【泣】少年野球に熱中した父親の末路(9)
6年生にとって最後の大会は不運だった。
ブロック予選をギリギリ2位で勝ち抜いて本部大会に進んだものの、その初戦でいきなり苦手チームと当たってしまったのだ。
このブログの(1)で登場したガラの悪いあのチームだ。
すごく強い訳ではないのになぜだか相性が良くない。ここぞという時にいつも勝てない因縁のチームだ。
そんな大人達の苦手意識が伝染してしまうのだろうか。ピッチャーの調子は決して悪くないのに強烈なヒットを何本も打たれ、さらにエラーも出て3回までに8点を先制された。
しかし、そこからクリーンナップが相手ピッチャーを捉え始め、6回が終了するときには8-6にまで追い上げていた。
大会規約では「7回または90分」となっていた。
うちのチームは後攻で、6回の裏が始まるとき時計は残り8分を指していた。その日ヒットゼロの6番、7番、8番打者に勝負は委ねられたが、6番7番はあっさり凡退し、8番のイチタがバッターボックスに立った。
残り時間は4分。
監督は「好きに打て」というサインに続いて、両手で3回バツを作った。
イチタは一瞬驚いたような表情を見せたがすぐに打つ構えに入った。
相手チームの子ども達からは「8番今日打ってないよー!」「外野ー!前、前ー!」といった屈辱的な声がとび、「あっとひとつ!あっとひとつ!」と、これで試合が終わるかのようなかけ声と手拍子まで始まった。
そのときの私がどんな心境だったかお分かりになるだろうか?
6年生最後(になるかもしれない)の試合で打順を6番から8番に下げられ、なおかつ「三球三振」のサインを出されたのだ。それは勝つための作戦の一部であることは理解していたし、このところイチタのバッティングが冴えないことも事実だった。それでもショックだった。これまで自分がイチタの野球にかけた時間と労力とお金がすべて無駄だったように思えた。イチタを信じてもらえなかったことが私のプライドまで傷つけた。
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