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「14歳の音楽」=「一生涯の音楽」

Twitterでフォローさせていただいている、あるソプラノ歌手の方のツィートにこんな配信イベントが紹介されていた。

今年はベートーヴェン生誕250年ということと、「コロナ渦に負けるな」的に、ベートーヴェンがいろいろなところへ引っ張り出されている。
それは決して悪いことではない。
適切な機会に必要とされる音楽が紹介されたり、それをきっかけにリスナーの音楽に対する愛情の奥行きが深まったりするのは、素晴らしいことだ。

「14歳のベートーヴェン」
別に中学生限定のコンテンツではないそうだが、興味をそそるタイトルである。

「14歳」。実は最近の私が一番興味のあるキーワード。

興味深い調査

1年ちょっと前、WEBでたまたま面白い調査データを目にした。
2018 年 2 月 10 日のニューヨーク・タイムズに掲載された、セス・スティーヴンス-デヴィッドウィッツ(Seth StephensDavidowitz)氏による「音楽の好み」に関する研究だ。

簡単に言うと調査方法はこんな感じ。

「1960 年から 2000 年のビルボード・チャート」と「Spotify における年齢別選曲ランキング」を照合し、「大人になってからの音楽の好みに大きな影響を与える年齢は何歳か?」を分析する。

女性の方が・・・

結果を性別で見るとこんな結果が明らかになった

■男性
13 歳~16 歳の間にリリースされた曲が、大人になってからの音楽の好みに影響を与えている。平均すると男性の最も好きな曲は、14 歳の時にリリースされた曲であることが多い。
■女性
女性の場合は男性より少し早く、11 歳~14 歳の時に聴いた音楽の影響が大きい。平均 13 歳の時にリリースされた曲が最も好きな音楽になる。

■女性が男性より 1 歳年齢が低い理由の推測
思春期において女性の方が男性より早熟で、音楽の好みを形成するのも早い。

思春期の終わりと音楽の好みの形成時期はほぼ一致する。

例えばこんなの・・・

Radiohead の代表曲『CREEP』。

1993 年にリリースされたこの曲は、アメリカではこの年後半から翌 94 年にかけて長期間にわたりヒットチャートを賑わした。
『CREEP』は2018年の調査当時、38 歳の男性の間で 164 番目に人気のある曲だった。
一方、±10 歳(28 歳・48 歳)の男性人気曲ランキングでは、TOP300 にも含まれていない。
また、この曲の年齢別人気を調査した結果、そのピークは 38 歳だった。
2018 年に 38 歳だった男性は、1993~94 年当時は 13 歳~14 歳。

この傾向はほぼどの曲にも当てはまる。

結論
13 歳、14 歳に出会った音楽は、その人の「一生涯の音楽(LIFE TIME MUSIC)」となる。

あなたはいかが?

皆さんにはこのセオリーが当てはまるだろうか?
試しに、私の周りの比較的音楽的感性の高い人たちに紹介すると、9割近くの人が「俺もそうだわ・・・」と言い出して、「14歳の音楽談義」に一花咲くことになる。

そういう私もばっちり当てはまる。

「この曲、このアーティスト」というわけではないが、40数年間聴き続け、レコード・オタクとなったクラシックのレコードを買い始めたのは中学1年生の冬、あと5ヶ月で14歳になる頃だった。

きっかけは大映ドラマ『赤い激流』(1977年)。
水谷豊主演のピアノ・コンクールに絡めたこの泥臭いサスペンス。
ピアノ・コンクールの第一次予選の課題曲が、ショパンの『英雄ポロネーズ』だった。
因みに2次がリストの『ラ・カンパネラ』、最終(?)がベートーヴェンの『テンペスト』の第3楽章だった。何だか笑える。
この『英雄ポロネーズ』がツボって、レコード屋へ行って、そこにあった中村紘子のショパン名曲集を買い、とにかく聴き続けた。

そんなことをしていたら、他のクラシックのレコードも聴きたくなり、翌年のお年玉で当時発売されたばかりのカラヤンベルリン・フィル『ベートーヴェン交響曲全集』(2度目の全集で、カラヤンとベルリン・フィルの極致!)をいきなり買い込んだ。

ほとんど理解不能な中学1年生・・・。

中二病

この「14歳の音楽」の調査結果を知った時、ある言葉を思い出した。
「中二病」だ。
元々はネットスラングで、良い意味では使われない。
簡単に言えば、
「中学 2 年生頃の思春期に見られる自己愛に満ちた空想や嗜好、自意識過剰やコンプレックスから発する一部の背伸びしがちな言動傾向」
といった感じだろうか?
皆さんの中にも「万年中二病!」と自虐的に言う方も、さぞ多いかと・・・。

ネットで検索するとその具体的な症状例としてこんなものが挙げられている。

⚫ 洋楽を聴き始める(でも、いいとは思わない)
⚫ 美味しくもないブラックコーヒーを飲み始める
⚫ 売れたバンドを「売れる前から知っている」とムキになる
⚫ やればできると思っている(でも、やらない)
⚫ 母親に対して激昂して「プライバシーを尊重してくれ」などと言い出す


こうやって見ていくと、その名の通り、中学二年生の思春期に起こりやすいこの中二病と、「14 歳の音楽」=「その後の人生の音楽の好みに、最も色濃く影響を与える音楽」というのは、挙げたような症例を見ても、思春期特有の現象として同じ文脈で語ることができないだろうか?

職場体験学習

一方、「生徒が事業所などの職場で働くことを通じて、職業や仕事の実際について体験したり、働く人々と接したりする学習活動」、いわゆる「職場体験学習」が、文部科学省の「進路指導・キャリア教育」のガイドラインに定められており、それを中学二年次に実施する中学校が全国的に多いという。私の住む町でもそうだ。

14歳=自我の目覚め

14歳は 、その後の人生における価値観嗜好を形成していく中での最初のポイント、そして「自我の目覚め期」ということができるような気がする。
そんな少年少女たちが自ら感じ、考えるための、大人による適切で素敵な機会が音楽に限らず、少しでも多く創出できればいいと思う。
そして、それに自分が関わることが出来たら、と思う今日この頃である。

今、巷では「SDGs!」と通り一遍等に、そして声高に叫ぶ人たちが多いけれど、こういうことこそ「サスティナブル(持続可能)」にすべきなんじゃないかと・・・。

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