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三島屋変調百物語六之続(23-50)

以前から宮部みゆき氏の時代小説が特に好きで、三島屋変調百物語シリーズもずっと読み続けています。

本作は2018年8月から2019年7月まで毎日新聞に掲載された小説を、2019年12月に単行本化されました。シリーズも6冊目です。

江戸は神田の袋物屋・三島屋で続く、一風変わった百物語。 これまで聞き手を務めてきた三島屋主人・伊兵衛の姪のおちかが、めでたく嫁にいったので、次なる聞き手は伊兵衛の次男・富次郎に。 気さくで気がよく旨いもの好き、跡取りではないから「小旦那」と自称する富次郎。 おちかが聞き手だったころ、ふとした縁の導きがあって三島屋に入り、百物語の守り役となったお勝。 富次郎が幼いころから三島屋に奉公してきた古参の女中、おしま。 この三人で語り手を迎え、新たな百物語の幕が開く。(Amazon内容紹介より)

「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」

 聞き手はおちかから富次郎に変わりましたが、百物語の大切な決め事は変わりません。今回の物語は4つ。どれもとても奇異なお話です。

再会した幼なじみが語る一家離散の恐ろしい運命(第一話「泣きぼくろ」) 
村の女たちが桜絶景の丘に登ってはならない理由(第二話「姑の墓」) 
妻子を失い懸命に走る飛脚が道中めぐりあう怪異(第三話「同行二人」) 
異形の屋敷に迷い込んだ者たちの理由と運命(第四話「黒武御神火御殿」) 

読み進めるとどれもがその怪異が恐ろしいのですが、人間の業の愛おしさも感じる不思議な物語です。

そしてフィクションながら、江戸時代の商人たちの様子や、江戸時代らしい詳細設定を背景として(あまり詳しく書くとネタバレになるので)きちっと怪奇な物語に仕上げるところが著者らしくて、私は好きです。

また聞き手が甘い物好きの富次郎になったことで、お茶とともに出されるお菓子たちがとても美味しそうで、それも楽しみの一つになりました。

是非一読していただき、その辺りを含め堪能してもらいたいですね。

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