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おいしいごはんが食べられますように

このタイトルに惑わされてはいけません。
最高に不穏なストーリーでした。

ページをめくる手が止まらなくて、どんなストーリーになるのか気になって気になって、最終的にそうなるのかと言う裏切りもあり、やっぱり違う結末であって欲しいなぁと言う期待もあり、とにかく誰かと語りたくなるような作品でした。

そして、読んだ後の胃もたれが半端ありませんでした。

いろんな食べ物が出てきたのもそうですが、人間の汚い部分や黒い部分に触れてしまったせいで、なんだかモヤモヤした気持ちがおさまらなかったのです。

二谷、押尾、芦川、3人が織り成す職場での人間ストーリーがたまらなく濃くて黒くてきたなくて、でもなんだか読み進めてしまう自分の心もまた汚れているんだなぁと思いました。

人間関係の話でありながら、基盤はタイトルの通り、食に関する価値観の違いでした。


登場人物の芦川さんは、無意識の偽善者として描かれていて、食べ物を美味しく食べることが正義だと考えています。

それに対して主人公の二谷は、食べられれば何でもいい、食べることに時間をかけること自体もったいないことだと考え、芦川とは異なる立場をとっています。


そんなところに、芦川を嫌う押尾がやってきます。押尾は食べることの意義を見出しつつも、二谷への共感の姿勢を保つことで、二谷は押尾に仲間意識を抱いていくようになります。


その3人の関係は大きく歪み、とんでもない方向に向かうと思いきや、まさかの結末を迎えます。


正直、登場人物の行動は「なんで?」の連発でした。誰にも共感できない苦しさがあり、そこはコンビニ人間とよく似ていると思いました。

でも、よくかんがえてみると、自分の人生もそんなものだなぁと思いました。
周りの人の考えを100%理解できることなんて、まず、ありえないからです。

本で描かれているストーリーは、人生1部でしかありません。その中での勝ち負けや幸せの基準を考えるよりも、その後の人間としての飛躍ももっと見てみたいです。

個人的には押尾には幸せになってほしいなと思います。


そしてタイトルの、おいしいご飯が食べられますようにと言うのは、芦川さんの願いだったのかもしれないと感じました。

食べ物を美味しく食べること、時間をかけて丁寧に色に向き合う事は、現代忘れられてしまった感情なのかもしれません。

その大切さを伝えていたのが、ミステリアスな存在として描かれた芦川さんでした。
芦川さんの行動には終始戸惑ったり、いらいらしましたが、人間が本来持つべき考え方を持っていたのは芦川さんなったのかもしれないですね。


もし読まれた方がいたら、語りましょう!


読んでくださりありがとうございました♡

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