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カササギの橋

春は桜を眺め暖かくなり始める季節を感じ
夏は人混みの隙間から手を繋ぎ花火を見上げた
秋は人懐っこい猫を撫で
冬はプレゼントし合った手袋をつけて雪を見た

君と歩いた遠くの海まで続く長いこの河川敷は
君と過ごした思い出が溢れている
移りゆく季節の変わりが二人の背景を彩っていた

川の向こう側に僕
渡ってこっち側に君が住んでいたから
天の川だねと僕が言うと
なら川にかかる橋はカササギの橋だねと君が言う
漢字も分からないその橋は
天の川にかかる橋だと教わった
僕の知らない言葉を君が多く知っているから
ただの散歩も世界の広がりを感じることができた

季節の巡りを2周したところで
僕は天の川を渡って君と一緒になり
季節の巡りを3周したところで
河川敷をベビーカーを押しながら歩くようになり
季節の巡りをもう30周したところで
また二人になってゆっくり川のせせらぎを見た

季節の巡りがもう何周目か分からなくなった頃
車椅子の君を押しながら昔話を咲かせ
その何周目か後に僕は一人で昔を懐かしむように
その河川敷を歩いた

川にかかる大きくてアーチが綺麗だった
カササギの橋は古くなり新しく架け替えられ
思い出が記憶の中ばかりになっていくけど
川の向こう側に芽吹く花を眺める僕の隣に
君の影が並んでいくれているような気がした

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