セロトニン とは
以前書いた論文のセロトニンのパートを、少しわかりやすい表現に書き換えたり加筆したものです。
私たちが生きていくうえで、脳は司令塔として心身の機能・働きを司っています。
また生きるということは常にストレスを受け続けるということであり、「生存」と「ストレス」は常に隣り合わせでもあります。
脳内の安定を保ち、平常心を司るセロトニン神経は、脳幹の正中部(真ん中)にあります。
ストレスを抑制し、セロトニン神経を活性化させるオキシトシン神経は、間脳の正中部にストレス中枢に隣り合わせて存在しています。
セロトニン神経が「生存」を司る脳幹の真ん中に位置するということは、生きるために必要な働きを多岐に渡って行っていると考えられ、
オキシトシン神経についてもストレスの影響を受けながら、また、ストレスにうまく対処しながら、脳内を安定させるべく、その構造が成り立っていると見ることが出来ます。
一方で、引きこもり・パニック障害などメンタルヘルスの不調を訴える人や、うつ病・自律神経失調症、気分・感情障害、睡眠障害などストレス性疾患と呼ばれる症状に悩む人が増えています。
メンタルヘルスに問題を抱える人は90年代後半から急増したと言われていて、これはパソコンや携帯電話が普及し始めた時期と一致します。1)
また、うつ病やパニック障害などの原因として脳内神経伝達物質セロトニンの不足が明らかにされています。2)
つまり、IT社会の台頭に伴う生活環境・生活習慣の変化とストレスがセロトニン欠乏を引き起こすことになり、心身の不調に繋がっていると考えられています。
ここから、脳内セロトニンの働きとセロトニン不足による影響、欠乏する原因を紐解いていきます。
脳内セロトニンは脳幹正中部縫線核群に分布し、ドーパミンやノルアドレナリン/アドレナリンと共に働くことで、感情や心の活動のバランスを取り、脳内の活動状態を一定に保つ働きをします。
覚醒時に低頻度放出し覚醒状態を維持して、通常であれば、覚醒している間は一定量のセロトニンを放出し続け、脳内セロトニン濃度は一定に保たれます。3)
セロトニンが不足すると
・集中力の低下
・頭が重い
・姿勢維持ができない
・疲労感が取れない
・低体温
・自律神経失調
・イライラする、落ち込む、キレるなどの感情障害
・不眠・目覚めや寝付きが悪いなどの睡眠障害
・うつ症状
などが見られます。
これらはストレス性障害や適応障害と言われる、ストレスが原因とされる疾患の症状と重なりますが、セロトニン神経自体は直接ストレスの影響を受けないと考えられています。
しかしながら、セロトニン神経の機能や働きは、ストレスによって低下します。4)
慢性的ストレス (消極的ストレス)によってセロトニン神経のインパルスの発生頻度が下がり、セロトニン分泌量が減るためです。5)
つまり
たんたんたんたんたん......
とリズムよく働いてた神経が
たん たん たん ..
となって
「たん」の拍子でセロトニンが出るのに、拍子が少ないから量が減る、ということです。
このように、神経が抑制された状態の原因が慢性ストレス(消極的ストレス)であり、セロトニン欠乏の原因だと言われています。
ヒトは自然環境に適応すべく進化し、脳もまた進化の過程で少しずつ発達してきました。
厳しい自然の変化に対応し乗り越えて来たヒトの適応能力と発達した脳機能がありながら、現代社会での環境・生活の変化やストレスには適応できずに、身体的・精神的不調を訴える人が出てきたのはなぜなのでしょうか?
本能(脳幹・辺縁系)と想像性(大脳新皮質)との間のギャップ、つまり脳内の目的の違いによって脳はストレス状態となり、脳幹・辺縁系から注意・警告の信号が出ているとするのがBASE論です。
脳が発達したが故に、ヒトは人間にしか感じない得ないストレスを作ることになりましたが、生物としてのヒトの脳には、そのことへの気づきのシグナルも存在します。
そのシグナルをBASE(Brain Alarm System Entrainment:脳内警告系信号路)と名付けました。
瞬間、瞬間に働く本能は、人間が想像から自らつくるストレスに対して注意・警告を促すことで、生存を守ろうとしています。
BASEはその気づきの信号なのです。
後注
1)有田先生講義、2019年10/5
2)有田、P.28
3)有田、P.92
4)有田、P.102
5)中原(裕)
参考文献
有田秀穂 『脳からストレスを消す技術』 サンマーク出版、2008年
有田秀穂 『脳内物質のシステム神経生理学』 中外医学社、2006年
中原敏憲 『BASE論解説』
中原裕幸 『セロトニンとストレス』
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