感想
全体・まとめ
構成がちゃんとしていないので、「資料」とかの番号指定のミスが目立つ。
この本は山井和則という人間・政治家を知る上で非常に参考になったし、一般論としても勉強になった。
下の部分でも書いたが、彼は独善性が強いと思う。また、彼が正しいことを主張し、それを実行しようとしているとしても、その経過(プロセス)においては周りの人を巻き込み、説得し、受け入れてもらう(あるいは、敢えて反対はしない、程度になってもらう)必要が政治にはあるのだが、その部分が弱いという感想は変わらない。
ただ、第6章「命を救う政治」の最後の部分「政治は『無償の愛』」と、あとがきで分かるように、彼は生半可な公明党員よりも(笑)宗教者である。
こう言われると、「政治家は次の選挙に受かるのが目的だから…」とか言って分析してる自分が恥ずかしくなってきます(笑)
第1章 最も政治の力を必要とする人々は、最も政治から遠いところにいる
4. 障害者サービス無料化への戦い:障害者自立支援法の廃止に向けて
「ペイ・アズ・ユー・ゴー」の原則
なんで厚生労働省の中で予算を完結させなければならないのか…
当時は「コンクリートから人へ」とか言っていたのに、公共事業や農業土木をバッサリ切ることができなかった。
7 両親のいない子どもや虐待された子どもへの手当の創設:児童養護施設の子どもの涙
良い説明。
9 生活福祉資金貸し付けの拡充:高校中退やむなしの生徒が無事、卒業
卒業クライシス
典型的な縦割り行政。ただ、担当する役所間の連携の問題もあるが、法律の趣旨として「生活福祉資金」となっているので、下手に流用を認めると際限が無くなる恐れもある。難しい問題。
第2章 厚い財源の壁と戦う
1 無保険の子どもの救済──貧困家庭の子どもたちに医療を
基本的には、社会保険料の徴収も国税庁に任せて強制徴収するべきだろう。
6 非正規雇用を減らし、正社員を増やしたい:求職者支援法の創設、労働者派遣法や労働契約法の改正
労働契約法の改正有期雇用五年で無期雇用へ。雇用を安定化
この本が書かれた2014年時点では結果が出ていなかったので仕方ないのだが、「5年派遣として雇ったら正社員にする」という制度で何が起こったかというと、当然4年11か月で派遣切りが起こるという事態だった。
折角スウェーデンに言ったのに、学んだのは高齢者介護だけで、スウェーデンの労働移動をやりやすくする政策は学ばなかったようだ。
8 財源確保の戦い:ムダや天下りのカット
天下り団体補助「一〇一三億円削減」、事業仕分けで「一一四一億円削減」
事業仕分けの結果についてはあまり議論されていないが、厚生労働省だけでこれだけ削減できたのは、素直に凄いと思う。ところが…
なるほど、素直でよろしい(笑)
おいおい、自民党さんよ…
9 史上最大、社会保障予算が16%増:公共事業費は32%カット「コンクリートへの投資から人への投資へ」
いや、単純に2008年のリーマンショックから経済が通常状態に戻ってた部分もあるやろ。
第3章 変えられなかったこと
2.消費税増税の決断:苦渋の決断。だが大きな代償
実現できなかった理由
問題の本質を理解していない。
民主党が最善を尽くして、それでも財源が足りないから消費税というなら、それを言った上で選挙をするべきだった。本人も言うように「恒常的」な財源が必要なのだから、やることやって、次の選挙までは国債発行で済ませばよかった。
国民への説明とか同意という観点が薄い。独善性が強い。それが嫌われた原因だと分かっていない。頭が悪いやつの独善性ほどタチが悪いものは無い。
結局、国民からは改革の成果は十分に見えず、リーマンショックと3.11に全て飲み込まれて、ねじれ国会で手詰まりになり、野田が政権を投げ出した。
あとがき
長いよ(笑)