Travelogue Song ~旅の記憶から歌をつくる

先日、自分の母校であるICU高校に久しぶりに行ってきました。マルチイベントという、外部から色々講師を呼んで、普段は学べない分野のことについて専門家から講義を受けたり体験学習をするというもので、僕は「Travelogue Song ~旅の記憶から歌をつくる」と銘打って自己紹介的な演奏と曲作りワークショップをしました。ワークショップとか普段全然やってないから正直ひやひやものでしたが、蓋を開けてみると参加してくれた生徒さんみんなとっても熱心で、別に自分が何かしなくとも自然とやりたいことをやる姿勢で非常に助かりました。

内容としては、みんなそれぞれの「旅の記憶」、どこか普段と違う場所へ行ったとき感じたこと、景色、食べたもの、出会った人などなど、何でもいいので書き出してもらって、それを素材として歌に仕上げていきました。人数が結構多かったので、今回はどうせ初めてだし実験として歌を作るときの永遠の課題である歌詞先行なのかメロディ先行なのかで2つのグループに分けました。歌詞先行はさっき書いてもらった文章をまず一行にそれぞれまとめてもらって、それを並べたところから何となくの構成を整えて、それからメロディをつけていくという作業。メロディ先行は、まずみんなの文章を読んでもらって、その印象からメロディのアイディアをもらって構成を決め、そこに歌詞を当てはめていく作業。人数と時間とかなり制限のある状況だったので、普段は自分自身こんな作り方はしないけど、要素はギュッと絞り込んだ形になりました。ちなみに僕はメロディ先行です。


歌詞先行チーム(アイディアをまとめる途中のメモ)



最初はメロディを作ってみようと言っても、え…となっちゃうかなと思っていたのだけど、「作ったことないけど作ってみたいです」と言ってくれる子や「もうスマホでコード考えたんで、どうっすか?」みたいないかにも現代っ子、「アイディアあるんでギター借りてもいいですか?」と何回も来る子がいたりと、積極的な子たちを中心に思ったよりもスムーズに進みました。歌詞の方は、さすが高校生ともなるとそれっぽい言葉がたくさん出てきて、何も言わなくても語幹を合わせたり韻を踏んだり。結果としては、どちらのチームも内容の濃い、味わい深い歌が出来上がってきました。(メロディ先行の方を最初心配しすぎて、歌詞先行のメロディ作りにあまり参加できなかったのが反省点ですが…)

メロディ先行チーム

このワークショップを通して、少しでも音楽を作ることへの興味や楽しさを見いだせてもらえたらなと偉そうに思っていましたが、自分自身でも久しぶりに誰かと協力して何かを作り上げる楽しさや、アイディアを自分の中だけで育てるのではなくて、他の人の目に触れさせることで客観的な評価をしながらどんどん作っていくグループワークの相乗効果を目の当たりにして、逆に教えてもらったような気持ちです。
出来上がった歌詞と、自分で録り直した音源を出しておきます。
またいつか一緒に曲作りたいな。

①歌詞先行チーム
懐かしい軽トラック
淡い光に包まれて 挟まってく視界が
瞳に映る川の流れ

空が止まって 街が止まって
君と僕だけが動く夜
止まった時計の針
いつでもそこにいて 僕らだけのページをめくる

②メロディ先行チーム
春霞 聞こえる声 思い出が僕を呼んだ
もう来ない あの日のかけら もういらないと思ってたのに

見知らぬ街並み 見慣れた笑顔
日が沈むまで あの日の思い出を

夕日まじりの 浮かぶピアス
ベンチの前で まわるドーナツ




終わった後、同じく別のクラスでワークショップの講師をしていた俳優の柳浩太郎くんとも会えました!
以前彼のメッセージ動画に自分の曲を提供したご縁です。高次脳機能障害を抱える彼ならではの、目に見えない障害を持つ人にとって日常生活はどういう困難があるのかなど体感してもらうワークショップを行ったようでとても興味深い。こちらもまた何かやろうね!とご飯を食べながら話しました。


久しぶりの母校でしたが、建物はそこまで変わっていないし、まだ現役の先生たちもいらっしゃるし、制服も一緒だし、生徒さんたちの雰囲気も記憶の中にある友人たちにどこか似ていて、自分だけが大人になって帰ってきてしまったような、ちょっと不思議な気持ちになりました。この体験を元に、また新しい曲もできるかも…とても良い刺激を受けた日となりました。

追記 2022.6.28

その後、ワークショップに参加してくれた生徒さんたちの感想が届きました。みんな思った以上にそれぞれの言葉で内容を汲み取ってくれていてとても嬉しかったので一部だけ紹介させてもらいます。改めてどうもありがとう!

自分で作曲して弾き語りをする人はすごく大きなテーマや珍しいことなどをテーマにしていると思っていたけど、何気ないことや頭の片隅に残っている記憶をテーマに書いた曲もとても良いなと思いました。特に披露してくださった曲で、オーストラリアのおばあちゃんのみんなを呼ぶ号令をテーマにした曲はとても可愛らしくて、色んな感情が見えて好きな曲でした。ワークショップでは、今までしたことがなかった曲作りに挑戦しました。
私はメロディーから歌詞を当てはめていくグループで歌を作りましたがらとても難しかったです。コードを決めて、その雰囲気を汲み取りながらメッセージ性のある歌詞を当てはめていくという作業がこんなに難しいのか!
と驚きました。いつか自分で曲をつくってみたいと思いました!

今まで、音楽を作るということに興味はあったが、どこかハードルが高く感じられ自分にはできない事だと思っていました。今日のマルチイベントに参加して、生まれて初めてメロディを作るということをしたのですが、自分の中にあるメロディをなんとか外に出す、という作業がとても面白く、また、自分の中にある思い出がより色鮮やかになる感覚に感動しました。先生が仰っていた通り、自分の納得するような音楽が作れるようになるのは難しいことだと思いますが、これからも楽しみながら曲を作るということをしていきたいと思います。自己表現というものに初めて触れられた気がしました。

音楽の奥深さを知れるいい機会でした。音楽を作ることに関しては初心者でチーム内でもなんも手伝えませんでしたがこの機会に音楽を作ってみようかなぁ、という興味心が湧きました。構成とか歌詞とかすごく難しいと思いますが、多分作る歌には一つ一つのこだわりや思い出など沢山の想いがつまっていると思うので宝物になるんだなぁと感じました。

音楽がないと生きていけないような人間である自分にとって、すごく興味深く、楽しいワークショップでした。音楽を通じて何かを伝えたいと強く思うことがあるものの、なかなか自分の実力だと満足のいくものができず、自分では満足していても伝わらないことが大きな悩みの一つです。このワークショップを機会に自分と自分の音楽と向き合って、伝えられるようになりたいと思いました。


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