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オッサン緊急入院の巻

夕方、パートナーのオッサンから電話の着信があった。メールも入っていた。なんだろうと思ってメールを開いたら、入院したという。腹が痛くて救急車を呼んだらしい。

夜、仕事を早めに切り上げて帰宅して、ワンコを散歩に連れていき食事を与えてから、仕事着のまま病院へ入院手続きに行った。

病院はコロナのせいで面会禁止。なんと…コロナの影響をあまり気にせずに生活していたのに、突然コロナ禍に突入してしまった。

受付でオッサンとの関係を聞かれた。

「家族の方ですか?同居の方…ですか?」
『同性パートナーです』

病状を聞いた看護師からも

「ご家族ですか?同居人の方…?」
『同性パートナーです』

みんな一瞬固まるのだ。医療に携わる人間が同性愛ごときで固まるなと言いたい。

入院契約書の保証人が僕では足りないらしく、連帯保証人を立てて印鑑を貰うよう求めてきた。

事実婚の異性カップルにも同じように求めるんですか?そう問いかけながら胃がキリキリしはじめた。

僕のカバンの中には、公証役場で作ったパートナーシップ契約書(公正証書)と行政書士に作ってもらった医療に関する意思表示書が入っていた。噛みつこうと思えばいつでも噛みつける。

僕はまだ彼の親に会ったことがないので印鑑をもらうのは無理です。そう言ったら、じゃあ保証人だけでいいですと言われた。

なんだ形だけかよ!口にはしなかったけど、病院は嫌いだ。命を目の前にして、社会制度の不備に個人で向き合わなければならなくなる。

とりあえず今夜やることはやった。公正証書を交わしておいたおかげで、看護師から病状の説明も家族として受けることができた。オッサンはメールするのも辛いぐらい腹が痛いままらしい。点滴だけして消化管を空にするそうだ。

週が開けたら役場に手続きに行って限度額申請的なことをして、また病院に書類を提出しなくてはならない。保証金も預けなくてはならない。

それはそうと、入院契約書の保証人の続柄の欄には、なんと書けば良いのだろう。

パートナー?夫?

僕が住んでる自治体には、まだ同性パートナーシップに関する制度がない。制度ができれば、こんなつまらない疑問や緊張感、攻撃性を感じなくてよくなるのだろうか。

今夜のことは大したことじゃないと思おうとしたけど無理はしないでおこう。神経が高ぶるのは自然な反応だ。僕達は、僕達がカップルであることをいつも証明しなければならない。それが苦痛だとわかる人は少ない。

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