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ふくろうのおやつ (前)

(あらすじ)
今は「ねむねむの森」と呼ばれるその森は
遠い昔は「あったか池の森」と呼ばれていました
森の奥深くの岩山の上に白い煙に包まれたあったかい池があったからです
その池はくたびれた体や羽が元気になるふしぎな池で
いつもたくさんの動物や鳥たちで賑わっていました
今回はいつになく大賑わいです なぜなら
あの有名なふくろうの家族が来ているからです
「あったか池の森」には昔から亀の家族と白へびの家族が住み着いていました
ふくろう家族のやんちゃなふくろうくん
亀の家族のおっとり亀の子くん
白へびの家族の好奇心旺盛な蛇ちゃん
この3人の物語です
(あらすじ終わり)


長老ふくろうは
今ではねむねむの森のふくろうの中でいちばんおじいちゃんのふくろうです
どのくらいのおじいちゃんかというと
うみちゃんのおばあが うみちゃんとおなじくらいちいさかったころを
しっているくらいのおじいちゃんです

あたまのうえにはツノのような ミミのような まゆげのような
白い羽がはえています
体の羽にはいろんな色が混ざっています
太陽さんの光があたるとそれはそれは宝石のように輝きます
何年も何十年も 百年以上生きてきたので羽にいろいろな色が混ざるんだって
それはそれはとっても綺麗です

長老ふくろうには
お父さん
お母さん
お姉ちゃん
妹ちゃん
がいました
この五羽のふくろうの家族はとっても仲良し
決まったすみかはなく いろんな森を渡り歩いては
その森の若いどうぶつさんたちの巣作りを手伝ったり
その森のお料理好きなどうぶつさんたちにお菓子作りを教えたり
その森のお祭りによく合う踊りや歌をを一緒に考えたり教えたりして
暮らしていました

その頃 まだ長老ふくろうが小さかったころのねむねむの森は
ねむねむの森という名前ではなく「あったか池の森」と呼ばれていました
たくさんの木が生えていましたが 今のように小道はなく
みるくの木もしゅわしゅわの木もコーヒーの木もありませんでした
いえ それらの木に育つはずの若い芽は生えていたのですが
たくさんの大きな木々たちがまわりにいたために
太陽さんの光が十分に届かなかったんです
特別な木の実をつける木に育つためには
正しい場所に芽を出すことが必要で
それは偶然に起こる 奇跡のようなことだったんです

森には種がたくさんたくさん運ばれてきます
空を自由に飛びまわっているとりさんたちが
どこかの森できのみを食べ
その種をいろんな森へ運びます
この「あったか池の森」にも たくさんの種が運ばれてきます
たくさん運ばれてくる種なのですが
すべてが全部立派に大きくなるわけではありません
大きくなる前の若くて柔らかい葉や茎は
どうぶつさんたちの美味しいごはんになってくれます
ですから この種たちの中に
みるくの木やシュワシュワの木やコーヒーの木の種があったとしても
それが正しい場所で芽を出し
だれにも食べられずに大きく育つということは
たとえもし 太陽さんが沈まずに戻ってくるようなことがあったとしても
むりなことでしょう

ところで この「あったか池の森」には
他の森よりも たくさんの種が集まってきます
なぜだかわかりますか?
この森には森の奥に岩山があるのですが
そこには暖かい水がかってに湧き出ている池があったからです
とりさんたちはここを「あったか池」とよんで大切にしていました
とりさんたちだけでなく どうぶつさんたちはみんな
くたびれたり なにかにぶつかって傷ついたりしたときは
この「あったか池」までやってきて
体をやすめるのです
そしてこの「あったか池」は体を元気にするだけでなく
他のとりさんたちやどうぶつさんたちからいろんな話をきける
とっても役に立つ集会場のような場所でもありました

いろんな森を渡り飛んでいる五羽のふくろうの家族も
ほかのとりさんたちと同じように
この「あったか池」に時々来ては 体を元気にし
他のどうぶつさんたちやとりさんたちとの久しぶりの再会を楽しんでいました

この岩山には いつ頃からかふたつの家族が住み着くようになっていました
ひとつは大きな亀の家族
もうひとつは小さな白へびの家族
それぞれの家族にはそれぞれ子供がひとりずついたので
ふくろうの家族の子供たちにとっては
亀の子と白へびの子と一緒にあそぶことが
この「あったか池の森」にくるときの楽しみのひとつだったのです

亀の子ちゃんと白へびちゃんにとっても
とっても気の合うふくろうの子供たちが来るときが
たのしみでたのしみで仕方がありませんでした
とくに真ん中の男の子は力もちだったので
白へびちゃんを背中に乗せ
亀の子ちゃんを抱き抱え
森のいろんなところへ一緒に冒険にでかけました
この真ん中の男の子ふくろうは
いまでは長老ふくろうとしてねむねむの森を守ってくれていますが
子供の頃はいつでもバタバタぱたぱたいそがしく飛んでいて
冒険が大好きで いたずら好きな子供ふくろうでした

この男の子ふくろうにはお姉ちゃんふくろうと妹ちゃんふくろうがいます
お姉ちゃんふくろうはお母さんふくろうのことが大好きで
いつしか他のこどもたちと遊ぶことをやめ
いつでもお母さんふくろうのあとを着いてまわって
お母さんふくろうがほかのとりさんたちと
「あったか池」の湯気をあびながらお喋りしているところに一緒にはいって
いろんなお話を一緒にうなずきながら聞いていました

あそこの森のあの木の実は酸っぱいけれども
あそこの森のあの木の実と一緒に食べるとおいしいよ
とか
あそこの森にある湧き水で
お茶をいれてごらんなさい 
どんなものでも最高の一杯にしちゃうよ
とか
最近にんげんたちの村ではなかなか良い草や実がつくられている
とか
そういえばにんげんたちがこの「あったか池」に来たがっているけど
道がないからたどり着けないらしい
とか
最近目がよく見えなくて
この間とんでもなくまずい木の実をたべちまった
とか
あそこの森に新しく「あったか池」があらわれて
そこはこことは違う匂いがする
とか
おねえちゃんふくろうがいてお母さんはたのしみだねぇ
とか
おねえちゃんふくろうはしっかりものだねぇ
とか
おねえちゃんふくろうはいちだんとかわいくなったねぇ
とか とか とか

面白い話 楽しい話 びっくりする話
そしてじぶんのこともたくさん褒めてもらうので
おねえちゃんふくろうはこの「あったか池」にくることが
楽しみで仕方がないのです

一方 妹ちゃんふくろうは というと
この子はとにかく踊りと歌が大好きで
いつでも歌うようにお喋りし
いつでも踊るように飛びまわっています
じつはちょっとした有名人で
妹ちゃんふくろうの歌と踊りをたのしみにしてるどうぶつさんやとりさんたちがたくさんいます
ふくろう家族が「あったか池」で休みをとるらしいよ
といううわさが誰からともなく広がると
あちこちの森から妹ちゃんふくろうの熱烈なファンがやってくるので
このときはこの「あったか池の森」はちょっとしたお祭り騒ぎになるんです

この日も妹ちゃんふくろうのまわりには
とりさんやどうぶつさんたちがたくさん 
輪になって妹ちゃんふくろうをかこんでいます
そして楽しそうに踊りながら歌っている妹ちゃんふくろうに
やんややんやと声援をおくったり
喝采をおくったり 一緒に踊ったりしています
みんなとっても楽しそうです

その妹ちゃんふくろうの姿を少し離れたところから
優しく見守っているのがお父さんふくろうです
お父さんふくろうは お母さんふくろうと同じように
他のとりさんやどうぶつさんたちと輪になっておしゃべりをしています

なにを話しているのかちょっと聞いてみましょう

「そういや この間ここからちょっと飛んだところにある丘にいったのさ
そうしたらなんとそこで 
にんげんたちがりっぱなすみかをつくっていたぞ」

「おお!それならオイラもしってるさぁ
どうやら「むら」というものらしいさぁ
ほかにもちょっと広い土地のあるところにはその「むら」っちゅうもんが
たくさんできはじめているらしいさぁ」

「わしもその丘の上を通ったわい
いやぁ〜にんげんっちゅうもんはてーしたもんだわいなぁ」

「んだな んだなぁ 飛ぶことはできねーだども
2本の足でしっかり歩いて 2本の腕をしっかりつかって 
てーしたもんだぁ
しかもその2本の腕には手っつーもんがついてて
その手っつーもんには指っつーもんが5本もついてて
その5本の指っつーもんをつかってなぁ
にんげんたちはなんでもかんでも作っちまうんだぁ!
はぁ おらたまげたなぁ!」

「そういやぁおれたちのことを(空を飛べて羨ましい)
なーんて言ってたにんげんもいたけれども
あんなに自由に動く手足と指があったり 
なんだかおれたちとはちがって
今までにないものをいきなりつくっちまう能力があるんだよなぁ」

「お!にんげんのむらの話をしてるのかい?
さっきかあちゃんたちが話しているのを聞いたんだが
あそこの丘のむらは「リーシャ村」っていう名前になったそうだぞ
なんでもむらに初めて生まれた赤ん坊の名前だってよ」

こんな感じで
お父さんふくろうのまわりもお喋りがとぎれません

そこにお母さんふくろうがやってきました
「ふうさん ふうさん ちょっといいかしら
いまわたしたちがやらなくちゃいけない頼まれごとはなにかあったかしら?」

このふくろうの家族はいろいろな森やどうぶつさんたちから頼まれごとを受けると
そこへ行って生活しながらお手伝いをしているんです

ふうさん とよばれたお父さんふくろうは答えます
「おお くうさん
雪が降る前に巣の修理を頼まれている森があるが
それを始めるにはまだたっぷり時間があるよ
どうかしたかい?」

「あら それはちょうどよかったわ
じつはね あっちの丘のリーシャ村っていうむらに住んでるにんげんさんたちが
この「あったか池」にきてみたいらしんだけど
ほら、この森はにんげんさんが歩けるような道がないでしょう
にんげんさんたちが通れるように小道をつくってあげたらどうかしら?
ちょうど今はたくさんのどうぶつさんたちもいることだし
みんなで作ればあっというまにできあがっちゃうんじゃないかしらねえ」

「おお くうさん
ちょうどいまリーシャ村のことを聞いていたところさ
それにわたしもこの森にはやったほうがいいことがたくさんあるなぁ
といつも思っていたんだよ」

いつもはどうぶつさんやとりさんたちとのお喋りに忙しくて
なかなかこの「あったか池の森」のお世話ができないことが
お父さんふくろうも気になっていたんです

「ふうさん それはよかったわ
では明日から早速始めましょう
ここにいるみんなに知らせてきましょう」

よほどくたびれていたり けがをしているものたちをのぞいて
たくさんのとりさんやどうぶつさんたちで「あったか池の森」に小道を作ることにしました
翌朝
みんなはとっても早起きをして 
太陽さんが顔を出す前のすこおし明るくなった頃
とりさんたちは四つのグループに分かれ
森のうえを四方向に向かって飛んで行きました
どうぶつさんたちも四つのグループに分かれ
岩山を降り 森を四方向に向かってそれぞれ歩いて行きました

#創作大賞2023 #ファンタジー小説部門


ふくろうのおやつ 後編
https://note.com/bacchan_canada/n/nc93dc27c3cf5


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