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今すぐ読める作品紹介「肉と息」

今回は、以前入選した賞を紹介します。

2017年、エッセイコンテスト「香・大賞」の第32回において、「肉と息」で佳作に入選しました。

上のURLで、拙作もお読みいただけると思います。

香・大賞は毎年12月が締切です。「香り」について表現したエッセイを募集しています。字数が800字ほどと短いので、応募しやすい賞だと思います。

当時は食肉加工のアルバイトをしていました。休憩時間、近所のモスバーガーで昼ごはんを食べながら、このエッセイをノートに書いていたのをおぼえています。

書いている途中で高校の同級生のお母さんに会いました。「えらいね、勉強してるの」と言われ、笑ってごまかしました。同級生は、そのときすでに教員になって立派に働いていました。

応募してから数ヶ月が経ち、佳作入選のお知らせがありました。素直にうれしかったです。

6月の授賞式に招待されました。

交通費・宿泊費は主催者側が持つ、ただし交通費に関してはあとで清算する、というかたちになっていました。

地元から新幹線で京都へ行くとなると、わりと高くつきます。当時、あまりお金のなかった私は父に事情を話し、とりあえずの京都行きのチケット代だけ借りました(情けない)。

手配していただいた宿は、「三井ガーデンホテル京都新町別邸」というめちゃくちゃ豪華なホテルでした。

お金を借りている身分なのに。

二人まで宿泊できるということだったので、名古屋の友人を呼んで、いっしょに泊まりました。大学をやめて以来の再会でした。

授賞式は平安神宮で行われました。

一人ずつ担当者の方が付き添って接待してくださりました。まず控え室に通され、このとき初めてもらった「お車料」で、交通費を無事回収しました(あとでそのまま父に返しました)。

庭園でのフォトセッション、受賞作の朗読鑑賞、「レセプション」という立席パーティーでの談話など、本格的な式典で緊張しました。

私は佳作なので(なのでというのも変ですが)、ひかえめな態度で参加しながらも、選考委員の方々にひとりずつお話を聞かせていただきました。

なんでも、ある委員の方はとても推してくださったのですが、他の方が「エッセイとしてはどうなのだろうか」「余韻や味わいはあるのか」と疑問を呈したので、佳作に落ち着いたそうです。

まあそんなものかもしれません。評価を気にするより、自分の書きたいものを書くのがいいのだと思います。

みなさんやさしくアドバイスをくださったので、田舎から出て行った私はとてもありがたく拝聴しました。

君はこれからも文章を書いていきたいんだろう、頑張れ、こんなの踏み台だ、もっと上を目指せ、と熱く励ましてくれる方もいらっしゃり、うれしかったです。

まだまだ頑張ろうと思いました。

やがてレセプションもお開きの時間になり、余っていた小さな寿司やうどん、一口サイズのサンドイッチ、マリネやケーキなんかを、友人と二人、次から次へと処理させていただきました。担当者の方は笑っていました。

夜は京都の「肉なべ」のお店でごはんを食べ、酒を飲み、ホテルの大浴場に入りました。

次の日はまた大浴場に入り、朝からそばを食べ、コーヒーを飲み、パンケーキを食べました。普通の楽しい旅行です。

帰りもまた新幹線に乗り、プリングルズのポテトチップスを食べました。後半は食べてばかりでした。

今でも友人と「あの旅行は楽しかった」という話になります。

こんな話をする記事ではないはずだが。

この年は、小説やエッセイを書きまくり、全部で23個の賞に応募していました。そのうちのひとつが「香・大賞」です。

一年間であれだけたくさん書いて送るという行為にも、良い部分・悪い部分があり、それらすべてふくめて学ぶところがあり、そして大きな飛躍もあった一年だったと思っています。

入賞とか、式典とか、旅行とか、賞金とか、思い出がきらびやかであればあるほど、そして過去に遠ざかるほど、ありえないまぼろしみたいに思えて、ショボい毎日がより身に迫る感じがして、不思議と自分を笑えるようになるみたいです。そのために頑張ってるんじゃないだろうが、バカ、と自分に言い聞かせることができます。少なくとも私の場合は。




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