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ばちょめんの、それいけ勝手にニッポン代表!【ディスクゴルフ編】

<はじめに>

海外生活を長く送っていると、日に日に増す祖国への想い。うれしいニュースも、悲しいニュースも、全て取り込み思いを馳せる。
外国人に囲まれ生活を送る中、様々なスポーツの日本代表が活躍する姿を拝見すると、とても熱いものがこみ上げてくる。彼ら彼女らは、日本を背負っている。心から、熱く、彼らを応援する。

がんばれ、ニッポン!がんばれ、ニッポン!

そんな日々を送る中、ふと自分の胸に手を当ててみた。ずっとずっと、密かに隠し持っていた感情。

僕も、日本、背負いたくね?

海外生活の様々な思いの丈を引っさげ、国を背負いたい。

祖国への想いを何かに乗せて、思い切り躍動したい。

皆様、すみません、勝手に背負っていいですか?

題して........…

ばちょめんの、それいけ勝手にニッポン代表!


今回は、記念すべき第一弾をお送りする。

<見つけた謎多き種目、ディスクゴルフ>

さぁ、国を背負うことは決定した。ただ、具体的にどう背負うのか。
サッカー、野球、バスケ、バレーボール、たくさんのメジャースポーツには、それぞれの日本代表がすでに存在する。その一員に今からばちょめんがなれるわけはないのだ。

あれやこれや考えながら、インターネットで様々なものを検索していると、興味深い記事を発見した。

" ニューヨークでついに完成した最初のディスクゴルフコース。皆様もニューヨークにおける、ディスクゴルフの歴史の一部になりませんか?今回は、6度の世界チャンピオンに輝いた Paul氏と、女子全米チャンピオンの Missyさんを迎え、皆様と........…(以下省略) "

........…なんか面白そうなの、見つけた。

ディスクゴルフって何?というか、世界チャンピオンくるの?

調べたところディスクゴルフとは、基本的にゴルフと同じルールのもと、ディスク(フリスビーの様な円盤型のもの)をスタート地点からゴール(カゴが設置されているところ)に向かって投げ、9ホールないし18ホールを周り、何回投げたかを競う種目だそうだ。投てき数が少ない方が勝者。

........…遠くの方で、国歌が聞こえた気がした。

世界チャンピオン、やっつける!

その種目がなんなのかすらわからないが、とにかくなんでもいいや。

日本背負って、チャンピオンに挑む!

こうして長年の夢であった日本代表として、異国の地で、勝手に国を背負うこととなった。

<いざ会場へ>

とてつもない快晴に恵まれた土曜の朝、日本代表ばちょめんは、静かにベッドから起き上がった。打倒ディスクゴルフ世界チャンピオンを掲げ、準備に入る。

国を背負うために、必要なものを揃えよう。どうしても、国旗を身にまといたい。

クローゼットをあさる........…あった。

ばっちり国、背負った。

会場までの道すがら、様々な思いが交錯する。今回のイベントを発見したあの記事。" 貴方もニューヨークのディスクゴルフの歴史の一部になりませんか?"

........…ニューヨークの歴史?日本の歴史の一部に、変えてやる。

気合の入った日本代表が、ついに会場に到着した。

めっっっちゃくちゃ人居るんですけど........…

日本代表、一瞬、ひるむ。

周りの参加者を見渡す。それぞれがリュックに My フリスビーを何十枚も持参し、どこどこ大会2012みたいな謎の T シャツ着て、腕組みしている。

オッケーオッケー、みんな、割と、ガチ。

ここで凄まじい衝撃の事実に直面する。

........…日本代表、そもそも、フリスビー持ってねぇ。

会場では、今回のイベントの大まかな流れを説明している。
そんなことは、日本代表にとっては、どうでもよかった。

フリスビーが、ないっす。
日本代表、My フリスビーが一枚もないっす。

なんか軽いノリで来ちゃった感じ、国を背負う覚悟が足りない。猛省した。

会場を一周する。

フリスビー、レンタルしてたーーーー!!

助かった。これで、競技に参加することはできそうだ。

日本代表、レンタル品で、世界に挑む。


<開幕!>

大まかなルール説明を聞く。
第一部は、参加者全員が、2回ずつフリスビーを投げ、見事ホールインワンを達成した者には、景品が送られる。
第二部は、世界チャンピオンと女子全米チャンピオンを相手にホールを周り、希望した参加者達が、己のプライドをかけて戦う。

面白そうだ。

そして満を持して、世界チャンピオン、現る。

チャンピオンの、圧倒的な余裕。
まったく緊張するそぶりも見せず、リラックスしてカメラに語り掛けている。

見とけよ、世界チャンピオン。今日ここで、僕があなたを倒す。

改めてそう決心した日本代表は参加者の群れから一人離れ、

国歌を斉唱した。


<第一部、開始>

さぁイベント第一部が始まった。参加者全員が2回投てきを行う。まずは、デモンストレーションとして、世界チャンピオンが投てきを披露するようだ。皆が和気あいあいと談笑しながら参加しているが、日本代表はここに戦いに来ている。チャンピオンの投てきを、一人眼光鋭く見つめる。

うん、悪くない。

というか........…

正直よくわかんねっす。

そしてついに、参加者の番が回ってきた。投てき者は、氏名、どこから来たのか、競技歴、そして使っているフリスビーのメーカーを司会者に答えてから投てきに入るようだ。

ホールインワンで、景品。ゴールまでの距離で考えれば、ホールインワンも不可能ではないと思われるが、何せ皆、フリスビーのコントロールに苦戦している。

投てきの順番は特に決まっておらず、立候補した者からどんどん投げていく。

その後も引き続き、様々な参加者の投てきを鋭く見つめ、綺麗なフォーム、正しい握りかた等盗めるものを盗もうと画策する。そこでわかったことは........…

なにひっっっっとつない。

わかんねっす。

一つ言えることは、みんな競技歴が、長い。

そして世界チャンピオンは、わざわざ主催者側が呼んでいる事もあってか、何回も投てきを見本として見せてくれ、数回目の投てきで、本当にホールインワンを達成。
会場全体が歓喜に沸く中、日本代表はその輪には加わらない。

僕はここに、戦いに来ている。

第一部もそろそろ終盤。司会者が、まだ投てきを行っていない参加者を募る。

........…胸の日の丸の刺繍にそっと触れる。熱い想いがこみ上げる。祖国の父、友、むしろ山、海、日本の全てを背負い、その代表として、最高の投てきを見せる時が来たようだ。

さぁ、行くぞ!それいけ勝手にニッポン代表、出陣!

<日本代表の第一投てき>

日本代表「次、自分行きます」
司会者「お名前は?」

そうだ、司会者に名前、どこから来たのか、競技歴、フリスビーのメーカーを答えなければならない。

日本代表「名前は、ばちょめんです、日本から来ました。」

競技歴が2年以下の参加者など今のところ居なかった。
競技歴ゼロと言えば、失敗した時の言い訳が幾分きくだろう。
........…いや、僕はここに、戦いに来ている。

ということで、競技歴の質問は、ガン無視を貫く。

フリスビーのメーカー?そこでさっきレンタルしましたなんて言ったら、なめられる。かといって、メーカーなど一つも知らない。

えっと…

日本代表「メーカーは、ばちょめんスーパーきえんざんです」
司会者「は?」
日本代表「え?」
司会者「それは日本のメーカーかい?」

聞こえないフリで乗り切った。

投てき場所へ向かう日本代表の背中に、マイクを通した司会者の声がこだまする。
「それでは、日本から来てくれたばちょめん氏の投てきです!」

ん?........…

いや、このイベントのために、わざわざ日本から駆けつけました感、出ちゃってね!?


いやいやいや、普通にニューヨークに住んでます........…

........…フッ、どうやら予定していた以上のものを、背負っちまったようだ。悪くない、ゾクゾクするぜ。

日本の皆さん、それでは行ってきます!



ばちょめんスーパーきえんざん、無事、明後日の方角へ、消えて行く。


「........…パチ........…パチ、パチパチパチ」

会場を、生あたたか~い拍手が包む。

日本代表の第一投てきが、静かに終わった。

<運命の第二投てき>

いつかの雑誌で、有名アスリートが言っていた。
「失敗から学べば、次は今よりマシになる。それを積み重ねる事で、気づけば目標に到達する。」

運命の第二投てき。世界チャンピオンを、倒すんだ。

2枚目のスーパーきえんざんに、語り掛ける。
「俺たちは、いつも一緒だった。あの苦しい練習の日々も、涙をのんだ日々も、いつも俺たちは二人三脚で頑張ってきたじゃないか。」

........…いや、さっきレンタルしただけだ。

それでは、行ってきます。


スーパーきえんざん、三週間後の彼方へ、飛んでいく。


<急接近>

こうして国を背負ったばちょめんの、甘酸っぱい挑戦が終わった。
日の丸を胸に抱き、祖国への想いを宿したスーパーきえんざんは、遥か彼方へ飛んで行った。

ここで忘れてはいけない事がある。

きえんざんは、レンタルである。

日本代表、血まなこで、きえんざん探す。


一人、ポツンと途方に暮れる。

戦友たちが、応援に駆けつけてくれた。昨日の敵は、今日の友。お名前も存じませんが、皆さん、ありがとう。

そしてここで、まさかの事態が勃発する。


森の茂みから、世界チャンプ、現る。


世界チャンプ、日本代表のレンタルきえんざん、見つける。


世界の頂きに立つ男が、ばちょめんスーパーきえんざんを探すため、茂みに足を踏み入れていた。

世界最高の、スポーツマンシップ、ここに在り。

人生史上、トップ3に入る全力のありがとうございますを、炸裂させた。

チャンプ、すがすがしい戦いを、ありがとう。
貴方のような、素晴らしいスポーツマンシップを持ったアスリートと対戦できたこと、誇りに思います。

いつかまたどこかで、ライバルとして、貴方と酒を酌み交わせたら、本望です。その時は、今日のしのぎを削った戦いを振り返りながら、朝まで酒を飲み明かしましょう。

こうして、" ばちょめんのそれいけ勝手にニッポン代表 " の初戦は、幕を閉じた。
このイベントの第二部も参加はしたが、散々な結果に終わったため、ここでは割愛させていただく。

<最後に集合写真>

イベントの全てのプログラムが終了し、最後に記念撮影を行うとのこと。

散々な結果に終わった日本代表も、最後の意地がある。

最後に、何ができる?

そうだ、キングカズっぽく。キングカズっぽくいこう。


最後までご一読、ありがとうございました。


※追伸

もし万が一、ディスクゴルフを真剣にプレイされている方がこの記事を読んでいるとしたら、ふざけた記事、申し訳ありません。応援しています。もし大会でニューヨークに来るような事があれば、是非教えてください。
日の丸かついで、全力で応援に行きます!

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