Health 2.0 AsiaのPitchで意識した3つのこと
今週、渋谷ヒカリエにて開催されたヘルステックのグローバルカンファレンスであるHealth 2.0 Asiaで最優秀賞を受賞できたので、せっかくの機会なので、今回のPitchの準備や当日に意識した3つのことについて書いていきます!
<本日のnoteの内容>
①資料を作り始めない。まずは徹底的なリサーチから。
②『想いのあるStory』と『Fact data』のバランス
③相手のコメントに価値があるものだと受容する姿勢
①資料を作り始めない。まずは徹底的なリサーチから。
かなり個人的な感覚に依存するかもしれませんが、Pitchの成果は、この事前リサーチの質によると思っていて、私の場合は、時間配分でいうと、リサーチに8割、資料作りに1.5割、プレゼン練習に0.5割くらいの時間配分。切れない斧を使って、時間をかけて木を切るより、まずは斧を十分に砥いでから木を切り始めるという感じです。
具体的に、リサーチとして、どのようなことをリサーチしているかといいうと大きくこの3つ。
・スタートアップ界隈の有名なイベントの優勝者のPitchの分析
・当該イベントの優勝者のPitchや事業の分析
・審査員や審査基準の分析
【スタートアップ界隈の有名なイベントでの優勝者のPitchの分析】
学業での勉強でも一緒だと思いますが、まずは『正解』とされる答えを先に見て、ゴールのイメージをつけた方が早い。かつ、Pitchで優勝するところにはそれなりの理由が必ずある。だから、その分析から始める。そこから必要なピースを逆算すればいい。という非常にシンプルな考えです。
今回、IVS Launch Pad、ICCスタートアップ・カタパルト、B Dash Camp Pitch ARENAといったイベントでのPitchで優勝したスタートアップのプレゼン動画をひたすら、半日くらいかけて見まくりました。そして、プレゼンの流れや構造を分析し、評価されるPitchに共通する点を洗い出すことをしました。
【当該イベントの優勝者のPitchや事業の分析】
次にHealth 2.0 Asiaでこれまでどんなスタートアップが評価されてきたのかを調査して、その特徴を同様に抽出しました。特にそのときの審査員が誰で、どんなプレゼンをしたのかなどをリサーチして、この場で評価されるために必要なことを分析しまくった感じです。
【審査員や審査基準の分析】←最重要!
正直ここが最重要だと個人的には思います。こいつ『ずるい!』と思うかもしれないけど、勝つためにできることは全部するのが起業家であり、経営者であると思うので、赤裸々に書きます(笑)
まず、このような場では、プレゼンで何を自分が伝えたいかも大切だけど、その前に、この会場に集まる人、特に審査員は、普段どんな仕事をしていて、どんな人と付き合っていて、最近どんなことに興味があるのかというようなことを徹底的に調べ上げた方が良い。
その人のことを好きになるくらいまでやり抜いた方が良いと思う。
例えば今回のHealth 2.0 Asiaの審査員は下記の通りで、様々な業界の方々がヘルステック企業のPitchを審査していただきました。
どんなことをリサーチするかというと、まず審査基準。
まず、ホームページに書いてあるかをチェックして、今回は書いてなかったので事務局に問い合わせたところ、全員の総合判断ということだったので、誰か特定の人に『バックテックは良い!』と思ってもらうよりかは、総合的な判断で意思決定されるのだろうと解釈しました。
ただ、このような場合でも最終的な意思決定権を持つ人がある程度決まっている場合もあるので、そこをしつこく聞きましたが、もちろん教えてくれなかったので(笑)、あくまで総合的な判断がされるだろうという仮説のもと動くようにしました。そうなると、様々な背景・価値観を持つ審査員に評価されなければいけないわけですが、ここで何が最も大切かというと、その審査員たちの興味の的が何なのか。と言うこと。
例えば、ファイザーの社長である原田さんが審査員として入ってますが、ファイザーさんは2012年と2017年にカラダの痛みに関する調査を大規模に行なっています。当たり前ですが、この調査の内容はバックテックの達成したい理念にマッチすることでもあるし、原田さんも認知しているはず。これは使うしかない!と言うことで、しっかりと引用にファイザーさんの名前を入れて、プレゼン資料に入れ込みました。
また、東急電鉄さんは4年連続で健康経営銘柄を取得しているため、これも当社の事業内容と一致します。だから、健康経営のマーケットの話の中で、東急電鉄さんの取り組みに触れることも当たり前に決定(笑)。
その他、メドピアの石見さんだったらfirst callとの連携を意識しながら聞くのではないか、VCであるスクラムベンチャーズ宮田さん・Gree ventures堤さんはテクノロジーによるスケール感を特に意識するのではないかなど、普段の出資先などの特徴やSNS等での発信内容、インタビュー記事をリサーチして仮説を立てていくわけです。シニフィアン小林さんについてもこれまでの仕事の背景などをリサーチしたり、日経新聞さんも、健康経営の記事をどんな文脈で発信しているのか、健康経営に関わる記事の掲載頻度は増えているかなどを徹底的にリサーチしました。
あとPitch前夜には、発表の練習のために実は早めに帰り、五目あんかけラーメンの大盛りを食べているときに、その日に『行動変容をデザインする〜健康経営の視点から〜』というテーマでディスカッションした産業医であり、プロピッカーの大室先生から『今日の夜どうする?』的なチャットをいただきました(ちなみにこの日が初対面w)。
もともと大室先生のファンだった僕は、普通に会いたいし、かつ、大室先生はシニフィアンの小林さんと交友関係があるので、小林さんの最近の興味の軸などが聞けるかもしれないと、チャンスの匂いを嗅ぎ取り、五目あんかけラーメンを口いっぱいに頬張りながら、『お腹空いてるんで、ご飯食べいきましょう!』とすぐに返信したら、時間作ってくださることに。チャンスの転がっているところには這いつくばってでも行く習性があるので、ソッコーで渋谷に戻り、いかにもご飯食べてないという感じで、ペロリとステーキをご馳走になりました(笑)。チャンスが目の前にあるときは満腹中枢もイカれるのでしょう。
ここまでやれば、あとはリサーチした内容を元にストーリーを資料に落とし込むだけ。最優秀賞と取ったあとだから言える話でしょ。と思われるかもしれませんが、実はこの時点で非常に良いストーリーが頭の中に綺麗にロジック踏まえて描けたので、優勝できるとほぼ確信してました。
時間軸が少し準備の段階に戻りますが、審査員のリサーチをしていた日の夜に食事をしていた豊通オールライフの藤本さんに『今日、Health 2.0のPitch資料作る準備してるんですけど、優勝しているイメージ見えました。』とチラッと言ったのだが、それをちゃんと覚えててくれて証人とツイートしてくれてる(笑)
ここまでは資料を作り出す前に徹底的なリサーチをしよう!ということで、今回のPitch準備としてしてきたことを簡単に紹介しましたが、次は、実際のプレゼンの時に意識した内容を少しだけ紹介していきます。
②『想いのあるStory』と『Fact data』のバランス
普段からスタートアップ界隈の人と接していると、大きく『想いのあるStory』を重要視する人と、経営的な数値である『Fact data』を重要視する人の2つのタイプに分かれると思います。
その中で、大切にしていることは、この両者のバランスをいかにとるかということ。前者に偏り過ぎても『本当にこのサービスにお金出す人いるの?本当に遠隔で効果出せるの?』などと懐疑的な視点が多くなるし、反対に後者に偏ると、『このスタートアップを応援したい!一緒に何か成し遂げたい!』など、人の心を揺さ振ることができなくなってしまう。
例えば、私が起業するきっかけにもなった、あるStoryについてプレゼンの序盤で触れました。
ここで大切なのは審査員やオーディエンスの皆さんに、より解像度高く、このStoryをイメージしてもらうこと。例えば次のAとBで伝わり方がかなり違うことがわかると思います。
A
『仕事をやめないと病院に来る時間がないという、とある腰痛患者さんがいました。この時に私は起業を決意しました。』
B
『これは2014年の肌寒い秋のことでした。』
(少し時間の間を空ける)
『ある女性の患者さんが足を引きづりながら受診されて、こう言ったんです。』
(少し時間の間を空ける)
『仕事をやめないと来る時間がなかったので、仕事をやめてからきました。』←ゆっくりと悲しそうに表現
(長めの沈黙を作る)
『このとき私は、医療職が医療現場だけで人の健康を支えることには限界があると気づき、起業を決意しました』←力強く情熱を込めて表現
表現一つで審査員やオーディエンスが捉えるStoryの解像度はコントロールできます。ただ、Fact dataも見せなければ、ポケットセラピストがユーザーに愛されていて、お金を払ってくれていることの証明ができません。そこで、基本的には全て右肩がりのFact dataを示し、実際に『遠隔で肩こり・腰痛対策をしようと思っている人がいて、しかも、課題解決できていて、お金も出してくれている』と言うことを訴えかけました。
このような感じで、いつもプレゼンでは『想いのあるStory』と『Fact data』のバランスを上手く取れるように意識しています。
全体の構成としては、【Story→Fact data→Story】と言う流れが多い。
今回のプレゼンでも、序盤はStory、中盤はFact data中心、終盤はStoryという流れで構成しました。何をしているかと言うと、オーディエンスの皆さんのPitchに対する解像度をプレゼンの流れで意図的にコントロールしているということです。
『木を見て森を見ず』と言う言葉があるように、ミクロな視点とマクロな視点があり、それを自分のプレゼンの中でコントロールして、オーディエンス自身が意識しなくても、まずは序盤ではStoryで森を見させて顧客の課題を的確に認識させ(マクロ視点)、中盤ではFact dataで木を見させて具体的にソリューションに価値があると理解してもらう(ミクロな視点)。そして、最後に、また解像度を粗くしてStoryに引き込み、森、いや、地球規模の視点を持たせて、この課題は世界中のSocial Issueを解決できる可能性がある!と言う理念・ビジョンを伝えるという流れにしたわけです。
ここまでは、Pitchのプレゼンの際に意識していることを書いてきましたが、審査員との質疑応答も非常に重要な時間だと思っています。自分が普段持っていない視点からの質問は非常に刺激的で、時にはそのコメントにより、事業がドライブしていくことも考えられますので、僕自身は非常に大切にしている時間です。そこで、最後に、質疑応答の際に意識していることも軽く書いておきます。
③相手のコメントに価値があるものだと受容する姿勢
ここでの答えはシンプルで『相手のコメントを素直に受け入れよう!』と言うこと。素直な人は成長すると思っていますし、僕自身の名前も『直人』で『素直な人』ということなので、名前の通りに人生を全うしております(笑)。
色々なPitchでの登壇する起業家を見ていると、審査員の声をまずは受け入れて何か次のヒントにならないかと模索するタイプと、『いや、それは違うんだ。うちはこう考えている』と言うタイプの2つに大きく分かれると感じています。
これは個人的な見解ですが、前者の方が人ウケは良いし、かつ、本当にそのコメントが参考になることも少なくない。だから、まずはとにかくどんなコメントだろうが、それを受容した上で、その質問の意図や本質を解釈し、『XXさんのコメントも非常に当社の事業の参考になると思うので、今後取り入れていきたい。一方で、当社の現状の考えは〜』と言う感じで、異論を発するとしても、『貴重なコメントをありがとう!』という姿勢は絶対に示す方が良いと思っています。
こんなことを意識しながらの質疑応答に関して、オーディエンスの皆さんにも、ある程度評価いただいたようだったので安心しました(笑)。田中さん勝手に登場させてごめんなさい(笑)。
あとは、そもそも『①資料を作り始めない。まずは徹底的なリサーチから。』でも書きましたが、審査員のことは徹底的にリサーチ済みなので、どんな質問が来るかは、ほぼ想定できるし、このような質問をしてもらいたいと想定した上でPitch資料を作っているので、どんな質問が来そうかは、ある程度想定できる。
今回のPitch資料では意図的に、料金体系や競合優位性には触れませんでした。すると質疑応答では、『料金体系とビジネスモデルは?』『湿布とか、マッサージとか色々と代替品はあるが、何が競合優位性なのか。なんでお客さんはポケットセラピストを選んでくれるのか。なぜ他のものよりも効果が出るのか』などの質問をいただけたので、質疑応答用に事前に作成しておいたAppendixの資料も、ここで大活躍することに。
今回のHealth 2.0では、多くの起業家・投資家・事業会社の皆さまとヘルステックに関する議論ができ、非常にワクワクした機会でした!そして、Pitch Finalに挑んだ数多くのスタートアップの皆さん、その一人一人が医療・ヘルスケアという社会的な課題の解決に挑もうと思っている挑戦者であり、仲間だと思っています。
新しいイノベーティブなサービスが、ユーザーの健康課題を解決し、いつしか医療・ヘルスケアの仕組みを変え、未来をよりポジティブに変えることができると信じています。僕自身も、周りの起業家に負けないように常に挑戦者であり続けていきたい。
最後に、当社のポケットセラピストは現在数多くの企業様に採用いただいており、人が全く足りておりません!笑
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