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2019年4月の記事一覧
『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』全文公開⑰1年だけ付き合う
一月、東京にも雪が降る日がある。渋谷の雪はあっと言う間に人々にかき消されてしまうが、私のバーは少し裏手にあるためしばらくの間は雪見酒が楽しめる。
こんな雪の夜には、はかない音楽を聞きたくなり、レコード棚の前でしばらく考えた。
クロディーヌ・ロンジェというアメリカで女優、歌手として活躍したフランス人女性がいる。彼女がまだ無名の頃、ダンサーとして渡米し、ラスヴェガスで運転していた時、その車が
『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』全文公開⑱二人の恋を繋ぐ音楽
二月のある日、風は冷たく、空には雲が立ちこめ、今にも雨が降りそうな夜だった。
私は、二月の寒さにも負けないような強い意志を持ったカナダ出身のシンガーソングライター、ジョニ・ミッチェルの『青春の光と影』が聴きたくなり、棚からレコードを取り出し、ターンテーブルの上にのせた。
「涙と不安、そして誇りを持って、私はあなたを愛していると叫ぶ」とまだ若いジョニ・ミッチェルが歌う切ない曲だ。
すると
『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』全文公開⑲恋は風邪と同じ
渋谷のスクランブル交差点は一度の青信号で多い時には三千人が行き交うらしい。
三月、春の訪れを知らせる温かい雨が降る日のこと。私はスクランブル交差点を行き交う人たちの青、赤、黄、白、紺、緑とたくさんの色の傘の花が咲き乱れるのを眺めていた。
この傘を持った人たちそれぞれに人生があり、このスクランブル交差点を渡っているんだと思うと、少し切なくなる。
こんな温かい雨が降る夜にはボサノヴァが聴
『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』全文公開⑳伝えられなかった恋
四月になると渋谷は新しい人たちを迎え始める。新しい学生、新しい社会人が街を歩き、渋谷をまた新しい街に変える。
バーテンダーとしては、こんな時期にこそ、ゆっくりとくつろいだ時間や空間を作ってお客様を待ちたくなる。艶やかな大人のための時間を作ってくれる歌手を考えてみたら、ジュリー・ロンドンを思いついた。
彼女が歌う『エヴリタイム・ウィ・セイ・グッドバイ』という曲がある。「さよならを言うたびに
『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』全文公開㉑春のまま終わった恋
五月。渋谷の街に雨が降り始めた。私は最後のお客様に「ありがとうございました」と告げると、扉を閉め、入り口の明かりを消した。
ターンテーブルの電源を落とし、ラジオをつけると、この夏公開される映画の主題歌がかかった。
「君を待っている間の時間が一番楽しい。君が笑顔で現れる。君は『待った?』と言うけど、僕は緊張してしまってうまく話せない。君は気づいていない、この僕の気持ち。そして僕は知っている。