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土俵を壊そうとしているのは誰?(2022.5.3追記)

改正国民投票法が成立しましたね…。これ、コロナ禍で大変な"いま"やる必要あったんでしょうかね。その上、自民党のお偉いさんたちはコロナ禍は緊急事態条項導入を進めるチャンスとか言ってはばからない。これには怒りしかないです。

そもそも憲法に緊急事態条項がないからコロナ対策がうまくいかないわけじゃないです。自分らの失策を憲法のせいにしないでいただきたい。


「緊急事態条項は危険! だまされないで!」

このことを伝えたくてこの記事を書いてます。少し長くなりますがぜひお付き合いください。


そもそも憲法ってなんだっけ?

基本的人権の尊重について色々書いてあるよね。あと、国民主権とか、平和主義とか。まぁ、最高法規、法律の親分でしょ。大事だよね。
政治に興味を持つ前の私は、こんなぼんやりしたイメージしかなかったのですが、そんな私にとって目からウロコだったのがこのクイズ。

「憲法」というルール。守らなくちゃならないのは誰?
 A 国民みんな
 B 国民みんなじゃないよ

答えは、B。
「憲法」というルールを守らなくてはならないのは、国務大臣、国会議員などの公務員。国家権力側のみなさんです。国民ではありません(国民の義務の規定もありますけどね)。

第99条 【憲法尊重擁護の義務】
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

ちなみに、国家権力は国民が作った憲法を守って政治をしなければならないという考え方を「立憲主義」といいます。


自民党のいう緊急事態条項ってなに?

自民党改憲草案第98条、99条(新設)のことを緊急事態条項と呼んでいます。条文は次のようになってます。

自民党改憲草案
第98条【緊急事態の宣言】
1 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。
2 緊急事態の宣言は、法律の定めるところにより、事前又は事後に…②国会の承認を得なければならない。
3 内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、国会が緊急事態の宣言を解除すべき旨を議決したとき、又は事態の推移により当該宣言を継続する必要がないと認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、当該宣言を速やかに解除しなければならない。また、百日を超えて緊急事態の宣言を継続しようとするときは、百日を超えるごとに、事前に国会の承認を得なければならない。…③
4 第二項及び前項後段の国会の承認については、第六十条第二項の規定を準用する。この場合において、同項中「三十日以内」とあるのは、「五日以内」と読み替えるものとする。

第99条【緊急事態の宣言の効果】
1 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。…④
2 前項の政令の制定及び処分については、法律の定めるところにより、事後に国会の承認を得なければならない。
3 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重…⑤されなければならない。
4 緊急事態の宣言が発せられた場合においては、法律の定めるところにより、その宣言が効力を有する期間、衆議院は解散されないものとし、両議院の議員の任期及びその選挙期日の特例を設けることができる…⑥。

これ、問題山積みです。

①なにが緊急事態か法律で決められちゃうの?
②事後承認でもOK?
③何回でも延長できちゃう?
④内閣に権力が集中しちゃうよ(三権分立・地方自治の無視)
⑤「最大限尊重」した上でなら基本的人権を制限できちゃうよ(人権侵害の許容)
⑥ずっと緊急事態ってことにすればいつまでも権力の座に居座れるよ

自民党改憲草案の緊急事態条項は、内閣の独裁を許し、立憲主義に反し、憲法そのものを停止させるような、非常に危険なものだと思います。

例えばコロナ禍対応するために、こんな危険な緊急事態条項が本当に必要ですか? こんな緊急事態条項なんてなくても、現政権がもっとマトモなら、もっとマシな対応ができていたはずでは。コロナ禍をチャンスに緊急事態条項を導入なんてありえない。

この緊急事態条項のほかにも自民党の改憲草案は問題がありすぎです。自民党の改憲草案の中身なんて気にしたことないっていう人は一度調べてみてください(後で紹介する本がわかりやすいです)。ご自身で調べたうえで自民党に賛成だというのであれば私がとやかく言うことはないですが、「よくわかんないけどまぁいいんじゃない?」みたいなあいまいな賛成は本当に危険だと思います。


改正国民投票法には最低投票率の規定がない

今回成立した改正国民投票法についてはよく広告規制が問題にされていますが、私は最低投票率の規定がないのも大きな問題だと思っています。話がちょっとずれますが、大阪都構想の住民投票の時も、最低投票率の規定がないって怖いなぁって思ってました。

国民がちゃんと国家権力を監視する気持ちを持って国民投票に行くということをするなら何も心配いらないでしょう。でも今は政治をあきらめたり無関心な人が多く選挙の投票率もとても低い。だから心配になってしまうのです。選挙にしろ、今後あるかもしれない国民投票にしろ、投票に行かないということは自分の首を絞めることにつながる行為だと思います。


国民には自由及び権利の保持義務がある

第12条【自由及び権利の保持義務と公共福祉性】
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

憲法が保障する自由と権利を保持することは国民の義務です。現政権など国家権力が、私たちが気がつかないうちにこっそり私たちの自由や権利を奪おうとしていないか、しっかり監視していくことが必要だと思います。

以上、長々とお付き合いいただきありがとうございました。この記事が一人でも多くの人が政治や改憲案の中身に興味を持つきっかけになったらいいとなと思います。またお会いできたらうれしいです。


オススメ動画
(国家権力=ライオン、憲法=檻 と例えて説明しています)

オススメ書籍
楾 大樹『檻を壊すライオン』…自民党改憲草案のあやうさ、安倍政権がいかに憲法を無視した政治を行ってきたかがよくわかります。


楾大樹先生は、「憲法問題」と「政治問題」というのは別のものであり、「憲法問題」を考えるときには政治的な”右”も”左”も関係ないとおっしゃいます。そして、相撲に例えると「憲法」は”左右の力士”が争う「土俵」。どのような政治的立場であっても「土俵」上で闘うことが共通する前提条件。どんなに強い横綱であっても土俵の上で闘わなくてはなりません。
自民党さん、土俵を壊そうとしていませんか?



(2022.5.3追記)
ウクライナ情勢を見て、改憲が必要だと考える人が多くなってるように感じる。しかし、緊急事態条項が新設されてしまったら、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。徴兵制だ、国民総動員だ、戦争反対を言うけしからん奴は刑務所だ。なんでもできる。内閣に無期限のフリーハンドを与えることになる。それって独裁っていうんじゃないの? 戦争と独裁どっちがいい?みたいな二択、やめて欲しい。

くわえて問題なことは、まさに今、火事場泥棒的に国民投票法の改正がCM規制なしに進められようとしていること。非改憲勢力の野党は頑張ってこれを阻止して欲しい。そして、夏の参院選は改憲勢力(自民・公明・維新・国民など)の議席を一つでも減らし、非改憲勢力(れいわなど)を伸ばしたい。







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