KB

地方在住の会社員。日々の出来事、小説、エッセイなどを投稿します。

KB

地方在住の会社員。日々の出来事、小説、エッセイなどを投稿します。

マガジン

  • 今すぐ読める作品紹介

    私の書いた文章の中から、ウェブで公開されている「今すぐ読める」ものをまとめています。

  • 短編集「南日本文学賞候補作」

    南日本文学賞の候補に選ばれた短編をまとめました。「バケツ湾」「火山の息子」の2作です。

最近の記事

  • 固定された記事

かちどき橋の女 (2019/小説/阿波しらさぎ文学賞一次選考通過作)

小説を公開します。 今回は、昨年書いた「かちどき橋の女」という短編です。原稿用紙で15枚、文字数は4000文字ほどです。 こちらは、昨年、「第2回阿波しらさぎ文学賞」という賞に応募しました。 「短編」というよりは「掌編」に分類される長さの小説だと思います。あれこれ展開しようと思うと、いろいろな部分を削り、省略し、詰めていかなければなりません。 その作業を私は苦手としていたので、この賞をひとつのトレーニングだと思って取り組みました。設定の段階ではあえてたくさんの内容を盛

¥100
    • 6月4日(火)〜擬似独身日記2024

      6月4日(火) 妻がヴィパッサナー瞑想で家を留守にするあいだのことを書こうと思って始めたが、だいぶ期間が空いてしまっている擬似独身日記、である。 そういえば、妻から手紙が届いていた。空港から送ってきたらしい。 今から出発するよ、と書かれていた。「粋」なことをするものだ。 返事を書こうにも、こちらから向こうへ出すことはできないし、かりに到着しても、向こうはヴィパッサナー瞑想の最中だから、読まれないだろう。 その手紙の中で、メダカに餌をやるように書かれていたのを思い出し、朝

      • 6月3日(月)〜擬似独身日記2024

        6月3日(月) 妻が「ヴィパッサナー瞑想」へ出かけた擬似独身生活、最初の土日をいつも通りに過ごしてしまい、なにかやらねばという衝動に駆られる6日目である。 知り合いや仲間たちと一緒に船に乗せられ、脱出を賭けたゲームがいよいよ始まる、というところで目が覚めた。 昨日のサーフィンで波ではなく調子に乗ったせいか、肩や背中が筋肉痛である。 アイスコーヒーを飲んで仕事へ行く。 昼の休憩中に、旅行の計画を立てる。 妻が「ヴィパッサナー瞑想」へ行くと決まってから、私もせっかくだから

        • 6月2日(日)〜擬似独身日記2024

          6月2日(日) 妻が「ヴィパッサナー瞑想」へ出かけて連絡も取れなくなったために、独身の気分だと、ひとりで夜のドライブへ出たりするが、みずから浴びにいく「エモ」は別にエモくないと感じて目覚めた、5日目である。 休日。8時頃起きる。 支度をして車で出る。 途中でセブンイレブンに寄ってドーナツとヨーグルトを買って食べ、海へ向かう。 先週の日曜に引き続き、サーフィンをする。 サーフィンを始めて一年くらいになる。ほんのわずかずつではあるが上達している。今日は乗りやすい波だった

        • 固定された記事

        かちどき橋の女 (2019/小説/阿波しらさぎ文学賞一次選考通過作)

        ¥100

        マガジン

        • 今すぐ読める作品紹介
          4本
        • 短編集「南日本文学賞候補作」
          2本
          ¥150

        記事

          6月1日(土)〜擬似独身日記2024

          6月1日(土) 結婚して2年になる妻が「ヴィパッサナー瞑想」へ出かけて連絡も取れないために擬似独身生活を送っていることを、なるべく誰にも言わないつもりが、少しずつ言いたくなってきた4日目である。 休日。 朝、9時頃、ジョギングへ出る。 帰ってシャワーを浴び、ハンドドリップのコーヒーを淹れる。 詩を書く。 最近、小説だけでなく、詩作に取り組んでいる。今回はとりあえず2編、某賞に応募するものを書いている。そのうち一編の書き直しを進める。 朝から運動してコーヒーを飲んで詩を

          6月1日(土)〜擬似独身日記2024

          5月31日(金)〜擬似独身日記2024

          5月31日(金) 妻が「ヴィパッサナー瞑想」へ出かけて連絡も取れないから、この期間、独身の気分を味わおう!と思いながらも、結局いつもの日々を送ってしまいそうに感じはじめた、情けないようでたくましくもある3日目である。 朝から雨が降っていた。 ジャンパーと帽子を身につけてジョギングへ出た。最近、適度に走らなければ、足の血流が悪くなってムズムズするのだ。 「むずむず脚症候群」という病気が、本当にあるらしい。ちなみに私は大学時代、「むずむず脚症候群になっている」という嘘くさい理

          5月31日(金)〜擬似独身日記2024

          5月30日(木)〜擬似独身日記2024

          5月30日(木) 妻がヴィパッサナー瞑想へ出かけたため、連絡も取れない2週間の擬似独身生活、その2日目である。 早起きした。肌寒かった。 少し小説を書き進めた。コーヒーを淹れて飲んだ。バウムクーヘンとガトーショコラを朝食にした。なんだか優雅に聞こえるが、これは先日出席した親友の結婚式でもらった”引き菓子”である。 おいしかった。 私たち夫婦は結婚式を挙げていない。フォトウエディングだけで済ませた。(これに私の二人の妹はどちらも来ていないから薄情なものである) 私には

          5月30日(木)〜擬似独身日記2024

          5月29日(水)〜擬似独身日記2024

          5月29日(水) 今日から13日間、妻がいない。 連絡も取れない。 妻は普段、オーガニックレストランで働くかたわら、フリーでヨガのインストラクターをやっている。 それでこのたび、ヨガの自己修練の一環として、「ヴィパッサナー瞑想」に参加するのだ。 この「ヴィパッサナー瞑想」というのは、国内の施設にて集団で瞑想をおこなう合宿のようなものだ。期間内はスマートフォン等のデジタル機器を持たず、日常を遮断し、瞑想に集中するのだという。 わりと人気のあるイベントらしい。妻の知り合いに

          5月29日(水)〜擬似独身日記2024

          お湯に焦がれて(エッセイ/2017)

           家の給湯器が壊れた。蛇口から水しか出なくなった。母が、騒いだ。風呂に入れない。お湯で洗いものもできない。しかも修理に五、六十万かかるという。 「ショックすぎて逆にテンション上がる」  母はそう言った。どういう意味だろうか。  業者の提案により、給湯器は買い換えることになった。それでも工事は一週間後。私と母と妹の、お湯の出ない家での生活がはじまった。 「油汚れが落ちないのよねえ」  スポンジに洗剤を垂らし、母が言った。きれい好きで、特に食器洗いにうるさい母は、皿を念入りにこす

          お湯に焦がれて(エッセイ/2017)

          ただの夏だった (エッセイ/2018/「新春文芸」応募作)

          「平成最後の夏って、あれみんな本気で言ってるの?」  そうたずねると、友人はなぜか不愉快そうな表情で、 「平成が終わるのは本当だから、本気なんじゃないの」  と答えた。それ以上、問いつめてはいけない気がしたので、そこでその話は打ち切り、後日、別の友人に同じ質問をしてみた。すると友人は、 「平成最後の夏と言って騒いでる人は、毎年夏には騒いでいるんだよ」  とすました顔で答えた。 「へえ。何かイデオロギー的なものがあって、平成最後の夏と言ってるんじゃないんだね」 「

          ただの夏だった (エッセイ/2018/「新春文芸」応募作)

          この町の川(エッセイ/2017/「新春文芸」応募作)

           秋のはじめに風邪をひいた。いつも長引くたちだ。  先月、保育士として働き出したばかりだった。疲れがたまっているのかもしれない。  今日もいつもの道。咳をしながら歩く。職場への二十分の道のりには、ビルがいくつも建ち並んでいる。スーツ姿の男女が、せわしない足取りで、朝の中を急ぐ。銀色の建物を見上げ、ふと思う。  もう私はこんな場所で働くことはないんだろうな。  パーカーのポケットに両手を突っ込んだ。長袖を着られるよろこびは、肌と布のこすれあう感触にある。首筋に当たる風の

          この町の川(エッセイ/2017/「新春文芸」応募作)

          ねずみの涙のかがやき(エッセイ/2016/「新春文芸」応募作)

          「ねずみじゃ。電話線をかみちぎったと」  食事中、畳敷きの居間がふるえたとき、祖母がつぶやいた。 「いつの時代だよ」と父はあきれて笑った。見上げると、天井裏をずぶとい足音が過ぎていった。  僕はねずみのせいでつながらなくなった電話を想像した。今日はスマートフォンを家に置いてきた。親戚からもらい、祖母が大胆にも全部からあげにしたクロダイの骨が、食卓で潮のにおいを放っていた。  どうしていやなことばかり思い出されるのだろう。   僕は五月に大学をやめた。授業に出るど

          ねずみの涙のかがやき(エッセイ/2016/「新春文芸」応募作)

          今すぐ読める作品紹介「肉と息」

          今回は、以前入選した賞を紹介します。 2017年、エッセイコンテスト「香・大賞」の第32回において、「肉と息」で佳作に入選しました。 上のURLで、拙作もお読みいただけると思います。 香・大賞は毎年12月が締切です。「香り」について表現したエッセイを募集しています。字数が800字ほどと短いので、応募しやすい賞だと思います。 当時は食肉加工のアルバイトをしていました。休憩時間、近所のモスバーガーで昼ごはんを食べながら、このエッセイをノートに書いていたのをおぼえています。

          今すぐ読める作品紹介「肉と息」

          朝夕、涼しくなり窓を開けて過ごす方が多くなる時期です

          屁理屈というか、難癖をつけたいだけなのだが、前回のラー油に引き続き、気になっていることがある。 ただ、今回はラー油の件以上に、共感されないと思う。 私が完全に間違っている可能性もあるのだが、毎日、目にするものなので、気になってしょうがない。 私の住んでいるアパートのエレベーターに、こんな注意書きが貼ってある。 注 意 喚 起ご入居にあたり、下記の点にご注意ください。 共用部分での喫煙、私物を置く事は消防法で禁止されております。 また、朝夕、涼しくなり窓を開けて過ご

          朝夕、涼しくなり窓を開けて過ごす方が多くなる時期です

          ラー油は想像以上に効きません

          ふと思い出した話。あまり共感されないが、ここに書いてみる。 数年前、友人と、油そばの店へ行ったときのこと。 その店の油そばは、運ばれてきた器の中へラー油や酢をかけ、混ぜて食べるのが推奨されているらしく、カウンター席のすぐ目につくところにも、食べ方の説明が順を追って記されていた。 「①ラー油を入れます」の説明のあと、器およびラー油の瓶のイラストとともに、こんな文章が書いてあった。 「ラー油は想像以上に効きません!思い切ってかけてください」 これが私は気になったのである

          ラー油は想像以上に効きません

          小説を公開しました(2020/4/29)

          以前書いた小説を2本、公開しました。 それぞれ、南日本文学賞の候補作となった短編小説です。 冒頭部分は無料でお読みいただけます。それ以降の部分は、ご購入いただいてお読みいただくかたちとしています。 有料マガジンとして、セット販売もしています。 こちらのほうが、少しだけお買い得です。 初めての本格的な有料noteです。物は試しと思い、投稿しました。どうぞよろしくお願いいたします。

          小説を公開しました(2020/4/29)