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不完全な未熟な

 みなさんは好きな季節ってありますか。
 ぼくは一番夏が好きで、その次に秋、冬が好きです。夏の終わり、鈴虫が鳴きはじめてしばらくしたあの日、窓をあけて寝ようとすると肌寒く感じるあの時間帯がいちばん好きです。

 最近仕事でしか文章を書いてなくて、書いていて心地のいい文章というものからだいぶ離れていました。リハビリです。


 ぼくのセクシャリティは、男のひとが精神的にも性的にも好きで、女のひとは精神的に好きになることはあるけど性的にはなにも感じない、セックスはできるけどしたいとは思わない、というものです。
 そういえばまだ女のひとを好きになりそうになるときがあります。このひとのこと好きになりそうだな、ぼくのこと好きにさせたいなって思います。好きにさせたいなってちょっと生意気ですね。ゲーム感覚というとなんか違うんですが、独占欲みたいなものなんでしょうか。逆に男相手には思わないんですよね。
 書いていて手が止まったのですが、なんでこれ男相手には思わないんでしょうか。女のひとが相手のときって、絶対おれのこと好きにさせるっていうメンタルだったように思います。いまマッチングアプリで男のひとに会って恋愛を始めるってなったときには、このひとぼくのこと好きなんだろうなとか、あんまりぼくに興味ないなとかなんとなくわかるじゃないですか。そういうことですか、おそらく男のひとってもう既に答えが顔と行動に書いてあって、しかもそれが覆ることってあんまりないこともよくわかっていて、好きにさせたいとかいう状態がないんですね。話が逸れてしまいました。

 ちなみにその「好きになりそうになる女のひと」というのは特定の女性で、そういう意味ではこの二年半くらい片思いしてるのかもしれません。はじめて会ったときに、このひとのこと好きになりそうって思ったような気がします。正確には、前だったらこのひとのこと好きになってただろうな、って思いました。でもやっぱり違うんですよね、男のひとに抱く感情と比べて決定的に何かが欠如している。だからその不完全な恋心はしまっておかないと、相手もぼくも傷つく結果しかないんです。相手はぼくの好きな気持ちがなくなっていって傷つくし、ぼくはその事実に傷付く。そう思って心にしまった恋が、三つくらいあります。ぼくの中では憧れっていう名前をつけています。
 自然に好きになって、付き合って、なんか違うなってなって別れる、そんなことを幾度となく繰り返したので、このセクシャリティは勘違いでもなんでもないんだろうと思います。カミングアウトをしたストレートの友人に、勘違いじゃないのか、気の迷いじゃないのか、また女性のことを好きになることがあるんじゃないのかってたまに聞かれたりするんですが、そうだったらどんなによかったのか。あなたの周りになにかに辟易しているひとがいたとき、簡単にそういうことは言ってあげないでください。その問答は本人が何回も何回も重ねています。そうであるじぶんを否定したいために何回も何回も問い続けて、諦めて、それでも前に進もうとじぶんの生きる向きを決めて震えながらそこに立っています。

 同じ村で知り合ったひとにめちゃめちゃ罵られたことがあります。バイセクシュアルは甘えだ、不完全だ、未熟だ、どっちつかずのいいとこどりでずるい、嘘つきだ。もしかしたらそのひとはバイに傷つけられたことがあるのかもしれませんが、そいつはぼくじゃないです。ぼくのこと傷つけていい理由にはならないので、お前は一生幸せになるなと心の中で呪いました。じぶんの心を守るために相手を傷つける人間は死ぬときにひとりです。もしくは同じ性質のひと同士共依存してぼこぼこに傷つけ合うのかもしれません。
 そんなことを言いつつも、結局そのひとから言われた不完全とか未熟とか、そういう言葉たちがぼくの中で悪さをするときがあります。バイであることもそうですが、女のひとのことをすべての意味では好きになれないという意味でも、不完全だなと思います。

 そのこじらせおばさんに会う前、はじめてマッチングアプリで会ったひとと、右も左もわからないまま、でもそういうことを経験したいという気持ちがあってそういうことをいたしたのですが、ぼくはその日のその後、その彼の前で大号泣しました。ぎゃん泣きです。わんわん泣きました。
 もう後戻りできないこと、同じ感情を女のひとに対して抱かないこと、だけどいままで好きだった気持ちは本物だと思いたいこと、嘘じゃないもん、嘘じゃないもんって涙がとまりませんでした。あれ、ぼくっていつも泣いてますかね。その彼は、数個下の若者が人生の岐路にたっているのを見て優しくしてくれました。俺もそういうことあったよとか俺がお前を守るとか覚えてませんが優しい言葉をかけて背中をさすってくれたような気がします。ちなみに全然タイプじゃなくて、好きでもない男とはじめてをしてしまったという自分自身に対する嫌悪感も含めて泣いていたので、その彼とはそれっきりです。

 どの性別に対してどういう感情を抱いてどのくらい欲情するのかなんてひとそれぞれなので、完全とか不完全とかそういう性質のものじゃないです。グラデーションっていう表現するひともいますがぼくの中ではあんまりよくわからないので、ひとそれぞれって言い方がしっくりきています。そしてそもそも不完全とか未熟とかってひとに向ける言葉じゃない。だから、もちろん自分自身にも向けていい言葉じゃないです。いまはもうじぶんの性質を理解して、不必要にだれかが傷つく道を選ばないと決めたり、じぶんが幸せになるための生き方を決めて、それにむかってちゃんと歩いている、十分です。だからそろそろ、ぼくはぼくのことをそろそろ許してあげてください。

 完全にリハビリですね。読んでくれてありがとうございました。
 以上です。よろしくお願い致します。

 


 

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