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リュックの中身は


我が家では、最近夕飯が済み、一息ついた頃に買い物担当である夫が何かしらデザート的な物を出してくるという事が続いてる。

反抗期真っ只中の我が子と少しでも交流のきっかけをと考えてのことなのかもしれない。

ある日はリュックから夕方のスーパーで値引きになっていた戦利品の和菓子。

また別の日はリュックから、会社の方から頂いた大きなシャインマスカット。
思わぬ大物に子供は大喜び。


その日も、何かしら出てくるかもしれないと私は内心期待していた。

ご飯が食べ終わり案の定、夫が動いた。
側に置いていたリュック をゴソゴソしている。

今日は一体なんだろう。チョコとか甘い物が食べたい気分。ついつい期待してしまっていた。


ゴン、ゴン。


目の前のテーブルに何だか見た事のない物が二つ置かれている。

果物なのだろうとは予測できたものの、それが一体なんなのかは分からない。初めて見る果物だった。

緑色で少し楕円形。テーブルに置いた時の音からして硬いのだろうと推測。

「これ何?」

チョコやスイーツを期待していた私は少しぶっきらぼうに聞いた。

「ポポーです。」


聞いた事が無かった。


人も生きていれば、楽しい事や辛い事。
色んな事が起きるものだ。
時には、夫がリュック から得体の知れない
ポポーなる物を出してきたりもする。

「ポポー?」

「ポポーです。」

「え?何?これ」

「ポポーです。」

腹が立ってきた。
ポポーです。しか言わない気なのか。

「果物なの?」

すると、夫が台所から果物ナイフを持ってきてポポーを二つに切り分けた。

中には大きめな種があって、果肉は白ぽかった。

誰も手をだそうとしない。

「食べてみてよ。」私が夫に促した。

キュウイなんかを食べるように、スプーンで果肉をすくって食べた。

無言。

そして、無言のままにポポーをこちらに差し出してきた。

子供が多少、びくつきながら一口。


「もう、いらない。」
そう言って、私に渡してきた。

ここまで、誰も味の感想を言ってくれない。
しかし、子供の一言で、ある程度の覚悟をしなければならなかった。

おそるおそる口にポポー投入。

もの凄く甘いわけでもなく、もったりとした口あたり。アボカドみたいな食感だった。

マズイわけではない。でも、これが正解の食べ頃だったのか、これが通常運転の甘さなのか、なんなのか全く分からない。

結局、残りのポポーは夫が全て食べる事になった。
それにしても、なぜポポーがリュック から?と尋ねてみると、会社に出入りしている方から頂いたそう。

畑をやられていて、時に採れたての野菜や手作りのジャムなどをくれるのだ。

それが、今回はポポーだったというわけ。

2ついただいたポポー。
実はあと一つはまだ、食べずに残っている。
熟してきて、おそらく今が食べ頃だと思われる。

しかし、ファーストポポーの記憶がまだ新しく誰も手をつけずに未だ熟し続けている。

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