舞台人の1日
おはようございます。
舞台演出家のバックステージです。
普段は稽古場か劇場に居て演劇やミュージカルを作ってます。みなさまに舞台業界のリアルを伝えて行こう思って発信してます。
・今日のお話「舞台人の1日」
(これより先はVoicyの内容を文字で起こしたものになります。サッと内容を把握したい方は購入をお願いします!)
前回のスイッチの入れ方をテーマにした放送が、1日で700回も再生されてて嬉しかったですね。700回程度で喜んじゃってますが、放送4回目としては非常に嬉しいです。将来的にはね、こんな日もあったなーと思えるくらいちゃんと継続できればと思います。ハッシュタグ企画は今後も定期的に投稿しようかと思います。地道にですが頑張りまーす!
さて、
今日は「舞台演出の1日の仕事流れ」というテーマで話そうかと思います。
どうしてこのテーマを選んだかというと、舞台業界のリアルを語るには、よくある1日を説明するのが1番かと。あと最近忙しすぎて、ちゃんとこのリアルは伝えておかなきゃという謎な使命感を感じまして笑。
前回仕事のスイッチの切り替えに関してしゃべったのですが、じゃあそもそもどういう仕事をしてんのかと?お前は何をやってるんだ?というのを話しますね。
先に言っておくと、かなり正直に喋りますが、ある個人の働き方で、そんなの嘘かもしれない!と思って聞いてくださいね。十人十色の中の、1種類の紫色くらいだと思ってください。
では今日も元気にやっていきましょう!
よろしくお願い致します!
・前提として時期によって忙しさはかなり違う。
1日の仕事と言っても時期によって大きく違います。僕らの仕事って4段階にわけられます。
・プロダクションの準備期間
・プロダクションの稽古期間
・プロダクションの劇場期間
・プロダクションの本番期間
今日はそのうちの2番目の稽古期間について語りますね、一番面白い期間。
えー?劇場にいるのが良いんじゃないの?って思うかもなんですが、劇場ってもうできることは限られてるんですよね。やることは決まってるし、やりたいことを成立するために調整したいけど人が多くの人が関わりすぎてるから物事を動かすにはかなり労力と時間が必要になります。
それに比べ、一番笑って、ハツラツと、自由に過ごせるのが稽古場です。トライアンドエラーを繰り返し、アールアンドディーを試み、新しい実験を思いつき、想像力を存分に使っていきます、やってることは子供の遊び場と同じです。大の大人がいっぱい集まって本気で遊んでる、プレイしてる場所だからです。
ただ、プロダクションが大きくなればなるほどその実験は大変になるのでその1日を切り取ってみなさんにリアルを提供します。
仮定のプロダクションとして
ミュージカル『(仮)ボイシー』
劇場は1500人くらいの大劇場
新作初演もの
キャストが全部で三十人くらいの結構大きめカンパニー
日本人のみならず海外スタッフもいるインターナショナルなカンパニー
1ヶ月公演ののちに全国ツアー
という、よくありそうなミュージカルプロダクションで働くとします。
・では、よくある1日の仕事の流れ
・朝10時に稽古場に入ります。
稽古前には結構衣裳合わせというメニューが入ります。
デザイナーが描いたデザインを実際の俳優にフィッティングするのを確認します。デザインのことは基本的にはデザイナーに任せますが、サイズ感や色味、生地を確認します。特に芝居や踊りの兼ね合い、キャラクターとしてどう表現するかを確認し、調整して決定していきます。
・朝11時に食事。
12時から稽古開始するので、事前にご飯いれておきます。歯ブラシの時間がとれるように頑張りたいといつも思ってます。ほんと・・・ドカ食いというか早食いの癖がついて直したいなって思ってます。若手の頃は「弁当は飲むもんだ!」っていわれて5分とかでかきこんでましたね。この癖やめたい。
・11時30分に舞台監督と稽古内容を確認
舞台監督って?と疑問に思ったかたもいるかと思いますが、端的にいうと、その舞台のことを全部把握して監督している人です。今後また舞台監督放送回やろうと思ってます。今日の稽古でどういう演出プランでいくか、どこにセットを置くのか、転換はどうするのかなどなど事前に確認しておきます。機構とか特殊なセットを使用するときには必ずここで確認します。いわゆるここが稽古を止めちゃう変数が多いので、ここでいろんなことを確認します。
大体このあたりで稽古場の端にはちらちら俳優さんがいらしてアップされてますね。
・12時から稽古開始。
稽古は基本的に午後から稽古です。これがこの仕事の良いところです。久しく満員電車乗ってないですねー。夜も遅いのでラッシュとはズレてます。朝に何もなければここからスタートです。
稽古内容は、一つ一つ台本に沿ってシーンを構築していきます。文字から立体的に現実化する作業です。ここだけで何時間もしゃべれますのでまた今度やろうかな。
ちなみにどうして12時から?というといろんな理由があるのですが、主にはスタッフ準備の理由が多いです。稽古中に発生した問題を稽古前後に解消しなきゃいけません。午前10時から18時で稽古しちゃうと買い物にいけなくなります。そうすると稽古進行にも支障があるのでここは相談で決めていきますね。
そして、適宜換気と小休憩を挟みつつ
・19時くらいに稽古終了
僕が舞台業界に入ったときは、終わり時間になってもシーンとして完成するまで、稽古が伸びてました。きつかったですね「あれ?きょう18時終わり予定だから夜に予定いれてたのに・・・間に合わないやん!」舞台人はみんな経験あるはずです、「ごめん、稽古が伸びて・・・間に合わないです・・・すみません」って謝ったことあると思います。
しかし最近の風潮だと確実に予定していた時間で終わる現場が多いです。これって海外プロダクションの常識が広まってきたのが理由かなと推測してます。ブロードウェイチームとかロンドンチームは就業時間に関してめちゃくちゃ厳しいです。
実は、僕は海外で舞台制作をした経験がありまして、その時は如何なる理由があろうと稽古時間は時間で終わってました。衝撃でしたね、通し稽古の途中で止められて「ええ!!まじかよ、俳優さんもここで止められたくないでしょ?」ってみたらもうみんな当たり前のようにカバンをもって、帰ってる。
余談ですけど、その時のプロダクションで一番早く帰宅するのはプロデューサーでした笑 いつも5分後には稽古場いなくなってましたね。
この文化は取り入れたいので、自分の関わるカンパニーではなるべくそうしております。
・19時、スタッフ打ち合わせ。
稽古後には、スタッフのみで今後のスケジュールや、明日の稽古で必要なものの確認と検証をします。この準備がものすごい大事で、例えば「明日1幕10場レストランのシーンやるんで」と決まってたらスタッフさんはレストランのシーンの小道具を準備する、何か必要なものがあれば次の日の朝買い出しをお願いします。
・20時、稽古場から電車帰宅
僕の場合は、基本連絡や明日までに確認事項はここでメールしますね。正直この時間帯に稽古場に残ってると集中力切れてしまっているので、電車の中で全部やるようにしてやるって決めて電車に乗ってます。よく乗り過ごしてます、効率良いんだか悪いんだか。
・21時、自宅から海外とリモート会議
これが最近流行りのスーパーハードモード現場ですね。僕はよくブロードウェイやロンドン作品に関わることが多くて、海外のスタッフさんとやりとりすることがあります、というか最近はほとんどですね。
Zoomさんのおかげで我々は時間と空間の概念が変わり、いつ何時でも誰とでも打ち合わせできる状態になってしまいました。ロンドンやヨーロッパ勢は日本時間の夜に、アメリカブロードウェイチームは朝に打ち合わせしますね。来日できない今はコミュニーケーションとれるだけでも有難いのですが、中々厳しいです。
そんなこんなで1日が終わってまた明日はまた同じような日々が続くって感じです。
そして、おやすみは週に1日が基本です。平日休みが多いですね、
・あれ?これっていわゆるブラックかい?
ざっと1日を切り抜きましたが、シンプルにブラックそうな現場ですよね笑
注意としては全部の演劇ミュージカルカンパニーがそういうわけじゃないですよ!
ちなみにこの日々はまだ序章というか平均的で、劇場入りしたらもっと激しくなります。
まあさすがに1年間ずっとこういう状況ってわけじゃなくて、2ヶ月間短期集中!って感じです。もちろん売れっ子の方々は掛け持ちやら連続でずっとこんな感じの方もいますけど。
こういうのを知らずにただ純粋に舞台が好きだからこの業界に入ってきてもそりゃやめちゃうよなーと思います、つまり僕はこういう1日の流れですけど、その周りには基本スタッフさんがいて、彼らは我々演出クリエティブサイドの決定を受けてから動けることが多いので、労働時間は絶対数として多いはずです。だからもっとホワイト寄りにするために業界として何を改善すべきかというのを考えるべきですよね。
・もっとホームラン狙っていく風潮が大事かと。
僕としては、
もっと興行らしい興行作品をつくったら良いと思ってます。
どいういうことかというと、舞台制作ってそもそもギャンブルなんですよ。当たるか当たらないかはもう幕をあけないとわからない!が大前提で作るべきなのかなと。
今、日本で上演されている作品は保守的というか一定の黒字が見込める作品が多いと思うんですね。だってよく初日前にチケット完売になってません?あれって興行としては異常なんですよ。初日が空いて、面白い口コミが広がり、売れていくが本来の在り方です。
ブロードウェイみたいにつまらなかったら2週間で終わり、でも人気なら3年とかロングランで元を取る。
日本プロダクションは公演日数を限定してしまうので、予算が限られてくる、
今回のミュージカルボイシーでいうと、シンプルに1500人×30回公演の売上の枠内で戦うしかないんです。本当に簡単ですよ、公演回数、キャパ、チケット代これでその作品の予算感でちゃいますから。
となると、できることが限られてきます。
難しい表現ですが、その作品の規模感と現場のプロセス量に大きな錯誤があると現場のキャストとスタッフが苦労します。
例えば、ミュージカルボイシーが3時間を超える大作ミュージカルなのに、稽古期間が予算の都合で1ヶ月だとしたらもう負け試合ですね。そんなの無理だ!と言っても既にチケットが完売状態、だからやるしかない、誰が?現場のキャストとスタッフが、みたいな。
つまり、理想としてはプロダクションの最後の尻拭きは製作側が持ってくれるシステムだと現場も疲弊しなくて済むかと思ってます。あまりにも無理なスケジュールや予算だと欠陥や事故は生じてしまいますよね。
例えとしてあってるのかわかりませんが、「ヒットしか打てないバッドなんですけど、なんとかホームランを売ってください」と現場を託されるのか
「三振していいので、ホームランねらっていこうぜ!君が三振して試合負けても大丈夫!(まあ次は雇わないけど)」の方が良いと思うんです。
そういった意味で
最近の日本プロダクションで面白いなと思ったのがハリーポッターです。ロンドンやブロードウェイで公演されている劇場版ハリーポッターが今度日本でも上演されます。
いや、普通の海外プロダクションじゃん!って思うかもですが、専用劇場つくって無制限にロングランするってなかなかギャンブルしたなーって思います。ハマれば諸外国のように観光地になりますけど、外れたときは・・・恐ろしい!でもリスクをとった人だけ得られるリターんがあるように、本来興行ってそういうものだと思ってます。
今日は、そんなところです。
今日も1日頑張りましょう!
バックステージでした。ではまたー。
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