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酒好き、料理好きです。世界征服は美味い料理から。本業はITコンサルです。ときどき物書き…

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酒好き、料理好きです。世界征服は美味い料理から。本業はITコンサルです。ときどき物書きしています。

最近の記事

春の色は

春を感じるのは 桜が咲き出したら。 強い風が吹いたら。 ルーキーたちの声が聞こえだしたら。 淡い桜色、蒲公英や菜の花色、鮮やかなチューリップの赤。 青いすみれ、青いヒヤシンス、ネモフィラ。 「青い花がたくさんだね」 君のその言葉で、僕の春は、青色になった。 どこからか、春の歌が聞こえる。 少しだけ肌寒さのある風。 空を見上げると、夏とは違う、青い空。 鮮やかな青の背景から、君の嬉しそうな笑顔に、フォーカスが移動する。 「今日は、ずいぶん暖かいね!」 そうだね。

    • たんたん…めん

      現代では、知らない日本人は居ないと思われる、担々麵。暑い時期にも、寒い時でも、なぜか食べたくなりませんか。 この担々麺、いや、担々麺っぽいものは、意外と簡単に作ることができます。ではレシピを…と、その前に、この不思議な響き「たんたん」とは、いったい何のことなのか、調べたこと、ありますか。 「担」という字は、「かつぐ」という意味です。担々麺は、本場四川において、天秤棒で売り歩く麺が、発祥なんだとか。その場で、熱々の辛い麺をサッと出す、ということで、人気のファストフードだった

      • ポテトサラダ Potato Salad

        ポテトサラダ、好きですか? 私は、嫌いな人に出会ったことは無いのですが、「嫌いではないけど派」と「大好き派」に分かれるかもしれませんね。 このポテトサラダ、僕は、欲望をぶつける一皿だと思っているんですよ。 なぜなら、さまざまな派閥が存在するからです。 柔らかい…何ならポテンポテンとしているやつ派 ナッツやレーズンを入れる、DELIもしくはデパ地下派 ジャガイモ以外入れるのは邪道派、などなど… そして 好きなものなんでも入れてしまえ!派。 私は、これです。 そう、胡

        • シューファルシ

          ビストロでバイトしている友人が言っていた。「うちのは裏メニューなんだけど、必ず用意しているよ。常連さんは、8割はオーダーしてくれるかな。」シューファルシとは、そういう食べ物らしい。和食で言えば…なんだろう。角煮とか、もつ煮とか、そんな感じなんだろうか。 フレンチのロールキャベツ。そう言ってしまえばそうなのだが、細かいところは結構違うし、何より、私自身が納得いかない。シューファルシとは、ロールキャベツにはない、優しさと芳醇さがある。もちろん、ロールキャベツという、心の温まる料

        春の色は

          今何してるの? 君のことを考えていたよ え、なに、私なんかしたっけ... うん、したした なになに? とりあえず、ご飯食べに行こっか ん?うん、いいよ〜

          今何してるの? 君のことを考えていたよ え、なに、私なんかしたっけ... うん、したした なになに? とりあえず、ご飯食べに行こっか ん?うん、いいよ〜

          スタンプカード

          ピコン 「先輩!明日の日曜、映画いいですか?」 「あ、んー、うん、いいよ。」 「観たいの、もう決まってるの?」 「はい!」 「いま劇場版の『サスペンスと言う勿れ』を上映中なので、それがいいです!」 「あー、いいね」 「じゃ、また映画館の前に10時でいい?」 「それなんですけど」 「ん?」 「今回は、ちょっと遅めが嬉しいんですけど…ダメですか?」 「ダメじゃないよ。何時?」 「17時開始の回があるので、16時45分とかでどうですか?」 「結構遅いね、まあいい

          スタンプカード

          坂道を歩く

          陽の傾きを感じるのは、いつ頃なのだろうか。 ピーク? 折り返し地点? 多くは、たぶん、下っているときに気づくのだろう。 ああ、もう、陽は傾いているんだな、と。 休日の夕方の、混雑した商店街で、少し前を歩く彼女の背中を見ながら、ふと、そんなことを思う。 この最愛の人との下り坂は、幸せな坂なのだろうか。 「ねぇね」 「ん?」 「ごはん、炊いてきちゃったけどさ」 「うん。」 「この先のラーメン屋さん、行きたくない?」 同じことを考えていたよ。 そういうところなんだよね。

          坂道を歩く

          共犯者

          「強い酒が好きですか?」 フロリダまで来て、日本人に声を掛けられるなんて、運が良いのか悪いのか。憧れのマイアミ・ビーチの夜だっていうのに。 「しかも、お読みの本は『赤と黒』。スタンダールを読みながらウォッカなんて、どこかで聞いたような凄い趣味だ。」 一度目の無視で退散しておけば良いものを。しつこい男は嫌い。 「大きなお世話ですよ。何か用かしら?」 「おっ…と。どうやら邪魔者のようですね。これは失礼しました。その綺麗なお顔に書いてある通り、退散するとしましょう。」

          父娘でも、心浮つく、待ち合わせ

          父娘でも、心浮つく、待ち合わせ

          さくらタルト

          「なに、最近様子がおかしいんだって?お前のかぁちゃんが心配してたぞ?」 「なんだよ急にびっくりし…あおい、か。なに、うちのおふくろ、お前に何か言ったのか?」 「ナニかもなにも…近頃は少食だし、やたらとため息はつくしで、何か悩みでもあるんじゃないか、って。心配してたよ。はると、お前もいい歳なんだから、あんまりお袋さんに心配かけるなよ。」 「偉そうに…いい歳って、俺たちまだ25だぞ?」 「そう。もう25だよ。そろそろ親を安心させてもいいんじゃないの?」 「安心て…んまぁ

          さくらタルト

          ベルフラワー

          事を急(せ)くのは、君の悪い癖 油断と隙(すき)しか残っていなくて、 恐怖すら切り離しているくせに いつまでも凪だと思っているの? 蒙(くら)い波に呑まれて うねりが生きがいだった 突堤の小舟は、必ず離れていく 近付くフリをして、また離れる だからいっそ蒙さに呑まれた方が楽だった 陽が上(のぼ)っても、ここには届かない 期待しない事が、君の盾のはず でも油断と隙を埋める灯りで いつの間にか盾は要らなくなった 凪だと思った場所は草原で ふと気づくと足元には、 桔梗の花が

          ベルフラワー

          グレーさん、少し話していい?

          あなたの作品の、夏の描写が大好きでした。 青空の下の濃い影、たくさんの向日葵、見るものに微笑みかける優しい表情、そして、かわいいかわいい魔獣さん。 あざらし?茄子?なにこれ? 最初のスタンプの印象は、こんな感じでしたよ。かわいいのに、少し不遜な感じ。心にずいずいと入り込んでくる白い魔獣。いつの間にか、虜になっていました。 Twitterでグレーさんを見つけてフォローし、その優しいお人柄にも惚れました。まじゅらーと呼ばれるファンの方々を、とても大切にされている感じが伝わ

          グレーさん、少し話していい?

          はじまりの、ほんの少し、前

          もう少しだけ。 終電まであまり時間は無いけれど、もう少しだけ一緒に居たい。恋愛の、はじまりの、特有の気持ち。 どちらからともなく、駅近くの、オーセンティックなバーで、あと一杯だけ飲もう、そこで次の約束をして、気持ちよく帰ろう、そんな空気。 泊ろうか、なんていうセリフは、未だ無粋に感じる。そんなタイミングって、あると思う。 ◇◇◇ ウイスキー、少し詳しいんだ。選んでもいい? 特に銘柄の拘りは無いし、ストレートでバーボンくらいは、何度も経験がある。 その申し出に、嬉

          はじまりの、ほんの少し、前

          作戦を遂行せよ

          まただ…毎度のことながら、嫌気が差す。 無事にコトが運んだ試しがない。心の中でそう吐き出しながら、この崇高な―といっても、自分でそう思っているだけかもしれないが―作戦を成功させるべく、邪魔者はいつも通り全力で排除する。 気づかれてはならない。相手の発する信号をきっちり理解し、上手くかわすのだ。相手にとっても重要な事ならば、この作戦を諦めることも、視野に入れなければならない。 しかし、大抵の場合は、大した事ではない。相手も、まるでルーティーンの様に、そして、こちらの作戦を

          作戦を遂行せよ

          誰かと飲みたいウイスキー

          「飲むでしょ?」 そう言って二つのグラスとウイスキーの瓶を器用に持ち、いつも通り、ニコニコしながらペタンと座り込む彼女の姿を見ながら、僕の心は少しザワついていた。いつものジムビーム。正直あまり好みではないが、彼女は、この高いとは言えない酒を、ロックでちびちび飲むのがお気に入りのようだ。二つのグラスに琥珀色の液体を注ぎながら、しかし意識は既に、テレビのお笑い番組に向いていた。 2年も一緒に住んでいると、初めて知り合った頃の気持ちは…薄れているわけではないけれど、新鮮さが無い

          誰かと飲みたいウイスキー

          もう来ない冬の日

          「後悔先に立たず」という言葉は誰でも知っているけれど、大抵の場合、後悔することは頭の片隅で何となく解っていて、それでも行動が出来ない。何となく、やらない理由をつけて、やってしまえばどうにでもなる理由を前に出して、結局後悔するんだ。 ◇◇◇ 随分と、前の話。僕は家庭の事情で、苦労して合格した高校を離れなければならなかった。親は函館を出て、東京へ引っ越すという。だから、お前も東京の高校に編入するんだ。母は、一人で函館に残っても良いと言ってくれたけれど、父は許さなかった。その父

          もう来ない冬の日