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ショートショートギャグ「メイドの努め」

メイドたるものご主人様のご要望には全て応えることは当然。
そう教えられてきた。
この村の領主様のメイドになって数ヶ月
ついにこの日がやってきた。
「今晩、私の部屋に来なさい」
こんな日は来ないでくれと願っていた。
私は恋も知らない”うら若き乙女”
そんな私の蕾がこんな形で散るなんて…

夜を迎え、領主様の部屋へ向かう
扉を開けると領主は少し興奮した様子で待っていた。
「よく来てくれた。では早速見せてくれ」
まだ誰も触れたことのない私の秘められた姿をそんなにみたいのか
領主は私を急かす
私は恥じらいながらメイド服のボタンを一つ二つと外していく
「何をやっているんだお前は」
「私の…その…裸が見たいんですよね」
「何を言っておる馬鹿者!わしが見たいのはギャリック砲じゃ!」
「ギャリック砲?ベジータのですか?」
「そうじゃ!ささ、早くギャリック砲を見せてくれ!」
ギャリック砲が見たい?
ビックバンアタックじゃなくて!?
だって、ギャリック砲は一度しか使わなかったじゃない!
なぜ、ギャリック砲なの?
悟空とフュージョンした時も
技名はビックバンアタックから取られているはず
まぁビックバンアタックよりギャリック砲のほうがカッコいい名前だけど
ビックバンって!
ビックバンはないわ
宇宙に関する用語の中で一番ダサいもん
ていうか色々名前つけてるけど全部ただの気功波なんでしょ?
じゃぁなんでもいいじゃない
なんでギャリック砲なのよ!

そんなことを考えていると領主は少しイライラしながら私に迫る
「何をうだうだやっておる!早く打たんか!馬鹿者!」
「はぁ」
私は気を集中させ、ギャリック砲を放つ。
「素晴らしい!これじゃこれ!これが見たかったんよ」
領主は近頃の一番ムカつく語尾で私のギャリック砲を褒める
家はぐちゃぐちゃになったがこれでいいのだろうか
あの時から50年この家に仕えたが
いまだに家を治す気はないし
ドラゴンボールの話を出しても
「うん?ああ、ドラゴンボールね。うん、いい漫画なんじゃない?」
と、
「まるでお昼ご飯何にする?」と聞かれ、
「なんでもいい」と答える思春期の息子のような返答だ
きっと彼はもうドラゴンボールに飽きたのだろう。

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