星
まるで遠くの星が人を照らすまで気が遠くなるほど時間がかかるみたいに、あなたの光に気付いた時もう全てが手遅れだった。
冷たくなったあなたに触れたら今までのあなたがどれだけ温かかったのかを思い知らされた。
遠い惑星のような存在だと思い込んでいた。ずっと前から。
一番近くにいるのにいつも遠いと思い込んでいた。
部屋に帰ったらあなたがくれたキーホルダーが目に入った。
見たこともないへんてこなキャラクターのそれを嬉しそうに差し出すあなたの顔が過って、ようやく涙が出た。
見渡せばガラクタに見えるような色々な思い出があった。ひとつひとつが些細で、それでも嬉しかった。
いつから我儘になっていたんだろう。
空けて欲しいと言った日はどうかなあと言いながら必ず会ってくれた。
決して普段は誘わないくせに私の誕生日だけは毎年誘ってくれた。
それでも寂しかったのは、いつだって必死に手を伸ばして先を歩くあなたの服の裾をやっと掴んでいるような気持ちだったから。
思い返せば何度だって振り返って歩幅を合わせてくれる人だったのに。
写真の1枚も撮らせてくれなかったあなたの顔が脳裏に浮かぶ。
あなたの好きだった星座が毎年現れる度に私はあなたの顔を思い出せるかな。
こんな事なら、こんな事になるなら無理にでも撮ればよかった。
もうあなたが振り回してくれない日常の片隅で私はいつまでもあなたに恋をし続けたい。だから夢で会いに来てよ、へんてこな手土産を持って。
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