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【厳選30作品!!】少年ジャンプ+名作読切漫画を紹介します!!

 みなさん『ルックバック』観ましたか?
 私はまだ見ていません。
 いや……見には行くんですよ。ただ、こう……映画を映画館に見に行くのって、私的に、かなり、こう、気合を入れないといけなくてですね。
 はい。

 というわけで本日は『ルックバック』映画公開記念ということで、ジャンプ+、に掲載されている読切漫画――そこから厳選した30作品をご紹介しようと思います。

 「厳選30作品」ってそれ厳選する気ないだろ。
 せめて半分にしろ。
 という声も聞こえますが、実はジャンプラの読切作品は、現在1607作品も掲載されているんですね。それを考えれば30作品なんて1.8%ですよ。めちゃくちゃ厳選してる。

 紹介する都合上、極力ネタバレは避けてはいるものの、どうしても内容に言及せざるを得ないので、できれば即座にリンクをクリックなりタップなりして、紹介文を読む前にジャンプラへ飛んで読んでいただきたいというのが正直なところですね。ここにあげた30作品の面白さは保証しますので。
 じゃあなんで紹介文書いたの?

※紹介した読切作品は2024年7月現在基本全て無料で読むことができますが、『アンテン様の腹の中』、および『その後のサキュバスさん』の2作品については、ジャンプラのアプリでポイントを使うか、広告を視聴する必要があります。




『GASOLINE』/ヤヅ

 王道を往くボーイ・ミーツ・ガール。
 奇をてらったギミックや仕掛けなんかはないけれど、主人公とヒロインが出会い、絆を深めて、逃避行をするという物語は、私の好み直球ど真ん中160km/hなんですよね。主人公も格好いいですし、ヒロインもかわいくてえっち。
 ヒロインが「バイク人間」ということでバイクに変身でき、それに主人公が跨るという絵面の力も強い。必然的にふたりの物理的な距離が近くなりますからね……。
 まあ読み返したらバイクに変身してないときでも常にひっついているんですが……。なんだこれはえっちすぎないか……?
 えっち面だけに目を奪われがちですが、人間形態⇔バイク形態への変身アクションとかもいい感じですし、他のバイク人間の敵対組織とか、バイク以外の機械へ変身する存在とかも出していけば連載もできそうですよね。とにかくこの二人の行く末をもっと見ていたいんじゃい!



『呪いにかけられて~ちんちん爆発恋物語~』/イワムロカツヤ

 ひどいタイトル。
 タイトルはひどいんですけど、内容はめちゃくちゃまっとうで面白い恋愛ものです。
 呪い返しにより、勃起するとちんちんが爆発してしまうという状態になった主人公が、呪いの化身である黒髪ロング無表情巨乳ヒロインと同棲しなくてはならないというソリッド・シチュエーション・コメディの前半から、少しずつ絆を深めていく中で、ヒロインのノロイさん隠された真実も明らかになっていき……という話の展開のさせ方が見事。

 主人公がヒロインに惚れる説得力はもとより、ヒロインであるノロイさんの設定から、彼女が主人公に惚れる説得力もしっかりでているのがいい。主人公にとってのお姫様がノロイさんなら、彼女にとっての王子様も主人公だったんやな……って。



『3つの願い』/サクラミナト

 投資家で富豪の主人公が、どんな願いでも3つだけ叶えるという「悪魔の首」を手に入れ、願い事を話すが……という内容。
 まー正直この手の「3つの願い」系のコントは既視感がありありだったから、「あーはいはいまたこれ系の奴ね……」と舐めた態度で読み始めたんですが、1個目の願いを提示された時点で一気に引き込まれましたね。しかも奇抜なネタでありながら、投げっぱなしにして次に行くのではなく、しっかりと膨らませながら進んで行くのにビビりました。

 そして、とにかく会話劇がはちゃめちゃに面白い。
 ボケと突っ込みのテンポが良く、最後まで一切スピード感が落ちず、クオリティの高いコントを観ているときのような感覚に陥ります。
 そういったお笑い面での軸もありながら、きっちりと伏線を撒いたり回収したり、なんかこう……ちょっといい話的な方面でもしっかりとオチをつけてくれる、序盤中盤終盤隙が無い傑作。
 こんな願いなら……俺だって叶えたいぜ! ギルバード・ゴールドバーグ氏!!!



『湿度が高すぎる』/村肝篤仁

 今では割と定番の言い回しになった、じっとりとした独特の粘着質を持つキャラ(三峰結華とかトウカイテイオーとか)のことを「湿度が高い」みたいに表現するやつ、元はといえばこの作品が由来らしいですね。
 言葉の許となっただけあって、かなり湿度が高い女の子が出てきます。いや、主人公もかなり重いですね。というか閉塞的な世界観そのものもまた湿度が高いと言えるかもしれません。
 とにかく全体を通して暗く、示唆される未来も決して明るさ一辺倒というわけではないのですが、思い悩み自罰的な破滅へひた走る主人公が、ヒロインとの共依存関係にすがり、なんとか救いのようなものを見出すラストの読後感は悪くありません。
 霧に包まれた町、その霧から産まれる化け物を、命の火を燃やすことで駆除をするという鬱々とした設定も好みですね。



『生贄ちゃん生還せよ』/喜多川ねりま

 ガール・ミーツ・ガール×因習村!
 大学生の主人公ちよこが、付き合った彼氏の地元の村に案内されたら、そこはガチガチのカルト宗教がはびこっており、主人公は生贄にされるために連れてきたわけで……という話。
 とにかくコメディベースでテンポよく進み、とらわれた状態からの脱出劇を進めつつ、同じ境遇で騙された倫花とも、最初は反りが合わない状態からはじまり、村からの逃亡劇の中で徐々に友情を深め、最後はお互いに命を助け合う感じとか、読んだ後の満足感がとても高い作品。よく言う「映画を一本見終わった後」のような読後感があります。おすすめ。



『静と弁慶』/三木有

 傑作。
 「なぎなた」というマイナー競技。演技と試合。男子という競技人口の少なさ。そこからくる「二人でなぎなたを振る」ということのタイムアップ。
 青春の終わりと始まり。区切り。
 そういった寂しさや哀愁、言葉にしきれない主役二人の感情が、リアリティのある筆致の許に描き出されていきます。
 派手な感情表現がされているわけではないが(いや、だからこそというべきなのかもしれないが)深く読者の心に突き刺さるんですね。
 手紙の場面では思わず涙が浮かんでしまいました。

 作者の三木有先生は、以前もなぎなたをテーマにした『ぎなた式』という漫画を描かれていらっしゃいました。
 『静と弁慶』が青年漫画らしい空気感であるのに対して、『ぎなた式』は少年漫画らしさがありましたが、やはり「なぎなた」に主軸を置いた青春ものの傑作でした。ヒロインもかわいいしな。
 え……っていうかぎなた式から8年経ってる……? 嘘でしょ……?
 1巻完結で読みやすいですし、全人類が読むべきだと思っているので、まだ読んでない人は大至急読んでください。いいですね。



『キング』/大鳥雄介

 圧倒的な強さを持ちながら、引退したチャンピオン。
 彼の背中を追い続けてきたた若手のニューエース。
 誰のために戦うのか、なんのために戦うのか。そして再起。
 まああれですよね……滅茶苦茶好みの話ですよね。
 前人未踏、最強のチャンピオンであるローガンのキャラクターの立て方がよい……。プレッシャーに押しつぶされるところとか、ただ単に強いだけではなく、弱さをしっかりと見せてくれるのが親しみやすさを感じます。この手の極端なキャラ付けは、一手間違えるとダダ滑りしてしまう難しい技術だと思うのですが、ことこの『キング』に関してはバチっとはまってしっかりとローガンの魅力につながってます。
 ローガンのライバルとなる若手、マテオをはじめとして、ローガンの奥さんやコーチ、果てはモブに至るまで嫌な奴が全然いなくて、ひたすらさわやかに読み進められるのもいいなと思います。



『たぬきとたまき』/大森えす

 妹に化ける狸と始まる同棲生活……という作品。
 「誰かに姿を変える何か」というフォーマットは短編読み切りでは鉄板のひとつともいえるネタですが、この漫画では狸(とそれに協力する妹)との化かし合いという料理の仕方がされています。
 「妹に化けた狸と本物の妹を見分ける勝負」という部分で、自然な流れで主人公である兄弟の絆の深さを描写していき、そして最後のオチ……つまり「家族」や「兄弟」という部分をしっかりと深堀りしていく構成がよかったです。
 個人的に好きなのがラストシーン。あそこで「2人」ではなく「3人」とするのがめちゃくちゃにニクいですね。 



『悪魔の擬態』/樹村カナミ

 細目神父! 細目神父じゃないか!
 Twitterでよくある「細目で笑顔の神父で孤児院を経営してる神父って黒幕だよね」っていうネタを突き詰めて一本の短編としてお出しされた作品。
 我々は140字のツイートで「細目で笑顔が胡散臭い神父が実は黒幕じゃなくてほんとに善人の話読みたい」と呟くことがせいぜいだが、漫画家の人はそれを実際に作品にしてみせるのである。
 単なる「細目神父が実は善人」の一発ネタで終わらせることなく、テーマとしての『嘘』を上手に使ったギミックもあり、最後のオチもひねりが効いていて見事というほかないと思います。
 自然と、もう一度最初から読み直したくなりますね。



『ヤバイ』/島袋光年

『世紀末リーダー伝たけし』や『トリコ』でおなじみ、島袋光年先生による読み切り作品。
 まずもって勢いが凄まじい。初読の時はただひたすらに勢いのまま、流されるまま読み切ってしまうほど、恐ろしいまでのエネルギーを持った短編でした。
 一種の不条理とも思えるエンディングは思わず「つまり……どういうことだ……?」となってしまいますが、何度も読み返していくうちに、単なるシュールレアリスムというわけではなく、「おそらく……こうなのではないか」という考察が深まっていくところも面白いです。



『死体と、1スーにもならない』/遥川潤

 こちらも短編ネタ鉄板の「不死者」「魔女」の話。
 不老不死の魔女ビアーテは、迫害を避けるために正体を隠し、小間使いとして生活していた。しかし、ある日不幸な事故で、屋敷の末っ子の見ている前で死んでしまって……。
 全編を通して漂うインモラルな雰囲気。残酷童話のような血なまぐさいけど軽やかな空気感が非常にうまく表現されているなと感じました。
 「いじめられていた三女が、知恵を使って一発逆転!」と書くと滅茶苦茶王道の童話のストーリーなんですけどね。
 時折差し込まれる、エドワード・ゴーリー風の挿絵も雰囲気の演出にとても効果的だったと思います。
 エルカンのキャラが好き。悪くて顔が良い女が好きなんですよ。



『キスしたい男』/タイザン5

『タコピーの原罪』や『一ノ瀬家の大罪』のタイザン5先生の短編作品。念入りな児童虐待描写で名を馳せているだけあり、やはり短編でも虐待描写が光る。
 不穏な描写で明らかに無理をしている主人公。どんどんおかしくなっていき、ずぶずぶと現実から逃げ闇へと沈んでいく……なかで、にこちゃんによって光へと引っ張り上げられる。
 虐待されているときはもちろん、虐待が終わったあとも親を憎むことなく、自罰的になり、おかしくなっていくレオくんは見ていられないんだけど、そこから救いを与えてくれるにこちゃんの圧倒的な「光」で……読後感はめちゃくちゃさわやかなんですよね……。
 にこちゃん好き……。圧倒的な光なんだけど、聖女ではなく等身大の少女で、それでも必死でレオくんを救おうとする健気さが……。



『霊掃業の洗井くん』/静脈・肥田野健太郎

 うわあああ!!! 顔が良い!!!
 金属バットを振り回して除霊するヒロイン、祓沢さんの顔がめちゃくちゃいい!!!
 ダウナーなんだけど口が悪くて不健康そうで目の下の隈が濃くて三白眼で化粧が濃くて学生の祓沢さんの顔が……めちゃくちゃいい!!!
 
まずいなこれはちょっともう……祓沢さんの顔が良すぎてちょっとおかしくなる。
 好きなシーンは祓沢さんがタイツに包まれた足をこちらの腿に乗せてくるところ!!!
 あんなん事故不可避だろ!!! 運転中だぞ!! なんで洗井くんはそんなに冷静なんだよ!!!



『アンテン様の腹の中』/夜諏河樹

 「大切なものを捧げることで、願いを叶えてくれる」アンテン様という神様を描いた短編怪奇譚。
 世にも奇妙な系のホラーとして、シリーズ化もできそうな雰囲気ですが、実際この短編の後に連載もされています。
 連載バージョンも人間たちのドラマ面がいろいろとあったり、舞台となる時代も移り変わったりして面白いのですが、ギミック面で言うとこの読み切り版がかなり上手かったので是非読んでいただきたいな、というのがあります。
 こういった「人の欲望につけいる」系の怪異にしては、かなり『公正フェア』なのが珍しいですよね。提示されたルールに嘘はなく、後出しもせず、それでいて利用した人間が私欲でどんどん破滅への道を進んで行く。
「大事だったものでも一度手放すと…〝無いことに慣れる〟と気がついた」という科白が印象的。

 こちらが連載版のアンテン様。なんかちんまりしてかわいくなりましたね。読み切りを読んで「こんなシチュエーションとかあったらどうだろう」みたいなのをガンガン短編連作の形式でやってくれるので、連載版もおすすめです。



『骸区』/鈴木祐斗

 『SAKAMOTO DAYS』の鈴木祐斗先生が描いた読切作品。
 日本刀使いのボケた強いジジイが~~~~治安が最悪の街で悪人どもを斬りまくる!!
 というコンセプトがめちゃくちゃわかりやすい短編ですね。みんな好きじゃないですか。日本刀使いのボケた強いジジイ。虎眼先生とか。
 一応この読切の主役のおじいちゃんが『SAKAMOTO DAYS』にも篁さんとして出てくるわけですが、『骸区』ではまだ人間的な殺陣レベルで安心します(果たして鞘で銃弾止めたり人体を2人まとめて一振りで切断するのが人間かという疑問は残るが)(篁さんの方はまあ、もうそういうレベルではないからな)。
 最後のオチというか、決め台詞がめちゃくちゃに痺れますね。



『タイムマシンの淫らちゃん』/ちると

 えっち漫画。



『天才少女は平凡な日常の夢を見るか?』/在間りしん

 とどのつまりラブコメ漫画の評価において一番大事なのは、どれだけ女の子をかわいく魅力的に描けるか、それに尽きるんですわ。
 その観点でいうと、『天才少女は平凡な日常の夢を見るか?』はかなり成功していると言わざるを得ません。漫画の持つ「絵」の力を最大限に発揮して、ヒロインである鏡子の魅力を表現している……つまり表情がかわいいんだ!!
 目を輝かせたりハイライトがなくなったり照れたりどや顔したり、とにかくころころとヒロインの表情が変わっていき、読んでいて飽きるということがまったくありませんでした。



『ヒトナー』/屋宜知宏

 これも「ケモに性欲を抱くケモナーがあるならヒトに性欲を抱くのはヒトナーかよ」というTwitterで呟かれていそうなワン・イシューを膨らませ、名作読切短編として出力された逸品ですね。
 ヒトナー(ケモ)という滅茶苦茶強い迷彩に隠されてはいるものの、メインテーマははめちゃくちゃ王道を往くファーストコンタクトSFなんですよ。異星人側から見て、人間と遭遇するというタイプの。
 それはそれとしてトネリコさんはかわいいわけですが。……いいえ、私はケモナーではありません。

 無限に続くかと思うほどの孤独。その先で未確認の知的生命体と出会うことは、それ自体が何よりの救いであるということ。



『その後のサキュバスさん』/猗笠怜司

 ジャンプラの読切といえば……サキュバスだよなぁ!?
 ということでサキュバスジャンルから1作品。まあ、実際ジャンプラのアプリで「サキュバス」を検索してみるとそんなに数はないんですが(6作品くらい)。
 えっちな漫画とかで親の顔より見た「平凡な学生の俺がひょんなことからサキュバスと出会って誘惑されながら学校生活を送る羽目にちゃったよ~😍」というアレの40年後を描いた作品。
 出会った少年とサキュバスは順風満帆に愛を育み、結婚したが、彼女は最近はセックスレスに悩んでいて……という、コメディみたいな出だしなんですが、「寿命差のある種族の恋愛」「人外種族との恋愛」というテーマに向かい合っている傑作です。



『おさななじみのひと』/菰田コトヒロ

 青春×幼馴染との甘酸っぱい恋愛
 そこに、変態性癖をひとつまみ……っとw
 幼馴染がMの変態で、それに突き合わせてSというわけではないがSの振る舞いをしていく立花ちゃんがかわいいですね。恥じらいながら女王様を演じている姿が、なんていうか……その……下品なんですが……フフ……。
 SM要素も単なる味付けで終わらせることなく、「相手の癖につきあうこと」「相手を癖につきあわせること」についての功罪なんかもしっかりと描かれていて、想像以上にちゃんとSMと正面から向き合っているのもポイントが高いです。
 恋愛ものにあるすれ違いと和解も、SMというある種特殊な状況が間に立っていることで説得力が出ているのがいいなぁと思います。
 このクラスは変態が多すぎるぜ。


『ジャンク・テール』/莎々野うた

 殺し屋系のやつ。
 短編読切では殺し屋も鉄板ネタのひとつですよね。悪の組織から逃げる少女×殺し屋というのも王道の組み合わせですが、この作品はそこに「妖精」という伝奇要素をミックスしています。
 妖精召喚時の演出は一見の価値アリ。幻想的でかわいらしい妖精の姿と、その無邪気さと、首の取れた死体のギャップが良きです。
 カラッとした性格の奴がカラッとした空気のままマフィアたちをぶち殺しまくる感じの漫画が好きな人にはおすすめ。
 エマちゃんはこの後バンシーちゃんとかほかの妖精も友達にしまくって、いずれは現代の魔女として恐れられる存在になっていってくれたらいいですね。



『ブシギャル』/平田将

 戦国時代×ギャル。
 要素というかコンセプトだけ見たら、どう考えても時代物のコメディをやるんだろうなと思ってしまうんだけど、読んでいくと全然コメディではない。
 いや、ギャル要素はコメディではあるんだけど、物語の本筋はガチガチのシリアスで、城主を失った戦国の世の厳しさやというものが切々と描かれています。逆にギャル要素が無ければあまりにも暗い話になっていたことでしょう。
 主役であるたえの魅力が凄まじい。ギャルの姿を演じてはいるけれども、諸所隠しきれない「修羅」の貌が出てしまうところがめちゃくちゃ格好いい。
「わたしに隠し事できると思ったか?」「お前は間抜けだな」



『皇の器』/織部匡

 美麗な画力で描かれる、中華風ファンタジー大河の一幕、といった感じの作品。
 皇子として産まれた双子の兄弟。互いが互いをとても大事に思いながらも、権力闘争が、周囲が、とどのつまりは時代が――それを許さなかったというのは悲しいものがありますね。

 エピローグのカラーイラストがかなり印象的。あの「画」を出されたことで、なんというかこの兄弟が歴史に本当に名を残したんじゃないかと思わせるパワーがあるなと思いました(タルカスとブラフォードのように)。



『鹿野くんって美味しそうだね』/莎々野うた

 鹿野くんのことが大好きな狩谷さんという女の子の話。
 恋に恋する女の子だった狩谷さんが、現実にぶち当たってしまったことで自分の異常性に気づいてしまい、苦悩しながらもなんとか折り合いを付けていこうとするストーリー……。
 ひとことで言ってしまうとメンヘラの恋物語なんだけど、狩谷さんの視点でめちゃくちゃに実感を伴って描かれているからいつの間にか読んでいる読者もどっぷりと狩谷さんの「側」へとひっぱられていってしまう、そんな漫画。
 どうしたってままならない現実が立ち塞がることはあるし、そこで傷ついてしまう自分もいるけれど、なんにせよ狩谷さんは鹿野くんと付き合うことができてよかったね、とそう心から思ってしまいます。いやほんと。大学に入ってから悪い男にひっかかって身を持ち崩したら、取り返しがつかない事態になってましたからね。なっていたと確信できる。
 お幸せに。



『國我政宗の呪難』/弓庭史路

 うおおおおお!!
 和風! 現代伝奇! 厨二バトル!!!!!! あとなんかこう……政府とかが絡む感じの政治劇!
 私の大好物が詰まったカレーのような作品。
 独自の造語がポンポン飛び出してくるんですが、それに対する説明が一切ないのもめちゃくちゃ好みですね。私、説明しない作品が好きなんですよ(『BLAME!』みたいな)。



『ゼリーフィッシュ・シンドローム』/赤穂ゆうき

 今の時期にぴったりな、ひと夏のアバンチュール(死語)を描いた読切。
 「精神を病み、消えたいと願うと本当に消えてしまう」水母病を主題に置いた青春恋愛ドラマ。
 主人公が女性と出会って、仲を深めて~というほんとに王道を往く進行で、「そうそうこういうのでいいんだよこういうので」と思わず腕を組んでしまいたくなります。ラストシーンも併せて非常に読後感の良い作品ですので、おすすめです。
 あと海の家のメンバーたちのキャラもよい。主役ふたりはもちろん、こういうサブキャラの気の良さみたいなのをすっと立てることができるのはうまいなぁ、と。



『シタバシリ』/紗池晃久

 まずもって綺麗な絵を描く人が、その画力でもって全力でギャグマンガを描くってだけでちょっと面白いからズルい。あっちゃんめちゃくちゃかわいいもんな……。
 「舌が異様に伸びる」というワンアイデアからどんどん話が膨らんで行って、なんか田舎を舞台にしたひと夏の冒険みたいな空気感が出ているの、なにかしらの詐欺だろ。
 下を向くと引っ込んでしまう舌を、どうにかして出しっぱなしにする方法とか、なんか細かいディテールがリアリティを高めているなと思いました。そういう独特のコツを研究してしまうことって……あるよね。
 あと特にメインシナリオと絡まない主人公の恋愛事情も好き。


『#lovers』/ぎざねこ

 宇宙人によって侵略された地球。
 主人公が武器種族という兵器へと変身できるヒロインに出会い、宇宙人へと反旗を翻すSFアクション。
 こちらも王道といえば王道なんですが、まあ、ヒロインのデコルテがかわいいですね。俺、この手の目つきが悪い女の子がめちゃくちゃ好きかもしれん……。あと前髪ぱっつんだし、ちょろいし、おっぱい大きいし。
 ヒロインが主人公と「合体」して力を出すというのは、よくある設定なんですが、条件が「キス」とか「心を通わせる」とかじゃなくて、ほんとにストレートに「セックス」なのはかなり珍しいなと感じました。作者の〝癖〟か?
 とはいえせっかくそんな設定にしているのに、肝心のセックスの場面が描かれていないのは非常に残念ですね。無茶を言うなよ少年ジャンプだぞ。うるさい! 続きはfanboxでもいいので公開してください。



『宇宙(そら)を超えて、つながる。』/くぼたふみお

 フフフ……アックス! ( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン

 星新一を彷彿とさせるファーストコンタクト・コメディ。
 いやー……めちゃくちゃ莫迦らしくて最高ですね。低いIQを維持したまま最初から最後まで突っ走り続けるの、控えめに言って最高だからね……。
 下ネタギャグで進行していきながら、最後はSF的にもかなり悪めのバッドエンドっぽいのも面白い。彼ら彼女らの立場を思うと……かなり問題なんじゃないですかね!?
 しかしながら決して悲壮感が前に来る感じになっていないのは、作品全体の空気のおかげか、ルミナスさんのキャラクターが為せる業か。
 後半、星川が手袋をしていたり、マオ・ルカからくる人の性別だったりと細かい描写に気を配られているのも伝わってきますね。



『ルックバック』/藤本タツキ

 これいまさら紹介する必要ある?
 すでに皆さん読んでいることかとは思いますが……。
 私も、早く映画を観に行かなくては……。

 いまは読切ページだと序盤だけしか読めないんですね。とはいえ、損はしないので、単行本をまだ買ってない人は、読んだ方がいいですよ、『ルックバック』は……!

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