【実話】クソバカの野犬2匹を俺は許さない
俺だ。犬馬之年越だ。
髪の毛と金が無いのが取り柄の俺は、今日も小銭で買った発泡酒と煙草を吹かしながらこの記事を書いている。
先に説明しておくが、俺には絶対に地獄に叩き落としてやると決めたクソ犬が4匹いる。
その内の2匹の話を、この発泡酒を飲み終わらす前に書いていく。
これは去年の夏。
俺がまだ現役で探偵という職業をしていた頃。
某県の、電車が1時間に1本しか走っていないようなトビッキリの田舎にて調査をしていた。
調査の詳細はあまり言えないが、簡単に言うと不審者の捜索である。
調査の進め方なのだが、依頼者の家の近くを通る人物や車両を片っ端から撮影して、そこから不審者を割り出すという物であった。
他者から見たら不審者は確実に自分なのだが、もう慣れっこである。
だがここはトビッキリの田舎。
そもそも近くを通る者など誰1人としていないのだ。
写真の枚数が少ないと上司に思いっきりケツを蹴られっちまう。
ほのぼのとした田舎の雰囲気とは裏腹に、俺はかなり焦っていた。
美しく舞う蝶々や、珍しい小鳥を撮影して茶を濁すのも潮時だと思ってい時、俺はふと山道へ登るための階段が目に入った。
この階段を登って上から辺りを見渡せば通行人を見つける事ができるんじゃないか?
そう思った俺はさっそく階段を登り始じめた。
崖のような階段であったが、登りきったそこには狭い空間に地面が見えないほどの落ち葉とお墓がポツンと1つだけあった。
立派なお墓ではあったが、酷く寂れていて管理はされていない様に見えた。
少しの好奇心でお墓に近づこうとした時、奥の方に犬が2匹いるのが見えた。
不気味な雰囲気も相俟って、2匹が狛犬の様にも見えて神々しくすら感じていた。
だがそんな優しい時間は一瞬にして消し飛んだのだ。
「ウ〜グルルル.....」と唸り声を上げながら歯を剥き出している。
天才探偵である俺は直感した。
この犬供は野良犬なんて生優しいもんじゃねえ。
野犬だ。しかも山の野犬だ。
山で野犬かましてる犬なんてほぼ狼である。
よく見たら図体はデカイし汚い。
こんなほぼ狼の2匹にかかれば俺なんてワンパンである。
こんなアホ丸出しの犬に構っていたら危ない。
意を決して俺は逃げた。
「チャーーーーーーー!!!」
犬とは思えない鳴き声で追いかけて来ている。
階段を転がり落ちながらでも分かった。
転がり落ち、ものの数秒でボロボロになった俺は急いでまた走り始め様とした時
目の前には眼鏡をかけた優しそうな青年がいた。
俺が階段から転がり落ちてた来た事により心配している事が表情で分かった。
だが、「チャー!」の声と共に追ってくる野犬を目にした青年は「うわあああああ!!」と叫びながら逃げていった。
俺を置いて行きやがったな雑魚が。
絶対にこの雑魚青年を生贄にして何とか逃げ切る決意した俺はとにかく走った。
だがこの雑魚青年、まあ足が速い。
学生時代、逃げ足だけは速いよね!と女子達に褒められた事がある俺についてこれる雑魚青年。
崖の様な階段を登ってまで見つけたかった第一村人であるこの雑魚青年と、今はクソバカの野犬に仲良く追われている。
並行して走る俺達は、前方に分かれ道があるのが見えた。
二手に別れる事を察した俺達。
どちらかが囮になり、どちらかが助かる。
もちろん助かるのは俺だという自信に満ち溢れていた。
二手に別れ、道を疾走する。
しばらく走り、後ろを確認した。
俺は驚愕した。
野犬なんてやってるクソバカの犬のクセに、野犬も二手に別れやがった。
「くッッ....!」
俺は唇を噛んだ。
この際、雑魚青年だけは野犬に捕まっている事を願いつつ、俺はもう逃げれれば何でもよくなっていた。
プライドと肉体を切り離し、俺は目の前に広がる水の張った田んぼを横断した。
プライドをクソバカの野犬に喰わせてる間に俺は逃げ切る事にしたのだ。
横断の最中、後ろを振り返るとクソバカの野犬は田んぼには入らずに、追ってはこなかった。
「えぇ....」とした表情をクソバカの野犬はしていた。いや、もはや言っていた。
野犬サイドもまさか人間が田んぼに突っ込んでまで逃げるとは思ってなかったのであろう。
めちゃくちゃドン引きしてる野犬はもう遠くに見える。
俺はクソバカの野犬から逃げ切り、勝利したのだ。
追う側は捕まえなければ勝利ではない。
逃げる側は逃げ切れば勝利なのである。
みんなにも、あの吠え面かきやがったクソバカの野犬の顔を見せたかったものである。
ちなみに俺、犬馬之年越はこんなに犬をディスっているが無類の犬好きである。
道行く散歩中の犬には必ず微笑するし、ばあちゃんの家の犬には必ず10回はキスをする。
実家にいた犬のケツの穴に指を入れた事だってある。
このように犬好きであってもあのクソバカの野犬には文章だけでは伝わらない恨みがお分かり頂けたであろうか?
あの雑魚青年もまだ犬と追いかけっこしてる事であろう。
プライドを捨て、田んぼに伸びる一本の蜘蛛の糸を引き当て、掴み逃げ切らない限りはまだ彼は雑魚のままなのである。
これは俺が地獄に叩き落としたい犬2匹の実話である。
そろそろ発泡酒が飲み終わるので、この話はお終いである。
また発泡酒を買った時に会おう!さらば!
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