見出し画像

大学院留学希望者からの質問とそれらへの回答〜HR専攻・就職編〜

これまでに大学院留学希望者に頂いた質問のうち、HR (Human Resources) 専攻及び英国での就職活動に関する内容をまとめました。
HR専攻に関しては私のLSEでの経験をもとに回答してますが、他大学のHR専攻を検討している方の参考にもなると考えています。


HR専攻について

Q:コース開始前に読んでおくとよいものはありますか?

A:進学したい大学院のコースのページに、講義で使用予定のテキストのタイトルが書いてある場合があるので、高価でないものを1,2冊読んでみましょう。英語で読むハードルが高ければ、日本語で人的資源管理や組織論に関する学術本をひとまず数冊読んで全体像を把握することをお勧めします。また、個人的に意外だったのが、LSEのHRコースでは”Japanese management”が人的資源管理において、生産性及び人間関係の両方にフォーカスしたモデルとしてしばしば論じられることです。Toyotism (KambanやNemawashi等)や5Sが解説されました。議論のときに数少ない日本人生徒に質問が殺到すると思いますので、私はLSEのHRコースに入ってくる人らには、渡英前にトヨタ式経営の本を一冊読むことを勧めてます。また、議論で取り上げられた際にきちんと英語で説明できるよう、年功序列、新卒一括採用、メンバーシップ型雇用及びジョブ型雇用等は理解しておきましょう。

Q:1年間HRMを学んでみて意外だったことや大変だったことはありますか?

A:意外だったことは前述のとおりです。大変だったのは、前期セメスターは様々な理論を学ぶので、リーディングの量がかなり多かったことです。それらの理論を実務にどう活かせるのか疑問に持ちながら学んでいたというのが正直なところでした。これは他大学のビジネスマネジメント系コースの人らも同じことを言ってました。ただし、後期セメスターではそれらの理論をきちんと理解した前提で、応用かつ実践的な内容に入ります。HRアナリティクスも後期に入ってから学んだので、個人的にはある程度満足です。

Q:HRM界隈でホットなトピックはありましたか?

A:国籍等の多様性が生産性にプラスとなるのかどうか、女性のリーダーシップ推進の是非(アファーマティブアクション含む)、HRにおけるAIの活用のメリット・デメリット等ですね。特にChatGPTは、2022年の冬ぐらいに爆発的に活用され始めたのにかかわらず、早速後期セメスター(1月から3月末ぐらいまで)の講義の議題に取り上げられてました。HRアナリティクスを学ぶコースなら、2023年以降はさらにフォーカスされるでしょう。そうでないコースでも、AI時代のHRの役割という議題等で議論することになるかもしれませんね。

Q:LSEのHRコースでは、 HR関連の職歴がないクラスメイトの方は実際いらっしゃいましたでしょうか?

A:ご質問の「HR関連の職歴がない」ことが、長期的なHRの経験が無い、もしくは肩書きとしてHRではなかったという意味であれば、そのような人たちもいました。具体的に言えば、大学を卒業してすぐ来た子も一定数おり、そのような人達はLinkedInを見たところ、コーンフェリーやBig4等のコンサルティングファームの1ヶ月から数か月のHRインターンをした程度でした。また、社会人経験のあるものの、HRではなかった人もいました。しかし、彼らに共通しているのは、いかに自分はHRを学ぶ素養があるのかアピールできていることです。大学を卒業してすぐ来た人達は、学部ではHRと関連している心理学や経営学を専攻しており、LSEで学びたいことをしっかり言えます。HR経験のない社会人経験のある人達は、人をマネジメントした経験等があり、修了後のキャリアも明確です。
したがって、合格するためには、質問者さんがいかに自分はHRに関連する知識や素養があるのか、何を学びたいか、そしてどうなりたいかを言えるかにかかってます。

就職活動について

Q: 実際に就職活動される中でCIPDの資格の有用性を実感することはありましたでしょうか?資格が取れることはメリットだと感じつつ、実際にこの資格の取得が取れるコースをmustにすべきか悩んでおります。

A:「就活における有用性の有無」と、「在籍するコースとして、CIPDが修了後付与されるものにすべきか」というのは別の話なので、それぞれお答えします。まずは前者ですが、求人によります。私はあまりイギリスのHRに応募しなかったですが、人事の求人によっては「Requirement:CIPD」というのもありました。ただ、HRコンサルタント等ではそういうのは見かけなかったですね。CIPDがあれば、応募できる求人数自体は増えますし、面接で体系的なHRの知識があるとアピールはできます。ただ、イギリスは学歴よりも経験重視なので、これまでの職歴がいかに応募したポジションに関連があるのかアピールすることの方が重要かもしれません。
次に、「在籍するコースとしてMustかどうか」という点ですが、これは質問者さんが目指したい方向性によります。私はLSE以外にもいくつかの大学のHRコースからオファーをもらっていました。そのうちのManchesterの国際協力専攻の中のHRコースはCIPDが修了後取得できないものでしたが、国際開発のコンテクストの中でHRを学べるということで、志望順位は高かったです。同じく国際協力のコンテクストでのHRを学べることに加えて、CIPDのlevel7(最上級)を取得できるLSEから幸いオファーをもらったので、ここで学ぶことにしました。ちなみに、level5をもらえるところとlevel7をもらえる修士課程がありますが、特に理由がなければlevel7のところに進学することをお勧めします。理由は、以下のように単純に内容のレベルが異なるからです。

Level 3 (Foundation) — Equivalent level to A-Levels.
Level 5 (Associate) — Equivalent level to an undergraduate degree.
Level 7 (Advanced) — Equivalent level to a postgraduate degree.


Q:就職活動は留学当初から始めていらっしゃったのでしょうか?

A:はい。ただ、私の場合、時期によってやったことは違いました。社会人経験があるのであれば、修了する数か月前から応募を開始することを私は先輩からお勧めされていたので、2023年の春くらいから応募を始めていましたね。一方で、人脈づくり(人事や卒業生への接触含む)や説明会への参加は、渡英直後、つまり2022年秋から始めてました。情報収集と実際に応募するのは別だということです。ちなみに、私はしなかったですが、この国でインターンシップを経験すれば、就職活動のときに「英国の職場環境を理解してます」と言えますし、場合によっては修了後そのまま正規採用という可能性もあります。
なお、就労経験のない、もしくは少ない人はGraduate Schemeという枠組みを利用して入社を目指すことになると思います。これは大学を卒業したばかりの学生が専門的なスキルを習得し、企業内でのキャリアを開始するための枠組みを意味します。これに関しては10月・11月に募集締め切りのところがあるので、渡英直後からLinkedInや大学の求人掲載ページを確認することをお勧めします。
まとめると、就労経験がない人の方が書類の提出締め切りはずっと早いですが、就労経験がある人も早い時期から情報収集はするべきだということです。


Q:LSEでの勉強とインターン(週3日程度)の両立は現実的に可能かご意見を伺いたいです。

A:両立は可能か、という質問に対しては人によるのでYesともNoとも答えられないことをご理解ください。というのも、週3日のインターン(20時間以内のロンドンでのインターンを想定)と勉強を両立できるかは、質問者さんの英語力、これまでの経験、そのインターンの内容、学科のアサイメントの量、そして質問者さんの娯楽などにあてる時間を捧げる覚悟の強さ等によるからです。ただ、実際にインターンをしている人はクラスメイトにもいます。在学中に始めた人が多い印象ですが、中には入学時期よりも少し早く渡英して就活してインターンを始めた人もいるそうです。

まとめ

HR専攻と就職活動についての質問をまとめました。HR専攻に関しては、大学によると思いますが、少なくとも日本の特徴は英語で説明できるといいですね。また、就職活動に関しては、就労経験のある人とない人では始める時期が異なることを書きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?