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#詩
惜しむのは季節がゆくことじゃなく
【詩】
惜しむのは季節がゆくことじゃなく
惜しむのは世界を覆うひかりじゃなく
全力で闘えていないことなんだ
時は正確に春を連れ去り
夏を南の海へと追いやる
そうして秋も冬もひとまわりして
また春を連れてくる
惜しむのは季節がゆくことじゃなく
全力で闘えていないことなんだ
だから夏のせいじゃない
蝉の鳴き声がひぐらしへと変わり
夕闇の野に虫の音が騒がしく
夜空の月が明
2000光年先の星の消滅
【詩】
はるか昔
2000光年離れた宇宙の果てで
ひとつの星が消滅した
ありきたりな話ではある
けれどそうして
在るものは消え失せ
そしてまた生まれる
幾度も幾度も幾度も幾度も幾度も
胡蝶の夢のそのまた夢のように
世界は不確かで、脆い
僕の憂鬱も君の恐れも
僕の苦悶も君の憂いも
あまりに不確かで、脆い
だから、勇者のように力強く
いま、この瞬間に全力で
在るこ
ほんとうに一人になりたいときは
【詩】
ほんとうに一人になりたいときは
衛星軌道に浮かび
膝を抱えて地球を眺める
そんなこどもみたいに
夜空を見あげ夢想する
誰も気にしないでと
古い歌口ずさんで
ほんとうに大切な気持ちは
井戸のなか深く沈め
叫ぶ声漏れぬよう蓋をする
そんなふうに息ひそめ
地熱だけで暖をとる
誰にも見つからないよう
草木の息づかいを聴く
ほんとうの静けさを探して
言葉の意味を見つめ
文字の群生する道を
かたちなきものを言葉にして
【詩】
かたちなきものを言葉にして
胸にナイフで綴る作業を繰り返す
ひとときの発露や遠く呼び起こされた記憶
いまそこに生まれた光景を写真家のように
画角や光量を整え胸の奥フィルムに刻み付ける
ぼくの見慣れた感情もきみの隠された想いも
電車で乗り合わせたうつむいた青年も
信号で立ち止まり空を見上げる少女も
目に止まったすべてを綴り続ける
いつかぼくが死んだずっとあとに
百年千年