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有事を乗り切る! 〜コロナ禍で業界全体を考えて動く人たち〜 南雲主于三さん


今回はカフェやバー、飲食業界全般のコロナウイルス 危機に際して、SNSでいち早く情報の発信をおこない、広く業界のためになる活動をおこなっている方にインタビューをした内容の全文投稿です。
本来は旭屋出版のカフェレスの特別企画でインタビューしたのですが、かなりボリュームのある内容となったため、こちらのnoteに全文掲載することになりました。


インタビュー相手:南雲主于三(なぐも・しゅうぞう)さん
所属:スピリッツ&シェアリング株式会社 代表取締役 / バーテンダー
【現在経営している店舗と開業予定店舗など】
・Mixology Tokyo
・Mixology Akasaka
・MIXOLOGY LABORATORY(2020年3月閉店)
・Mixology Experience
・Mixology Salon
・Mixology Spirits Bang(k)
・memento mori(虎ノ門ヒルズビジネスタワー 5月開業予定)
・Mixology Heritage(日比谷OKUROJI 今年末 開業予定)

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(写真:バーに立ち、カクテルを作る南雲さん)


Q1:今回のコロナ騒動発生依頼、BAR業界全体の現状はどのような感じでしょうか?
南雲さん:2月末から徐々に影響が出て、3月中旬から下旬にかけて急激に落ち込み、4月の非常事態宣言でほぼ壊滅状態になり、ほぼ都内のバーは休業しています。弊社も4月2日に全店舗休業を決めて、現在も休業中です。バーはテイクアウトするものがほとんどないので、レストランや他の飲食業のようにしのぐ術がありません。ただ、国税庁が緩和した期限付酒類小売業免許を取得することで店舗の酒類は販売できることになりました。ただ、まだ規制や方法が確立しておらず、先が見えない状況は変わっておりません。


Q2:南雲さんは、カクテルのデリバリーや、SNSでの情報交換呼びかけ、事業者の雇用助成金の情報シェアなど、かなり積極的に動かれています。ご自身の経営する店舗も大変ななか、なぜそこまで情報共有や業界発展の活動に力を入れるのでしょうか?

積極的な情報発信をおこなう南雲さんのFacebookアカウント

南雲さん:今は未曽有の危機です。個人より全体を考える時です。情報が錯綜し、先ほどの免許を含め、給付金、補助金等を含め何が正しいかわかりずらくなっています。この情報を整理し、正しく発信することで、人が迷わず動けるようにする必要があると考えて、自分なりに調べたことを発信しました。僕が考えてるフェーズは二つです。最初はこの非常事態宣言から一旦収束するまでの期間です。次は収束して少し緩和された期間です。僕が怖いのは2つ目のフェーズです。ワクチンが出来上がっていない以上、店舗で食事、お酒を飲むのでしょうか??感染を恐れて店舗利用はかなり控えるか、開店しても相当の距離を取って着席してもらわないといけません。バーは対面接客なので今のコンビニにようにビニールシートを張らないといけないかもしれません。そうなったときに通常通りスタッフを出勤してもらって、営業することで休業補償、雇用調整助成金もなく、やっていけるでしょうか?? 極めて厳しいと思います。そこでコロナウイルスのワクチンが出来るまで、2つの事を考えてます。

【第1フェーズ】
最初のフェーズでは「酒類小売業免許を取得し、詰め替え届をだし、店舗の酒類の量り売り、または詰め替えをして、酒類の販売と共に、材料別に小分けにしてカクテルキットを販売」します。これである程度、助成金、補助金等を貰いしのぎます。

【第2フェーズ】
そして次は落ち着いてきたフェーズで人が少しずつ外出及び出勤をするようになった時に、「予めwebまたアプリで予約注文をもらい、決まった時間に店舗に取りにきて、カクテルを提供し、持って帰ってもらう」ようにします。カクテルを「提供」することは店舗で可能です。その際の容器がテイクアウトに適した容器に入っており、お客様が任意で持って帰る事はテイクアウトに当たらないと国税庁は判断してくれました。ただし、瓶など販売と見紛うものはNGという見解です。

こうやって2つのフェーズに分けてバーとして皆が継続できる事を探し、シェアすることで、出来るだけ多くの店舗がこの困難を生き残る事が出来たらいいと思っています。


Q3:資料の中に「海外のデリバリー事例」がありました。海外では、あのようなカクテルデリバリーが普通におこなわれているのでしょうか?

南雲さん:フランスでは今回規制緩和して、可能になったと聞きました。シンガポール、香港はもともと可能でした。ただ、配送方法や提供方法はそれぞれの国で異なり独自の工夫がみられます。アジア各国でまだ規制が厳しい国もあるので、すべてではないですが、それぞれの国のバーテンダーも動いています。

(以下、南雲さんがまとめた海外デリバリー事情の資料)

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Q4:バー、レストラン、カフェなど様々な飲食業界の仲間に対して何かお伝えしたいことがあれば、お願いします。

いま出来る事をあきらめずに探していきましょう。酒類小売業免許やテイクアウトも駆使し、店舗に来れない今は、店舗をお客様の元に行く、届けるという発想の転換が必要になっているように感じます。とにかく諦めず、自分の達の武器を再確認し、販売方法を既存のデリバリー業やネット通販などから学び、活用、変化することが必要だと思います。皆でこの困難を乗り切り、新しい業界の価値観を創り上げましょう。

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〜南雲さんより〜
今すべき事は一人が助かる道ではなく、皆が助かる道を探し、作る事です。いま国税庁の上部省庁である財務省の主税課に衆議院議員の先生に依頼して公式見解をもらうように要請してます。一番目指す事はカクテルのデリバリーの認可です。
先日国税庁から連絡を頂き直接陳情に行ってきました。嘆願書も持参し、現在出来ること出来ない事を確認し、カクテルデリバリーが可能かどうかを担当酒税官と話しました。
国税庁としても今の状況を打破するために何か知恵を出せ合えないか話し合いました。実際、現在の酒類販売免許の範疇、カクテルの提供と販売の違いなど明確にして貰ったので、現在出来ることも多いにあります。
ただし、カクテルを販売する事はみなし製造となり、酒税法の根幹の問題になるとの事で法改正が必要になるという事でした。特例混和の使用もです。この法改正になると国税庁の範疇を超え、財務省の主税課での検討、国会の審議を経て1年近く要します。もちろんそんな時間はありませんから、緊急事態として法の解釈と特例措置を国税庁としても案を出してもらえないかとお願いをしてます。
その時の質疑をまとめて昨日文書にして出してあるので、国税庁としての文書の確認を待っております。この質疑を通して、テイクアウトの線引き、カクテルの提供と販売の違いと仕方などある程度わかりづらかった事ははっきりしたと思います。
加えまして、次は対象が財務省へと変わるので、お世話になってる方からのご紹介をへて、ある衆議院議員の秘書の方に財務省主税課宛に今回の事を伝え、財務省としての公式見解を文書で出して頂くようにお願いしました。
中々時間がかかります。コロナウイルスの影響は1年を超えて長引くでしょう。私たちが変わらず営業が出来る保証はどこにもありません。
いまこの段階で、現在の酒税法を弾力的に解釈し、特例措置として認めてもらう事は、必ず日本のバーを守る力に一つになると信じてます。
国税庁、財務省からの見解が出て一度お知らせしますので、もう少しお待ち下さい。
この自粛の中、家から出られず、ストレスも溜まる日々と思います。自宅にいながら、日々楽しんでいた事を自宅でできれば皆さんのストレスの解消にもなり、自粛を助ける事にもなります。カクテルをご自宅に届けられることもその一つになるのではないかと思ってます。楽しさや、喜びも人それぞれです。ただ、バーを好きな方、カクテルを心から楽しんでた方もこの国にはたくさんいらっしゃるはずです。その方達以上に、いま耐えてらっしゃる方々へも日々の楽しさを届ける事は僕達としても出来ることではないかと信じております。署名は変わらず多いに越した事はありません。
お一人でも多くご賛同頂けると幸いです。よろしくお願い申し上げます。



〜あとがき〜
所轄官庁への働きかけ、仲間の有益な情報のシェア、そして常に情報共有を欠かさない姿に、感動を覚え、今回のインタビューを思いつきました。
このコロナ騒動のなか、非常に面倒なインタビューであったと思いますが、南雲さんや嫌な顔1つせず、依頼以上のボリュームで返答してくれ、別添資料まで付けてわかりやすくしてくれました。
このあとがきを書いている5月1日、ニュースでは「緊急事態宣言は延長」という風向きが一段と強くなっています。それは私たちの望む流れではないものの、こうやって動いてきた南雲さんの試みも、より強い意味を持ってくるものと思います。
このコロナ騒動が収束しかける頃には、テイクアウトカクテル、デリバリーカクテルが本格的にスタートしているかもしれません。
そう、有事こそイノベーションが生まれるのかもしれませんね。
南雲さん、ありがとうございました。

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