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書評 兵士に聞け 防衛問題はヒトゴトか?

五十路のおじさん、ばっどです。

兵士に聞け
杉山隆男

ノンフィクション作家である著者のライフワークともいえるシリーズの初刊。超あっさり言ってしまえば自衛隊の密着取材記。

刊行時期の地政学的な安全保障上の問題と自衛隊とのかかわりや、隊が内包する問題を大きなテーマとしながら、紙幅の多くが取材対象者である隊員のパーソナリティや来歴、彼らの身の回りで起こる出来事に割かれているのがポイントです。
キャラクターがわかる個人が、こういう形で防衛問題にかかわっているとことが示されることで、防衛問題を自分事として考える端緒になる作品じゃなかろうかと思います。

取材対象として紹介される隊員のうち個人が特定できる方は、それなりに選ばれた人達だということ、作家の筆にかかった表現を通していることを差し引いても、いい意味で人間臭い=こんな人いるよね、っぽい印象。
もちろん、物凄く努力しないと獲得できないスキルを持っていたりと、常人離れした人が多いですが、決して天才ではなく、我々と地続きな感じはあります。

自らそういう仕事を選んだとはいえ、そういう場で判断できるの?という事も起きます。
ここで感じざるを得ないのが、「政治の現場丸投げ」。
時の首相、小泉純一郎はPKO派遣時「自衛隊の域ところが非戦闘地域」とヌかしました。
この発言には腸が煮えくり返る思いがしたものです。

1995年にシリーズ1作目が発表され、2017年に最終7作目で著者の自衛隊巡りは幕を閉じています。

日本の隣国3か国はヤバい国ばかり。
他所の国を攻める国、隣国(地域?)の武力による併呑を言葉にして憚らない国、ミサイル発射実験を平気で繰り返す国。
自国の組織としてイザのとき頼れるのは自衛隊だけなのですが、頼んない国の政治は無策で、個人の頑張りに頼る=現場丸投げは昔と変わらない。
日本人はものすご~く危ういところで生きている、ということは意識しておきたいものです。

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