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生物学を斬る#1 【4つのなぜ?】

生物学は非常に幅広く、多くの研究者が独自の観点から研究を行っている。それぞれの読者の興味は異なると考えられるため、様々な視点から生物学をみていきたい。この連載を通して、すこしでも多くの人に生物学の魅力が伝わればと思う。

生物学は生物についての何らかの疑問に答える学問である。しかし、一つの現象に対する説明の仕方は一つではない。このことを認識していないと議論や理解にズレが生じてしまう場合があるため、生命現象の説明の仕方を分類した「ティンバーゲンの4つのなぜ」を説明する。

ある生命現象がなぜ生じているのかという疑問には、4つの答え方があるといわれている。その4つの方法とは、1.物理的要因 2.発生的要因 3.歴史的要因 4.適応的要因である。それぞれがどんな方法かを説明するために、ここでは「なぜすべての生物は細胞からできているのか」を考える。
(細胞は生物であることの定義のようにもなっており、また進化的な面についてはわからない部分も多いため必ずしもいい例とは言えないが、考え方の説明として紹介する。)

  1. 物理的要因:DNAを遺伝情報として内部に含み、脂質の細胞膜で包まれ、独自の化学反応である代謝を行う、細胞が生物の構成単位として用いられているから。

  2. 発生的要因:細胞が分裂することで新たな細胞が生み出され、それ自身が、またはそれが多数集まることで生物個体が形成されるため。

  3. 歴史的要因:原子生命体として細胞を持つ生物が約40億年前に地球で誕生し、その子孫で細胞を持つ者のみが生物として現在まで生き残っているため。

  4. 適応的要因:細胞をもつ個体は細胞内に化合物を濃縮し、効率的に化学反応を行って諸々の機能を果たすことで、そうでない個体よりも適応度が高かったから。

物理的要因と発生的要因はその現象を引き起こす直接的原因でもあるため、至近要因とも呼ばれる。
また、歴史的要因と適応的要因はその現象を引き起こす根本(進化)的原因であるため、究極要因とも呼ばれる。

以上にあげた答え方はどれも重要で、物理的、発生的、歴史的、適応的要因はそれぞれ、細胞・分子生物学、発生生物学、系統学、進化生物学など生物学の様々な分野と密接に結びついている。

参考文献

Wayback Machine (archive.org)

生命現象の説明の仕方を分類した「ティンバーゲンの4つのなぜ」を紹介している。物理的要因、発生的要因、歴史的要因、適応的要因はそれぞれ重要だという。それぞれの答え方はどれも重要で、生物学の様々な分野と密接に結びついている。

ELYZA DIGESTを用いて要約
サムネイル画像はとりんさまAI(@trinsama)により生成