完全に不使用の農家もいれば、有機JASで認められている生物系植物系農薬等がいくつか使っている場合も有ります。
また、年に1度程度ですが(東京の場合)残留農薬検査もあります。
これはたとえ自分は農薬を使っていなくても近隣からのドリフト(風で流れてきてしまうこと)の可能性が無きにしもあらずだから。
信頼関係によるつながりで、第三者の科学的的残留農薬チェック体制がないのが個人通販やECサイト。
農薬ではないけど焼酎や牛乳などを虫よけや殺虫に使っても、「無農薬」と言い張る人もいなくもない。ドリフトされないようにちゃんと隣の畑から距離をとってますか?
虫食いまみれで商売にならないとか、こんな条件に当てはまる野菜みたことない!という反応。
確かに色々な意見はあるかなとは思います。
食べチョクやポケマルでも検索すれば通年で野菜セットを出してる無農薬農家さんはいるので、できると言えばできる。
『年中安定供給されています』
多品目で小ロットだからこそ可能な出荷量なのかなとお見受けします。
農家と言っても多品目農家もいれば、1,2品目だけ作る農家も。年中働き続けるか、集中して出荷して1-2か月しっかり休むか。様々な勤務体系があります。
また、日本全国桜前線のように旬の野菜も産地リレーをして一軒の農家が全てを担わなくても良いようにできています。
「虫食いがない」これは虫食いがない野菜を選んで出荷しているからできる事。
虫食いのない部分だけを選抜しているので、選抜に漏れた数多くの野菜たちが土に返っています。
中には無農薬無施肥で全然虫がつかない野菜を育てられる達人がいるかも知れませんが、その技術がなかなか全国普及しないのは実に残念。
これは思い込みとかではなく、使わずに育てられるけど費やす時間と体力に見合った収量が確保できない、虫食いや病気で廃棄する野菜を減らしたいという思いがあるから。
こちらの徳本さんは元は有機農家。有機JASの農薬も使っていなかったと記憶しています。今は慣行栽培(とYOUTUBER)へと転身されています。
自分の周りにも就農当時は無農薬で6,7年目に農薬を一部使うやり方に変更された方もいます。
Base Side Farmも圃場(畑の事)がいくつか分かれているので1か所だけは農薬化成肥料不使用で、それ以外では適宜使う事にしています。
そしてどれだけの人が実際に食料を作るために行動しているか。社会や環境に目を向けて、食糧生産の生産力不足を嘆いていても農家にならない人が多い気がします。
有機農業はどう普及すべきか
これは難しい問題ですね。
竹下さん持論の「小規模有機農家が増えるべき」もうなずけます。
育てやすい野菜で単品大量もありですが、量で勝負するとやはり産地に値段で負けます。取引先も大量に購入できる給食や事業者になり、品質もそれなりに求められてくると思います。
ロボット除草…これは気になります。柔らかい土の上どうなるの?動力は何だろう?電動?エンジン式なら排気ガスは環境負荷にならないかな?
栽培管理のデータ化は有機農業とどう関係するのか…ちょっと意味が伝わってこなかった…
とりあえずBase Side FarmはAgrihubを愛用中です。
有機農家を増やす試み。
新規就農を増やすか、慣行栽培からの転換を進めるか。どっちだろうな…
解決策の一つとしてECサイトやCSA的消費者との直接の繋がりではなく、JAや市場のようにいくらでも買う体制が持てるバイヤーが必要かなと思います。
栽培技術もおぼつかない新規就農者。栽培するだけでも手一杯なのに個別梱包の野菜セットを作るのは大変(自分は大変でした)そのようなスタイルが合う人もいるかもしれない。でも、一番お金になって、時間の節約になるのは大量買取。豊作でも凶作でも一定の値段で買い取り続ける。そうすれば農家は安定的収入を得ることが出来る。
大量買取はどうしても個人のお客さんが多いECサイトやCSAでは難しい。
タベモノガタリに限らず、この5年いくつもの自然派安心安全を掲げるECサイトができた。
そしてできては消えていった。「無農薬野菜なら病院に行くこともなくなる」なんて豪語していた所も。
農家を守りたいという気持ちはうれしいけど出口が「違う、そうじゃない」の。
そして新規就農者あるあるなのですが、色々なECサイト様からお声がかかります。
自分はその会社と会社代表の方のSNS発信をチェックすることがあります。
どのようなお考えをお持ちなのかと農業への理解があるか、そしてSNSという顔が見えない関係においてどのようなスタンスをとっているのか。
顔が見えないから乱暴な言葉を使うのは言語道断。
そして反対意見にどう真摯に向き合っているか。都合の悪い質問を無視をしていないかを見ています。
自分がその会社とは違う意見を持った時、会社が方向転換をしたときどのような態度になるかわかる気がします。
12月7日時点では件の引用ツイートやリプに返信をされていないのが残念に思いました。
例えば「安全な野菜」と言い切るならその根拠となる資料や、そう思うに至った経緯を書く、出典を提示するなどあれば消費者も安心できます。農家も安心してお取引できます。
ベネッセさんの講座でどのような方向性でお話するか分かりませんが、もしも先のツイートのような「安全な野菜=無農薬」と根拠なく断定した場合、慣行栽培農家のお子さんや関係者がその場にいたらどんな思いをするか。
思想は触れる文化や人、年齢でどんどん変わっていきます。
自分もちょっと前まで「無農薬でできる人がこんなにいるのに、どうして農薬使うの?無農薬で頑張んなよ」みたいなこと考えていました。でも実際手を動かして土に触って、たくさんの野菜をダメにして、虫だらけのレタスに悲しくなって、草取りだけで疲れ果てた結果、家族との時間を作るため、長く農業を続けていくため農薬を使ってみるという選択をしました。
畑を農薬を使う畑と使わない畑に分けて、どちらの需要にもこたえられるようにしました。
そんな農家もいます。
農薬を使っても使わなくても、おいしく楽しく食べてもらいたいなぁと思っています。
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