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美しい刺繍小説〜水を縫う(30-50)

もう「雨はたくさん!」そんな気持ちになる日本列島、今週は北陸・東北地方に雨の被害が出ています。心からお見舞い申し上げます。

さて横になっている時間が多い私ですが、今週2冊目を読み終えました。
図書館司書さんからお勧めされ、表紙のイラストと本の帯に書店員さんたちの応援コメントに惹かれたからでした。

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松岡清澄、高校一年生。一歳の頃に父と母が離婚し、祖母と、市役所勤めの母と、結婚を控えた姉の水青との四人暮らし。学校で手芸好きをからかわれ、周囲から浮いている清澄は、かわいいものや華やかな場が苦手な姉のため、ウェディングドレスを手作りすると宣言するが――「みなも」
いつまでも父親になれない夫と離婚し、必死に生きてきたけれど、息子の清澄は扱いづらくなるばかり。そんな時、母が教えてくれた、子育てに大切な「失敗する権利」とは――「愛の泉」
ほか全六章。世の中の〈普通〉を踏み越えていく、清々しい家族小説。(Amazon内容紹介より)

寺地はるなという作家を「希望のゆくえ」という作品で初めて知ったのですが、その時のふんわり感が印象的でした。

今回の作品は章ごとに語り手が入れ替わり、家族一人ひとりの思いや考え方の違いが浮き彫りになるという形をとっている家族の物語です。会話に関西弁を使っているのも親近感が湧きました。

好きなものを追い求めることは、楽しいと同時にとても苦しい。p40(清澄)
男のくせにとか女のくせにとか、そんなことに苦しめられずに済む時代を自分の子や孫には生きてほしいと願ってきたつもりだった。そのくせ「女は男より劣る」という考えは今なおわたしの全身を蝕んでいる。p129(祖母文枝)
自分に合った服は、着ている人間の背筋を伸ばす。服はただ身体を覆うための布ではない。世界と互角に立ち向かうための力だ。p185(父全の友人黒田)

わたしの年齢だと清澄の祖母と同世代なので、彼女の言動が納得、特に女ということの定義に反発してきた若い頃を思い出しました。

黒田の服に対する定義は、最近洋服選びに楽な方に流れされがちなわたしの心にチクリと刺さりました。

エンディングが美しくて泣けました。寺地作品お勧めです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今日1日があなたにとって素敵な1日になりますように。

今日のバックミュージックはこちらでした。


















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