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「カシャッサ」 ラム酒との違い

「カシャッサ(カシャーサとも)ってラムと何が違うの?」この質問が一番よく聞かれます。
まずは造り方から。ラムもカシャッサもサトウキビを原料とするスピリッツで、ラムはサトウキビの処理方法により3つの製法に分かれます。

ラムの製法
①トラディショナルラム
サトウキビジュースから砂糖を精製するときに結晶化しなかった部分
(糖蜜/モラセス)から造られる。
②アグリコールラム
砂糖を精製せずにサトウキビジュース100%を使用して造られる。
③ハイテストモラセス
サトウキビジュースをそのままをシロップ化して造られる。

②のアグリコールラムの製法はカリブ海のマルティニーク島やグアドループ島、インド洋のレ・ユニオン島など主にフランスの海外県で盛んで、ラムの中では2〜3%と希少なタイプとなっていますが、現在フランス海外県以外でもこの製法を採用しているブランドが増えてきています。

カシャッサは?と言うと、そうなんです。使用する酵母など細かな違いはありますがサトウキビジュース100%を原材料に発酵、蒸留するといった点においてアグリコール製法と同じと言えます。因みにカシャッサには法律があり、ブラジル産のサトウキビを使用したものがカシャッサで、その他製法や度数などに基準が設けられています。

カシャッサの法律(2003年交付)
カシャッサとはブラジルで生産されたサトウキビを原料とし、その絞り汁を発酵させた、アルコール度数が38~48度の蒸留酒。また製品1Lに対して6gまで加糖したものも含める。


そしてラムとカシャッサには経てきた歴史の違いがあります。僕がラムとカシャッサの違いを聞かれたときに真っ先の口にするのが歴史です。

ラムとカシャッサ、どちらもアジアから始まった砂糖の歴史に起因しますが、1400年代にはヨーロッパ、特にスペイン・ポルトガルで砂糖生産が盛んになり、まずはスペインがカナリア諸島からカリブ海西インド諸島に到着、翌年サトウキビの苗を持ち込みのちに「ラム」が誕生しました。一方ポルトガルはマデイラ諸島産のサトウキビの苗をブラジルに持ち込み「カシャッサ」が誕生。

これらの出来事からラムとカシャッサの歴史が分かれていきます。詳しくは以前取材をして頂いた イエノミスタイルさんが記事をアップしてくれているので見てみてください。製法や楽しみ方についても記載されています。


このようにラムは世界中に広がり蒸留酒の中では最も多くのバリエーションを持ったスピリッツして親しまれ続けています。一方カシャッサは独自の歴史を経て、主にブラジル国内で親しまれてきましたが、カシャッサが本格的に嗜好品として認知されてきたのは1990年代後半に入ってから。それまで世界では「ブラジルのラム」と言われることも多く、2000年代に入り国内外への本格的なブランディングに力を入れ始めました。

カシャッサに法律があるということもラムとカシャッサの違いの一つとして捉えることができますが、ブラジルで法律が交付されたのはごく最近の2003年。逆に言えば「ブラジルにとってのサトウキビの蒸留酒はラムではなくカシャッサなのだ」という意識が強くあったためでもあります。

お酒全般そうだと思いますが、その土地で誕生し、様々な出来事が起こり、人が関わり、結果多くの人に親しまれていくものになるのだと思います。

カシャッサも同じです。なので僕はいつも「ブラジルではどうしてカシャッサなの?」と聞かれたときには、ブラジルの歴史背景があるからこそ「Cachaça=Brasil」なのだと答えています。

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