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タイガー理髪店心中(46-50)

読み終えたのは初読みの作家さん、小暮夕紀子氏の林芙美子文学賞受賞作品です。

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穏やかだった妻の目に殺意が兆し、夫はつかの間、妻の死を思う。のどかな田舎町で変転する老夫婦の過去と行く末。伸びやかでスリリングな視線、独自の土着性とユーモア。第四回林芙美子文学賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

著書には受賞作の「タイガー理髪店心中」と「残暑のゆくえ」がおさめられています。この著書が著者の初の単行本でもあるようです。

「タイガー理髪店心中」を読み終えると、主人公の夫婦の結末は、終わりに見えて終わりではない、老老介護を示唆する物語だと改めて突きつけられた気がします。

まだ介護と向き合わない方たちには、ブラックユーモアと受け止められる現在進行のありさまをどう解釈されるのか、不安な気持ちもよぎります。

そして「残暑のゆくえ」の方が心に重さを残した作品です。

主人公の女性と夫、それに商店街の中のろうそく屋の主人は、3人とも満州からの引揚者ですが、三人がそれぞれ違った、それでいて同根の傷を深く深く抱えて生きて来人々です。そして引き上げでの悪夢が終盤で明かされのです。

先の戦争の傷跡を静かに一貫して伏線として描いた作品で、私の実家の隣に満洲からの引き上げ家族がおられるので、リアルさが増しました。

予想もしなかった文芸作品でしたが、読んで良かったと思いました。



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