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生物学を斬る#6 【進化】

"Nothing in Biology Makes Sense Except in the Light of Evolution."
生物を理解するためには進化的視点が必要不可欠である。

Theodosius Grigorovich Dobzhansky

生物学で最も重要な理論は進化論だと思う。
生物学はダーウィンからはじまったといっても過言ではない。
それは、進化という一本の串によって生命を統一的に突き刺すことができ、また、生物学を斬る#1 【4つのなぜ?】|えぬ|noteでも述べたように生命現象を説明する究極的要因であるからだ。

進化については、2つの主要なプロセスがある。
一つは自然選択(適者生存)で、ざっくりとは環境により適した遺伝的変異を持つ個体がより繁殖するというプロセスで、実際のマクロな生物の特徴をよく説明でき、個体数の多い集団での影響力が大きいとされている。
もう一方は中立進化(遺伝的浮動)で、ざっくりとは環境に対し有利でも不利でもないランダムな遺伝的変異がゲノムに蓄積するというプロセスで、ミクロな分子レベルの生物のありさまをよく説明でき、個体数の少ない集団での影響力が大きいとされている。

進化は理論的に重要、面白いというだけでなく、医療等の応用にもつながると知られている。
細菌、ウイルスの進化研究が結核、コロナウイルスなどの抗生物質、ワクチンの開発につながり、がんの発病メカニズムには生物における進化と同様の現象が関わっており、その理解が治療法の開発に役立つと考えられている。

最近はAIが流行しているが、AIとヒトの根本的な違いの一つも進化によって説明できるのではないかと思う。

ヒトは効率的に未来を予測し様々な環境に対応するため、脳を大きく発達させ、物事を論理的に、物語的に考えるように進化した。
これはとても適応的な進化であり、この性質こそがヒトの繁栄を可能にしたと思われるのだが、一方で本当は因果関係のない確率的な事象の理解が困難(量子論など)であり、因果関係をこじつけがちである(占いなど)という傾向につながっているのではないだろうか。

それに対し、AIはこのような進化的背景を持っていない
例えば、コンピューター将棋の世界では、最近のコンピューターは全くヒトの定跡や棋譜を学習に取り入れないようだ。
コンピューターはヒトよりもはるかに強くなったため、僕らには意味が分からないし文脈もないけれど良い手(とのちのち分かる手)をたくさん指してくる。
2020年にはelmo囲いの考案に対して、新手を指したものなどに送られる升田幸三賞をコンピューター将棋ソフトが受賞した。

進化的制約から解放されたAIは自由に思考を展開することができ、様々な分野でヒトがみることができなかった世界をみせてくれるのではないかと思う。

参考文献

AIとヒトの根本的な違いの一つも進化によって説明できるのではないかと思う。進化は理論的に重要、面白いというだけでなく、医療等の応用にもつながると知られている。細菌、ウイルスの進化研究が結核、がんの発病メカニズムには生物と同様の現象が関わっている。

ELYZA DIGESTを用いて要約
サムネイル画像はとりんさまAI(@trinsama)により生成