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数学赤点だった私が、宇宙への憧れだけで超絶スケールの太陽を展示することになった話 vol.1
みなさん、こんにちは!
エンジニアの勝田夕子(https://twitter.com/nichol76_yk)です。
タイトルのとおり、私はエンジニアのくせにめちゃくちゃ数学が苦手です。
学生時代は毎回赤点を取っていて、必死に公式だけ覚えて追試を乗り切っていました(乗り切ったあと公式は1秒で忘れました)。
それでも星や宇宙は大好きでした。
地元が田舎だったこともあって、友達と近所の山や海に出かけては、何時間も星空を見上げていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1717070858680-6133JcXBR2.jpg?width=1200)
「天文にまつわる仕事をする」というと、数学や物理を専門に学んだ研究者のみができることだというイメージがありますよね。
私もそう思っていました。
そんな私が、宇宙が好きという気持ちだけでとあるプロジェクトに入り、NASAをはじめ錚々たる機関の研究者からの協力を得て、誰も見たことがないような太陽の展示開発に携わることになったお話をしたいと思います。
「太陽の衛星画像を取得して映像を作ってくれない?」
同僚から「コンビニでおにぎり買ってきてくれない?」くらいの感じで、こう言われたのがきっかけでした。
何言ってんだこの人?数学赤点の私に?と思いながら話を聞いてみると、
太陽の衛星画像をリアルタイムで取得する
AIや画像処理技術を駆使し、動画を生成する
超高精細ディスプレイに投影し、超絶スケールの映像体験を作る
とのことでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1717559793674-LDNv9mVUHx.jpg?width=1200)
弊社では、プロジェクトごとにチームを組みます。
エンジニアは開発だけを担当するわけではなく、企画からチーム全員で意見交換しつつ進めます。
その過程において超大切なのが「モックアップ」です。
デザインでいうとラフスケッチ、漫画でいうとネームのようなもので、完成形をイメージできるものがあれば、アイデアが一気に膨らんでプロジェクトが進むのです。
つまりこのモックアップにあたるものを作ってほしいということでした。
手探り状態からのスタート
テクノロジーが日進月歩で進むデジタルクリエイティブの世界で、何も知らないところからスタートすることなんて日常茶飯事です。
とはいえ、天文ド素人の私に、人工衛星から画像を取得なんて複雑で難しそうなことを頼むなんて、無茶にも程があると思いました。
そこで私は、すぐさまこう返してやりました。
「わかりました、やってみます!」
こうして私のチャレンジは始まりました。
あれ!?ずいぶん話のレベルが高いな
プロジェクトはすでにある程度進行しており、国立天文台の研究者の方の協力を仰ぎながら、どう実現できるかを確かめている段階だということでした。
つまり、それを引き継ぎ、体験の展示制作まで作りきることが私の仕事です。
チームメンバーから天文用語が飛び交う細かい説明を受けましたが、ちんぷんかんぷんでした。なぜなら私は数学赤点なんです。
![](https://assets.st-note.com/img/1717070900873-3OlyINUSqF.jpg?width=1200)
なんとか理解できたことは、
Solar Dynamics Observatory(SDO)と呼ばれる太陽観測衛星があること
SDOは常時太陽を撮影していること
その撮影した画像は公開されていて、誰でもダウンロードできること
でした。
SDOの画像をダウンロードして、映像を作ってみる!
これがこの時点で私に求められていることだとわかりました。
とにかくモックアップを作ってみよう!
モックアップには、実際に動くプログラムを搭載する必要はありません。
必要なのは、
実現可能性(フィジビリティ)の確保
完成した状態をイメージできること
この2つです。
まずはフィジビリティの調査から
リアルタイムで衛星画像を取得できるシステムを作る方法を考えることから取り掛かることにしました。
「Solar Dynamics Observatory」という単語を手がかりに検索を繰り返し、有力そうな情報があればメモツールにまとめていくという、地味で根気のいる作業です。
ヒットするWebサイトはすべて英語で、DeepLとGoogle翻訳とChatGPTを駆使しつつ、専門用語を逐一調べながら情報を集めます。
すると、SDOのデータを扱うためのプログラムが公開されていることを発見しました。
つまり、これを利用すれば、自動的に衛星画像を取得して映像生成するシステムが作れる!
こうして、1つ目の条件であるフィジビリティ確保はクリアすることができたのです。
完成イメージの衝撃
次に、SDOの画像のダウンロードにトライすることにしました。
国立天文台の研究者の方から丁寧な解説をいただいていましたが、研究のために作られたアプリケーションを使う必要があり、素人の私にはハードルの高い作業でした。
四苦八苦しながらなんとか画像をダウンロードし、それらをつなげて映像を作ってみました。
この映像によって、どのような体験を来訪者に与えることができるかをイメージすることができます。
この時点で手ごたえがなければ、プロジェクトを白紙に戻して別の企画を考えるしかありません。
どきどきしながら初めて自分の手で作った太陽の映像を再生してみました。
それがこちらです。
太陽の衛星画像を使った動画というのは、すでにたくさんの人が作られています。
その中でも、最新技術を駆使し、これまでになくリアリティのある映像体験を作ること。それが私たちの最終目標です。
この時点では単に画像をつなげてパラパラ漫画のように動画にしただけでした。
今見ると、画像処理も稚拙だし、色も汚いし、画質も粗い。
それでも、この映像を見た瞬間に感動で言葉を失いました。
太陽の圧倒的なエネルギーの強さ、地球をまるごと飲み込んでしまうようなスケールの現象、それらが当たり前のように起こっている。
今、私が作り出した映像の中でも。
そのすべてに衝撃を受けたのです。
これが私が太陽に傾倒するきっかけとなりました。
ロード・オブ・ザ・サン
これはすばらしい体験になる!と確信を持てるような力がその太陽の姿にはありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1717560877525-dtsvorL0X4.jpg?width=1200)
こうして、プロジェクトを前に進める第一歩を踏み出すことができたのです。
しかし、これが太陽へと続く長い長い大変な道のりの始まりでした。
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