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ブルックナーの交響曲聞き方ガイド(初級編)
第4番《ロマンティック》や第7番の次に聞くべき交響曲はどれだろうか?
実は、それは第1番ではない。
1.ブルックナーの交響曲第1番はマニア向け
有名どころの第4番や第7番に慣れ親しんだからといって、第1番から順に聞いていくのはおススメしない。
第1番や第2番は、はっきり言って地味である。
交響曲ジャンルにおけるブルックナー独自様式の確立を歴史的に見ていくという点ではいずれも重要な作品(第二交響曲においてブルックナーは交響曲ジャンルにおける自己のスタイルを確立した)だが、純粋に交響曲を聞く愉しみという点に関していえば、これらは後回しにした方が良いだろう。
繰り返すが、なにしろ相当に地味なのである。
それでは、次に聞くべき交響曲は一体どれなのか?
2.第4番が好きな人は第3番を聞いてみよう
第4番と第7番を比べてみたときに「第4番のほうが好きだ」という人には交響曲第3番ニ短調をおススメする。
・理由その1【長くない】
第3番は50分少々もあれば全楽章を通して聞ける。これは他に比べて圧倒的に短い。(50分少々で短いというのもなかなかアレだが...笑)
・理由その2【リズミカル】
どの楽章においても主題がリズミカルなのでノリやすい。また、メロディーも口ずさみやすいものが多い。
・理由その3【ストーリー性がある】
第3番はブルックナーの「チャイ5」なのである。すなわち、冒頭楽章の第一主題(短調)が最終楽章の終わりに長調になって帰ってくるのである。暗から明へというストーリー性はもちろん、楽章間の有機的な統一によってもたらされる充実感は相当のものである。
3.第7番が好きな人は第9番を聞いてみよう
第4番と第7番を比べてみたときに「第7番のほうが好きだ」という人には交響曲第9番ニ短調をおススメする。
おそらくこのタイプの人は、ワーグナーやマーラー、R.シュトラウスもお好きだろうと思われるが、いかがだろうか?
いわゆるコテコテの後期ロマン派が好きな人には第9番のアダージョがうってつけである。なにしろうっとりするほど魅惑的なハーモニー(あるときは機能和声の枠から大幅に逸脱する)に満ちているのである。
また、冒頭楽章は3管編成オーケストラのド迫力サウンドが楽しめる。金管好きにはたまらない。
4.第4番と第7番が同じくらい好きな人は第5番
第4番と第7番を比べてみたときに「どちらも同じくらい好きだ」という人には交響曲第5番変ロ長調をおススメする。
ただし、全楽章まるまる通してではなく、とりあえず最終楽章だけ聞いてみるのをおススメする。第5番はとにかく最終楽章がスゴイのである。
どうスゴイのか?
第5番の最終楽章はブルックナーの「ベト9最終楽章」なのである。
既出楽章の主題の回想、二重フーガ、そして感動的なフィナーレ!
最終楽章だけでも25分程度、全楽章だと70分を優に超える大作である。最終楽章だけでもブルックナーのスゴさは十分に感じ取れる。
5.第8番は取扱要注意!
なかには交響曲第8番ハ短調をすすめてくる人もいるだろう。しかし、これには要注意である。
確かに、第8番はブルックナーの交響曲の金字塔である。それに異論はない。しかしながら、長い、長すぎるのである。全楽章通して聞くとなると、どんなに快速テンポの演奏でも最低70分はかかるのである。少なくとも、である、しかも快速テンポで。
第8番は、あらかじめ所定の準備をしておく必要があるものと思われる。
6.第6番はどうか?
曲の長さという点では、交響曲第6番イ長調も第3番と同様、比較的短い方に分類される。
ただ、第6番は正直なところ地味である。
交響曲ジャンルにおけるブルックナーの形式観(ソナタ形式の取扱)の変遷を見ていく上では非常に重要な作品(この作品のアダージョ楽章はかなり実験的な形式)ではあるのだが、いかんせん地味であると言わざるを得ない。
(ちなみに、この曲は後にマーラーが短縮版を初演することになり、結果的にマーラーの交響曲に大きな影響を与えることとなる。)
7.どの指揮者、オーケストラの演奏で聞くべきか
人それぞれである。カラヤンが好きならカラヤンで、ウィーンフィルが好きならウィーンフィルで、聞くのがよいだろう。聞きなれている演奏家の演奏で聞くほうが耳に入ってきやすいというものだ。
ただし、スローテンポの演奏にはご注意を。チェリなんとかさんや上なんとかさんの演奏は100分近くになるものもあるんだとか、ないんだとか...
(ちなみにオーケストラに関していえば私はドイツ系や北欧系のオーケストラのブルックナーが好きである。)
8.最後に
ぜひ自分なりに新規開拓して、好きなナンバーをどんどん見つけていってほしい。きっと素晴らしい発見がいくつもあるはずだ。