★【大会・ゲーム戦略】投手陣の役割設定
高校野球の場合、トーナメントの日程が過密な中で勝ち進むには1人の投手では厳しいので、複数投手で分業できるようにしておくことが重要になります。
例えば、甲子園の場合ベンチ入りは20名でこのうち4・5名は投手として起用できる選手を入れるのが一般的なので、この中でどう投手を起用するか?試合・大会に臨むにあたり各投手が担う基本的な役割を準備しておくとトーナメント戦で特に連戦となった際にスムーズに投手起用のプランを準備することができます。
特に「相手を抑える可能性が高い投手が後ろに控えているか?」が試合展開に影響を与えるケースも多いため、エース格の投手をどのように起用するか?が大会を勝ち抜いていく上で大きなポイントになります。
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ベンチ入りする各投手の適性を普段の練習・練習試合の中で見極め「先発」「中継ぎ」「抑え」に(大まかにはなるが)役割分担し、大会前事前に大筋の投手起用方法を伝えておきます。
高校野球の場合、NPBのような「先発」「中継ぎ」「抑え」の定義というよりは
「先発⇒前半」「中継ぎ⇒中盤」「抑え⇒後半」
くらいの感覚で考えておいてもらうように伝え(プロでは少ない中継ぎ・抑えの"イニングまたぎ"が、高校野球では普通にあるため)、また試合展開によって役割を崩して起用する旨も伝えておきます。
(崩す例 → リードされている・延長タイブレーク)
大まかな人数設定としては、先発2人 中継ぎ・抑え3人で考えます。
「先発」の役割
≪試合を作る役割≫
先発投手は試合のスタートから投げる投手のため、役割として求められるのは”試合を作る”ことです。
”試合を作る”とは、ある程度のイニングを少ない失点で抑え自分のチームが勝てるような状態を作り出すこと になります。
MLBでは「クオリティースタート(6回を投げて自責点3点以下)」をすることができれば先発の役割を果たせたと言われます。仮に自チームが無得点であってもこの状態なら得点差は3点なので、終盤の逆転が十分考えられます。逆に序盤から失点を多くつけられてしまうと、以降の試合展開で攻撃の作戦の幅が狭められてしまいます。
(例 点差が開いた状態で負けているシーンで ノーアウト1塁)
ノーアウト1塁で考えられる一般的作戦は、
● バント
● 盗塁
● ヒットエンドラン
等ありますが、点差がついた場合は1点を奪うよりも大量得点で追いつく必要があるので「打ってつなぐ」くらいしかできなくなってしまいます。
以上を踏まえ、”試合を作る”先発投手に求められることは、
● 相手にジャストミートされにくい球速・変化球
● コントロールで自滅しない制球力
● 前半5イニング以上を投げられるスタミナ
● フィールディングなどの守備
等になります。チームでは「総合力の一番高いピッチャー」が適していると言えます。
「中継ぎ」の役割
中継ぎ投手の役割は、さまざまなものがあります。「少ない点差」「ピンチ」「ワンポイント」等様々な状況で登板し、その時に求められている結果を残すために投球をすることになります。
高校野球では能力の高い中継ぎ投手を何人も用意するのは難しいですが、適性を見極めながら以下のような役割を果たすことができると思われる投手を場面場面で起用していきます。
≪「第2先発」としての役割≫
「第2先発」は先発投手と同じように長い回を抑える必要があるため、先発投手と同等の能力が求められます。
「第2先発」は「先発」のタイプが違えば違うほど相手にとっては対応が難しくなります。また「先発」と「第2先発」の力がそう変わらない場合は、相手の打者や調子により「先発」と「第2先発」を入れ替えて戦う方法もあります。
(例 相手の打線が左打者が多ければ、左投手を先発に使う)
≪「流れを変える」役割≫
継投はチームがピンチになったときに行なうことが多く、またすべて計画通り行なう ということはできません。
例えば、先発が早いイニングで相手に打ち込まれた場合継投せざるを得なくなり、その時には中継ぎに「流れを変える」役割が求められます。
「先発」から「中継ぎ」に継投する際は、タイプが違う投手を起用できると簡単に相手に攻略されない可能性があるので良いです。サイドスロー・アンダースロー・変則投手 などがこのような場面に向いていると思われます。
こうした流れを変える中継ぎ投手は”短いイニング”の起用で考えます。1・2回を完全に抑え、相手への流れを止めて次の投手へつなぐことができれば役割を果たしたと言えます。
このような場面で登板する投手は、自滅が許されない状況なのでコントロールで苦労しないことが重要です。
≪「ワンポイントリリーフ」としての役割≫
ワンポイントリリーフは、ここ一番の場面で相手の中軸打者に対したとき等に「どうしてもこの打者は抑えたい」ときに登板し抑えることが役割です。高校野球の場合ワンポイント専任でベンチ入りしておくことは難しいですが、野手の中で投手も出来る選手がいれば「選手交代」でなく「守備位置の変更」だけでワンポイントの起用が出来るので、そういうシーンも踏まえた選手起用が出来るようになると投手起用に”幅”が出るようになります。
対戦打者が 「前の打席で完璧な当たりを打っている」
「試合を通じてタイミングがあっている」 等
次の打席でも打たれる確率が高く勝負を避けたいシーンで(塁が埋まり敬遠もできない 等)、その打者を抑えるためだけに登板 ピンチを防ぎ流れを自チームに持ってくることがワンポイントリリーフの役割なので、求められることはピンチを広げないよう
● コントロールで自滅しない制球力
になります。例えば、左投手なら左打者との対戦になるケースが多いのでアウトコースに投げるコントロールが有効になります。
「抑え」の役割
≪「安全に試合を締めくくる」役割≫
抑え投手は勝っている試合で最後を締めくくる形で登板するので、できれば出塁させることなく(ピンチを作らず)安全な状態な試合を完了したいです。求められるものは、
● 空振りを取れる速球
● 空振りを取れる変化球
● コントロールで自滅しない制球力
になります。先発のように長いイニングを投げるスタミナがいらないので、短いイニング速球で押せる・決め球を持っている投手が向いている と言えます。
高校野球の場合、速球を投げることができる投手は総合力が高いため先発になることが多いですが、上記求められるものをある程度持ち合わせ かつ 長いイニングを投げると崩れることが多い投手は”抑え”として考えてみます(それでも3イニングくらいは投げることができるスタミナは欲しい)。
≪「攻撃の糸口も与えない」役割≫
攻撃側から見ると、リリーフは短いイニングで攻略をしなければいけないため、攻略の糸口をどこかから掴む必要があります。
逆に投手側から言うと、求められるものは、
● 攻撃の糸口を与えるスキがない投球術
になります。
攻略の糸口 →
単に打たれない・四球率が低いという以外に
走者を出しても、クイックが速い・フィールディングが上手い
等の対応ができる投手は糸口がつかみにくい。
大会での投手起用 例
大会を勝ち抜いていく上で事前にある程度”投手起用のパターン”を作っておくと、どんな試合展開でも監督の選手交代に選手も惑うことなく準備することができます。
(例)
基本の投手起用 ⇒ 先発が6〜7イニング 抑え2〜3イニング
先発が早めに崩れた場合は、そこに第2先発・中継ぎを投入
≪1試合目(大会初戦)≫ 先発A 抑えC
先発が序盤で崩れたらB、中盤で崩れたらD
≪2試合目(大会2戦目)≫ 先発B 抑えC
先発が序盤で崩れたらA、中盤で崩れたらD
(AとBが役割を入れ替える)
≪3試合目(大会3戦目)≫ 先発A 抑えC
先発が序盤で崩れたらB、中盤で崩れたらD
・
・
※ 先発が出来る投手にある程度力がある投手を2・3人準備できる戦力であれば、一番力がある投手を抑えに持ってくる方法もありです。力がある投手をすべての試合で起用することができます。
調子の善し悪し・交代の判断
複数の投手が登板する場合、その中でその日の調子が良くない投手がいる可能性は高いです。人間であれば、調子が良いとき・悪いときというのはどうしてもあります。
登板してみたが調子が思わしくない場合は、あまり引っ張らずピンチ・失点が拡大する前に早い段階で交代するようにします。調子の善し悪しを素早く見分けるために、普段から投手の練習をしっかり見て理解しておく必要があります。
リードされているとき・延長タイブレークのとき
上記のような状況の場合、そのままにしておくと負けてしまう可能性があります。トーナメントの大会では負けることは許されないため、この状況を抑えないと勝ちはない…となった場合は、役割に関係なく力のある投手から登板するのが良い方法です。
この場合、登板する投手は長いイニングを投げる意識でなく短いイニングを100%の力で投げるようにします。
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