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「一流の事業計画・予算策定とは?@ICC Kyoto」のアーカイブ記事を読んでみた


ICC KYOTO 2023のセッション「現場が奮い立つ、一流の事業計画(予算策定)とは?」という公演が全5つの記事にまとまっていたので、今後の事業計画策定業務に活かすための勉強として読みつつ、学びがあった部分を備忘としてまとめました。

ところどころ専門用語があったのでなるべく日本語訳しつつ、たまに用語集を挟んでます。

【スピーカー】
倉橋 隆文 さん
SmartHR
取締役COO

永見 世央 さん
ラクスル
代表取締役社長 CEO

平尾 丈 さん
じげん
代表取締役社長執行役員CEO

【モデレーター】
布川 友也 さん
ログラス
代表取締役CEO

事業計画の作り方(トップダウンモデル・ボトムアップモデルの2種)

記事の内容含め、ざっくりと各社の事業計画の作り方をサマりました。

用語集
トップダウン:経営者やCOOなど、権限を持った人から営業組織へ落とし込むモデル
ボトムアップ:営業組織が個別に作ったものを全社として統合するモデル

SmartHRトップダウン

現場から上がってくる情報を読んで解像度を上げたうえで、水準としておおよそこのくらいの数字を達成してほしいというラインをおおよそ作ったうえで、細かいKPIの作成は事業部に任せている。SmartHRは1つの製品が売上に占める割合が99%。また、成長速度が高いので、計画の設定が難しい。そのため、中長期でありたい姿を事業部と共有し、その途中経過としてこのくらいの数字は達成しないとまずいというラインを設定し、計画としている
ワンプロダクトなので、計画は企業規模(大規模・中小規模)で分けられており、それぞれの領域の売上成長率によって難易度調整をしている

じげんはボトムアップ

たくさんの事業を持つじげんはそれぞれの事業部から吸い上げた事業計画を統合して全社事業計画を作っている。(ボトムアップといえど、期待感としてこのくらいの水準で~というコミュニケーションは取っていそう)。吸い上げた計画に対し、責任者と複数回の壁打ちを行い、3か月程度で計画として仕上げる。
また、それぞれの計画に対し、振り返りの実施と、施策軍に対する投下投資費用の実施を行い、投下配分を意思決定

ラクスルはトップダウン

細かい数字までを含め、すべ指示をしているらしい。期ごとにテーマを設定し、この指標はこのくらいまで達成しようというような指標を設定している。
単にこの数字を達成するのではなく、この数字を、この戦略をもって達成する」という計画を作っている。

Appendix:上記を踏まえ、記事の中で興味深かったものをピックアップ

【細かい数字設定含め、作成した計画をいかにして現場が達成できるようにするか?は共通課題】

どちらの方法にせよ、基本的にはある程度の設定された数字を全社で達成させるために頑張ってもらうという構成になっている。その中で、設定した数字をいかにして達成に持っていくのか?モチベーションを維持するのか?というのは全員の共通の課題意識になっていそうでした。

【SmartHR:1事業しかもっていない企業は、Tierなどのセグメントによる比較を行って疑似的プレッシャーをかけている】

プレッシャーをかけるという言い方はあまり好きじゃないですが、1事業で大規模な売上を上げているビジネスにおいては非常に合理的な考え方だと思いました。
ある組織が掲げた目標に対し、XX部は40%成長に対し、YY部は20%の成長を見込んでいるのはなぜか?という視点で見ることができ、領域間で切磋琢磨する雰囲気をつくることができますね。

予算を持っている人の目線を上げる評価制度・モニタリング設計

ラクスルは目標金額は必達

現場から反対があった場合どうしている?という質問に対し、永見さんは「必達なので、そんな声が上がらない」と答えていますw
ラクスルの企業文化として、与えられた目標に対しての達成意識を強く持つということが起因していそうですが、それ以外にも、「そもそも月間・年間の推移を細かく見て、無理難題にならない水準でおおよその数字を決めている」といいます。ここは結構ビジネスセンスが問われるやり方な気がしますが、仮にその調整をうまくやれるのであれば、ある種完璧な事業計画ともいえそうです。

じげんは評価制度を完全に仕組化

ボトムアップで作成しているじげんですが、さすがに18の事業の状況を細かくかつ完璧に把握することは困難ということで、完全に評価制度を仕組化していました。
よくある40%ルール的な思想で、成長率と利益率の数値によって評価を決める制度みたいです。
成長が高止まりしているのであれば利益最大化だし、伸びしろがあるなら赤字を出してもいいからとにかく事業拡大!という考え方に近しいものと解釈しているのですが、この利益最大化と成長率最大化のどちらも良しとする制度は目からうろこでした。

用語集(ちょっとややこしいよ!)
40%ルール:米国のベンチャーキャピタリストなどでよく言われているSaaS企業の評価手法の一つ。成長率と利益率を足した数字が40%以上だったら良い敵な考え方。例えば、成長率が50%なら利益率は-10%でもいいし、逆に成長率が20%だったら、利益率が20%ないとだめだよね~みたいな感じ。

一般的には年間売上が100万ドルを超えた企業に適用されるといわれていますけど、これはあくまで米国の無数のベンチャー企業をマクロ分析して出した結論なので、どこまで日本企業に適用できるか?の有意性は怪しいと、個人的にはおもっちょります。

でも、企業の財務的安全性と将来の成長性を見る上での一つのベンチマークとしてはありですね
SaaS:SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアをサービスとして提供するビジネスモデルや配信方法を指します。SmartHRとかSalesforceとか、ソフトウェア丸ごとを製品として提供しているものを指します。

https://feld.com/archives/2015/02/rule-40-healthy-saas-company/

投下コストと事業成長率は比例させるSmartHR

SmartHRは、チームごとに設定された計画の伸び率に応じて、オーバーヘッドコストを除いた投資可能額の予算を設定しているみたいです。ここも前の考え方と共通しているもので、伸びるならお金出すよという大胆な割り切りをしていて、勉強になります。

用語集
オーバーヘッドコスト:いわゆる間接費用的なもので、特定の部のみが負担するのではなく、全社として利用している費用のこと(例:オフィスの賃料・管理業務の人件費・CMの広告費用)

事業計画と、PL・BSのかじ取り

用語集
PL(Profit & Loss):損益計算書のことっす。売上と費用と差し引きの利益を1つにまとめた財務諸表
BS(Balance Sheet):貸借対照表のことっす。資産と負債と差し引きの純資産を1つにまとめた財務諸表

ラクスルのQuality Growthという考え方- PL

ラクスルでは、前者としておおよそ20,30%の成長を維持(それ以上は基本は期待しない)しつつ、利益率を最大化することを掲げているみたいです。さっきの40%ルールみたいな感じで、成長率と利益率の合計が40%になることを目指しつつ、さすがに成長率0%は事業が死んでしまうので、最低ラインを死守しつつ利益最大化を目指すという考え方ですね。ある程度成長しきったフェーズの企業ではこのような考え方が基準になっていそう。

じげんのProfitabilityという考え方- PL

逆にじげんはProfitabilityというラクスルの逆の考え方をしています。ビジネスがフロー型なので、ラクスルの「グロースの中の利益」に対し、「利益の中のグロース」を重視して、成長するなら利益起点のユニットエコノミクスを担保したうえで、成長率を追及するという考え方ですね。

用語集
ユニットエコノミクス:1顧客当たりの採算性を示した指標。企業やサービスによってその指標は若干異なるのですが、例えば1顧客が生涯生み出す利益の合計と1顧客を獲得するのに要するコストの割り算。

例えば、NHKの集金によって、1.5万×40年=60万円の利益が得られると考えたときに、1名の契約をとるために、時給2500円の派遣社員の6時間の稼働を要するなら、獲得コストは15,000円で、ユニットエコノミクスは60万/1.5万でなんと40万。(基本はSaaSに適用される指標ですが、3を上回れば割と優秀といわれているので、NHKの集金ビジネスはめちゃくちゃ採算性が高いかも?SaaSじゃないけどね)

スタートアップは1人当たり生産性に要注意 BS

これも目からうろこでした。要は、「一人当たり生産性が改善しないのに成長のために人を増やし続けるのは悪手」ということで、売上が上がっているのであれば本来は固定費比率が落ちるべきだが、そうなっていない場合は注意が必要ということですね。
固定費が上がってしまうと損益分岐点が上がってきてしまうので、いつまでたっても利益が上がらず、どんどん企業運営が厳しくなるということですね。特に従業員はアメリカ企業見たくいきなり解雇なんてできないので、生産性が悪化しながら人を増やしてしまうと、どんどん企業運営をするためにかかる費用の比率が拡大し、資金難に陥ってしまうということでしょう

事業計画とはいったい何のためにあるのか?-信頼と達成意欲を醸成するツール

5章のタイトルにあるように、総論すると、どの企業においても事業計画とは、社内外における信頼と達成意欲を醸成するツールということでした。
予算=戦略や思考を整理し、具体化させたもの
予算= みんなで合意した約束ごと
予算= 結果を振り返るためのフィードバックツール 
であり、作る過程において「どのようにしてこの数字を達成するか?」を考えることで事業戦略がどんどん磨きこまれて成長し、追っているときは約束した数字に到達しているのか?を観察するための、ある種の健康診断的な役割を果たし追い終わったときにはどこがヨミとはずれていたのか?どこに改善点があったのか?を振り返り、ビジネスセンスを磨くためのツールとして機能するということですね。

社外の同じような領域でどのような取り組みがされているのか?を知ることで、より視野が広がった感じがしました。

ちなみにICCサミット2023の公演ごと評価を見てみたら、94中57位という何とも微妙な順位でした。管理会計という割とというかかなりマニアックな分野の議論だし、記事を見る限り専門用語が多かったので正直納得の評価です。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1Zrkam0ZI3c13LwGd1AtpIro7-6ipg7zwrMAEs7ju3zs/edit#gid=0
https://industry-co-creation.com/events/icc-fukuoka-2024

無料セミナーは軒並み胡散臭いので、今度有料セミナーとかいってみようかな。

有益な情報ある方は是非教えてください

この記事について


タイミーで事業管理をしている福島が日々感じたことから思考を巡らせ、に備忘していき、学びを積み上げていきます。あんまり業務に関係ないこともつぶやきます。


「オードリーのオールナイトニッポン 📻 で毎週フリートークしているのをリスペクトしていて週次でnote更新をしているSho1さん」をリスペクトしているので、僕も見習って週次くらいで更新し続けたいなと思っています。


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