苗字について③(子供の苗字の変更)

こんにちは。

ベーグル法律事務所の弁護士の林正和です。

ここまで、第1回(苗字が変わるとき)第2回(苗字の変更)と2回続けて苗字についてお話してきました。今回は、離婚したときに子供と旧姓に戻る方法について、お話します。

まず最初に、親が離婚したとしても子供の苗字は変わりません。

分かりやすくするため、ここでも私(「林」です)が「佐藤」花子さんと結婚して「佐藤」を名乗り、可愛い子供(Aと言います)が生まれた場合を考えてみましょう。

またしても私は離婚することになり、Aの親権は、私が持ち、私がAを育てることになりました。前回までの話でいえば、私がAと同じ苗字を名乗るためには、役所で「佐藤」を使えるように手続きをすれば良いはずです。

しかし、今回は、「林」に戻ることを決め、Aにも「林」と名乗って欲しいと考えました。はたして、Aの苗字を「林」に変更することは出来るのでしょうか?

答えは、前回と同じく≪家庭裁判所の許可≫を貰えば変更できます。法律では、子供と親の苗字が違うとき、親の苗字に合わせられるように制度を作っており、これを『子の氏の変更』と言います。前回お話した苗字を変える方法より、ハードルは低いです。

なので、子供の苗字を「佐藤」から「林」に変更してくれと裁判所で手続きを取れば、私とAは同じ「林」を名乗れることになります。

さて、『子の氏の変更』は、旧姓に合わせるときに使うこともありますが、実感としては、同じ戸籍に入るために使う方が多いかなと思います。

どういう事かというと、前提として、子供は親権者と同じ戸籍に入る訳ではないのです。                                今回でいえば、私は結婚するとき「佐藤」を選んだので、花子さんを代表とした戸籍に私が入り、そこにAも入ることになります。そして、離婚すると、私だけが花子さんを代表とする戸籍から抜けることになり、Aはそのまま花子さんの戸籍に残ります。親権者がどちらかは、戸籍と関係ないのです。

離婚してもAは「佐藤」花子さんの戸籍にいるので、私とAとが同じ戸籍にいるためには、例え私が「佐藤」と名乗る手続きを役所でするだけではダメなのです。ここが非常に分かりにくいと思うのですが、私が名乗る「佐藤」と、Aが名乗っている「佐藤」とは、法律的に別の「佐藤」なのです。(詳しくは、次回解説いたします。)

そのため、私は、Aを自分の戸籍に入るために、Aの苗字を「佐藤」から「佐藤」への変更を求める手続きをしなければなりません。日本語として正しいのか自分でも不安になるくらい意味不明なのですが、「佐藤」から「佐藤」への変更を経て、ようやく私の戸籍にAを入れることが出来るようになります。

まぁ、戸籍が同じでも違っても何にも変わりませんが、心情として同じ戸籍にいて欲しいと思うのも良く分かります。

『子の氏の変更』はそこまで難しい手続きではないので、裁判所の案内やHPを見れば、弁護士に依頼しなくてもできると思います。

さて、次回は、苗字についての最終回です。今回出てきた「佐藤」から「佐藤」への変更が必要な理由など、普段、絶対に役に立たない苗字の豆知識をお話したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?