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"農家さん"を一括りにしてしまうことの無意味さ

 以前noteで書いた、市場流通と産直流通どちらが良いのか!?青果流通の仕組み<概要編>において、"市場流通"と"産直流通"のどちらが良いのか?という問いに対して、"それぞれの生産者と消費者次第!"と述べました。

 この、"それぞれの生産者と消費者次第"という結論の"それぞれ"という部分が、青果流通、そして農業の分野を正確に理解する上で非常に重要だと思う一方で、実は世間一般の人たちにはあまり正しく理解されていないのではないかと思うことが最近多かったりします。

 そこで、今回のnoteでは、一般的に一括りにされやすい"生産者さん(一般的には農家さん)"という存在について、自分自身の足を使って得た経験(これまでにお会いした様々な営農スタイルの全国の生産者さんを数えると、おそらく300人以上にはなると思います)を元に流通との関係性と合わせて解説していければと思います。

 まずはこのnoteの結論からお伝えすると、

● 生産者さんは千差万別である

● 各生産者の営農スタイルに合った適切な流通はそれぞれ異なる

 一般的に一括りにされやすい生産者という存在ですが、営農場所・地域、栽培品目(品種)、圃場の面積、生産量、従業員数、栽培方法や栽培・営農ポリシー、使用する種、形態(個人、法人など)、新規参入者か、バックグラウンド(代々農業の家系かどうかなど)、年齢、営農歴、所得、経歴など、それぞれの生産者さんによって全く異なります。

 実際に青果の分野において様々な取り組みを行なってきた中で、それぞれの"生産者さん"を一括りにする無意味さを、業界内で活動する中で強く感じてきました。

 極端な例ですが、従業員やパートさんを数十名規模で抱え、北海道の大きな耕地でじゃがいもや人参などの定番野菜を慣行栽培で(農薬や化学肥料を使って)大量に生産する農業生産法人(農家さん)と、夫婦で埼玉の小規模な耕地で一般には出回らない珍しい種類の野菜を無農薬栽培でそれぞれ少量ずつ生産する個人の生産者さんを考えると、同じ"農家さん"として(最適な流通や販売方法を考える際に)両者を一括りにしてしまうことの誤りに気づいてもらえるかと思います。

 また、上記の生産者さんたちにおいて、両方に適している流通(農産物の販売方法)が同じではないことも理解してもらえるのではないかと思います。

 おそらく前者の生産者さんであれば、大きな数量を出荷(販売)できる市場や農協へ出荷しながら、量販店や飲食店チェーン、コンビニなどの食品ベンダーへ直接出荷をするといった大規模な流通が適しているはずです。

トラック&荷物

 後者の生産者さんであれば、個人店のような飲食店や個人の消費者へ宅配または宅急便を使って直接販売したり、マルシェなどに出店して作り手のこだわりや情報を発信しながら販売を行う比較的小回りのきく流通が適していることが多いように思います。

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 一方で、世間では生産者(農家)さん=畑で農産物をつくる人といった感じで一括りにされることが多く、そうした誤った前提のもとで最適な流通とは?みたいな議論をしがちなように思います。

 上記のように、一口に生産者さんといっても営農スタイルは大きく異なっており、それぞれのスタイルに合った流通が最適な流通であるというのが紛れもない事実です。

<売上の作り方の違い>
 当たり前ですが、ほとんどの生産者さんにとって農業とは仕事であり、生産活動によって生活をするための所得を得る必要があります。

 もちろん、生産者さんによっては、営農理念として所得の最大化が第一目的ではない方もいらっしゃいますが、全国の多くの生産者さんにおいては、営農における"所得の最大化"(継続的に営農を続けていく上でも)が重要であることは紛れもない事実だと思います。

 ここでは、それぞれの営農スタイルとそれにあった最適な流通の違いについて、所得を構成する重要な要素である売上という観点から考えてみたいと思います。

 売上の最大化において、下の図でいうと長方形の面積(=売上)をいかに大きくできるかなのですが、売上を構成する要素である単価と数量の両方を同時に大きくすることが実は営農において結構むずかしかったりします(これは農業に限らず、経済活動を行うどの分野でも同じですが)。

標準

 先にあげた生産者さんの例でいうと、北海道の生産者さんは下記のような横に長い長方形になります。

北海道

 埼玉の生産者さんは下記のように縦長の長方形になります。

埼玉

 農業生産において、当たり前ですが、マーケットでの付加価値が高い無農薬栽培をしようと思うと慣行栽培よりも手間がかかり、(慣行栽培と比較して)同じ労力でできる数量にはやはり差がでます。

 また、様々な種類の作物を栽培する場合と単一の作物を栽培する場合を比較すると、生産量という意味では後者の方がたくさんの量をつくりやすくなります。

 さらに、あまり一般には出回っていない希少な作物については単価は高くなりますが、需要自体がそれほど大きくないため、販売量という意味ではやはり小さくなってしまいます。

 したがって、付加価値の高い作物を作って販売しようとすると単価は高いものの数量が伸びず、たくさん作れてたくさん売れる作物を栽培、販売しようとすると数量は伸びますが単価が低くなります。

 一方で、以前のnoteでも説明した通り、流通については、市場流通と産直流通でざっくりと下記のようなメリット・デメリットが存在します。

市場流通は"数量"に強いが"単価"には弱い(相場が高騰する場合は短期的に産直流通よりも単価が高くなることももちろんありますが、相対的に価格は産直流通よりも低くなることが多いです)

産直流通は"単価"に強いが"数量"には弱い(売り先によってさばけるキャパは様々ですが、全量引き取りが原則の市場流通に比べると、販売数量のロットは市場流通よりも小さくなることが多いです)

 「そんなの当たり前でしょ」と思われたかもしれないですが、農業や青果分野に興味を持っているという人でも、この大前提を理解していない方がとても多かったりします。 

 生産者さんの営農スタイルが様々であることを理解することなしに、最適な農産物の流通方法がなんなのかという議論することの無意味さが少しは分かって頂けたかと思います。

 弊社も流通及び小売事業を手がける上で、ありがたいことに全国のたくさんの生産者さんから販売に関するお問い合わせを頂くのですが、まずは、その生産者さんの営農スタイルやつくっている農産物などをしっかりと理解した上で、適切な流通や取引、売り方や事業をご提案できるように心がけています。

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