刹那より遥かに短い時の中で

この瞬間に見えた幻は我が生か
この声は誰かの笑い声か
何故、この瞬間に収まったのだ
そんな声を聞いてしまったから
迂闊にも涙を流してしまったのだ

ゼロコンマ１秒遅かったら
もう半オクターブ低かったら
もう数センチずれていたら
もう１オンス軽かったら
ここに居なくて済んだのに
こんな美しい歌を聞かずに済んだの
無いことに気づくこともなかったのに
馬鹿みたいに数字を追っかけて、アドレナリンを出し続け、それを幸せと呼ぶことが出来たのに

でも、ここにいてしまったから
その横顔を見てしまったから
嘘みたいに心を抉る旋律に出会ってしまったから
今日も息を吸ってしまったのだ
限りある生命を殺めてしまったのだ

教えて欲しい
儚く消えていくこの世界で
歌うことの意味を
踊ることの価値を