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タレントは3回売れる必要がある?

出所は不明ですが「タレントが人気になるには3回ブレイクする必要がある」という言葉を以前見かけました。

調べてもあまり具体的な話は出てきませんでしたが何となく体感的にうなずけるところがあり、例えば芸人さんが賞レースで活躍し(1回目)、その反響で各バラエティ番組に出演し話題となり(2回目)、レギュラー番組の獲得や人気コンテンツ等に進出する(3回目)、という感じでしょうか。

もしくは、無名なタレントが不思議な発言やスキャンダルでバズり(1回目)、人気番組の常連として一般層に知られ(2回目)、その勢いでメジャーなドラマ出演や歌等でブレイクする(3回目)、というのもありえます。

アイドルであれば、所属するグループが話題になり(1回目)、その代表メンバーとしてメディアで活躍(2回目)、卒業・独立して個人で売れる(3回目)、というのもよくあります。


もしかすると3回という数字に深い意味はなく、3回くらい世間に知れ渡る何かがあれば人気だと言える、という程度の話かもしれませんが、この話をもう少し深堀りしたらヒットのパターンが見つけられるのではと思いました。

つまり、3回世間に見つかることを目指しタレントの露出と知名度向上の計画を立てて実行できれば、人気者を作ることができるかもしれないということです。

今回はそれを、よく知られた「ザイオンス効果」と「エビングハウスの忘却曲線」をもとに、3回ブレイクしたら人気者という言葉の根拠を勝手に考えてみたいと思います。


ザイオンス効果


これは単純接触効果とも呼ばれ、接触回数が多いほどその対象に好意を抱きやすくなる、という古典的な心理学的効果です。
1968年にザイオンス氏が発表したのが名前の由来ですが、これはもうすでに常識と言えるくらい知られています。

しかしある研究によるとその接触回数は10回程度が上限で、それ以上の回数を重ねても効果が逓減してしまうそうです。
またもう一つ重要な点は、ネガティブな印象が強い場合は回数を重ねるごとにマイナスイメージがより強まってしまうということです。

タレントの人気を得るという目的で考えると、出演を増やし単純接触を増加させることで人気上昇は確実に見込めるが、それには上限がある。
そしてもうひとつ、いわゆるゴリ押し的な売り出し方によるメディアへの登場は、一度嫌われるとひたすら逆効果になる恐れがあるということです。


確かに、メディアに長く登場していても人気が上昇するわけでもなく停滞している人はいますし、またなぜか特長も芸もないのにゴリ押しされた謎の新人がその反動で嫌われてネットで叩かれているのをよく見ます。

単純接触効果による記憶は長くは続かない=一度ブレイクしただけではそのうち忘れ去られるから、少なくとも2回以上はブレイクしないと世間に覚えてもらうのは難しい、ということかもしれません。


エビングハウスの忘却曲線


これはドイツの心理学者エビングハウスが発見した記憶に関するメカニズムで、脳は20分経つと覚えた内容の4割、1時間で6割、1日で7割、1か月で8割を忘れてしまうそうです。

現在多くの学校や塾・予備校等でこれを記憶系の学習に応用し、授業の内容を完全に忘れる前に繰り返し復習して記憶を定着させるカリキュラムが導入されています。

ところで、忘却曲線に逆らって効率的に記憶を定着させるには具体的にどうしたらよいか?と考えたとき、例えば20分おきに忘れた4割を常に覚え直し続ければ常に100%の記憶を保つことができますが、それはちょっと現実的ではありません。

ある説によれば、覚えた翌日、3日後、10日後、30日後、90日後に記憶を反復すると最も効率的に記憶を維持できるそうです。


これを芸能界に適用すると、出演したドラマが開始直前直後の宣伝で世間の注目を集め、その1か月後くらいに面白さが認知され固定客がつき、3か月後の最終回に盛り上がりが最高潮に達し人気を不動のものとする、という感じでしょうか。

偶然かもしれませんが、「逃げ恥」「半沢直樹」「Silent」の視聴率推移はよく似ていて、2話目で上昇、5~7話でまた上昇、最終話が最高数値となっており、ちょうど視聴者が記憶を維持しやすいタイミングでドラマが盛り上がっていました。


世間の記憶に残る方法


ドラマが人気作として記憶に残るには、開始直後・中盤から後半・最終話の3回人気が上昇することが一つの条件なのかもしれません。
そしてこれらのドラマに出ていた俳優たちはこのヒットで大きな人気を得ることができました。

このように少し強引ではありますが、3回売れれば人気タレントと言える、という謎の俗説は、もしかしたら人の記憶という側面から考えると合理性があるかもしれません。

あなたがまだ売れていない若いタレントを推しているとして、事務所の売り出し方が理に適ったやり方であれば成功確率が上がるはずですが、そうでなければ偶然や運頼みになってしまうでしょう。

世間の人気という、ふわっとしていて目には見えないが確実に存在するものを、このようなメカニズムで把握または予測しようと考えてみるのも面白いのではないでしょうか。




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