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マイナポイントのサービス設計がやっぱり良くなかった

以前にマイナンバーカードを作ったのですが、マイナポイントのキャンペーンに応募していなかったので、やってみることにしました。

詳細は上記を見ていただくとしてざっくりいうと、

・新規入会で5,000ポイント
・銀行口座紐づけで7,500ポイント
・保険証として登録すれば7,500ポイント

計20,000ポイントもらえるということで実際にやってみたのですが、残念ながらこのサービス設計はいただけない部分があると感じました。

今まで国や公共のITサービスの出来がよかった記憶があまりないので、今回も期待せずに臨みましたが、これだけ世間でITを利用したサービスが普及しているにもかかわらず、それに取り残されていることを認識せざるを得ませんでした。

ではどの部分が良くないのか考えてみることにします。


個別最適で一体化していないサービス設計


前提として、新規入会、銀行口座登録、保険証登録の3つで20,000ポイント提供という枠組みを作るにはおそらく裏側での非常に大変な努力があり、そのおかげで利益を得られていることには感謝すべきだと思います。

しかし、それらのタスクが一体化しておらず別々の作業として行う必要があり、面倒さが3倍増しています。

安全のため毎回認証が必要なのは仕方がないですが、毎度毎度カードをかざして読み取ったりIDとパスワードの入力を行うのはとても煩雑です。


私は仕事でWebやアプリのサービスに関わったことがあるのでリテラシーは高いほうだと思いますが、それでも、マイナンバーカード申込の際の認証でつまずき、マイナポイント登録のための認証でまたつまずき、決済サービスの選択でもつまずきました。

その間、まるで役所で窓口をたらいまわしにされているような画が思い浮かび悲しい気持ちになると同時に、途中であきらめてしまう人が必ずいるだろうと思いました。

いろいろ難しいんだろうとは思いますが、認証や申込という作業は出来るだけ一度で済ませるようにし、システムの内部で3つのタスクに分けて各担当部署に情報を送る形であれば良かったのにと感じます。


なぜこのようなシステムになったのか


推測ですが、「2万ポイント」という数字の達成が先にあり、入会は総務省、銀行口座は各自治体、保険証は厚生労働省・・・みたいな(100%推測です)、各省庁や団体から登録数増加のために出せるインセンティブをかき集め、2万という数字を作り上げたように見えました。

その実現のため、マイナポイントの担当部署が必死に各省庁や団体の横連携を図り、各システムを組み合わせてひとつの形に見えるよう工夫したのではないかと思います。

もしこの想像が当たっていたら、もし自分なら逃げ出したくなるようなきついサービス開発だっただろうと思い、多少でもサービスの内側を知る人間として同情の念を禁じえません。


しかしそこまでの努力にもかかわらず、結局中身は一体化されていないつぎはぎのシステムのため、ある程度のITリテラシーがないとそのつなぎ目を越えられず、使いづらいサービスとなってしまいました。

最初に全体を俯瞰して最適な仕組みを設計できず、無理やり複数のシステムを結合したために起きた問題のように感じます。


こうしたら良くなるのでは?


当たり前ですが、何より利用者を最優先に考えることが必要です。
アプリのUI(ユーザーインタフェース)はもちろんですが、UX(利用体験)そのものを見直し、利用者が何事もなく使えるように配慮する。

そのためには、このサービスを利用してほしい人々をよく観察し、どんな時に困るか、迷うか、利用することを止めてしまうかを知ることが大事です。

その目線で、サービスを使う人が必ず通る経路(トップページ・会員登録や認証・主なサービスメニュー・問い合わせ・退会など)を使いやすく整備するのは、メジャーなスマホアプリのサービス企業ならどこもやっていることで、決して難しいことではありません。

デジタル庁は民間の優秀なIT人材が多く参加しているようなので、それらの人々の能力を生かせれば実現できると思います。


もうひとつ、自分の経験を含め非常に強く思うことは、サービスの方向性を決める責任者のITへの理解度が低いと、それがサービスの品質に直結してしまうということです。

いくら開発者が良いサービスを作ろうとさまざまな提案をしても、決裁者がその必要性やコストを理解できなければ、その提案は決して採用されることはありません。

そんなリーダーでは、そもそもIT技術を利用して実現したいゴールを定めることも、それに最適なシステムを見極めることも出来ません。
日本の公共サービスのIT化に際して、おそらくこの問題が非常に大きく影響しています。

まずはITの教育レベルを上げ、誰もがある程度理解できる状態になり、ITに関わる政策のリーダーに「ちゃんとわかっている人」が選ばれるようになることが重要です。

残念ながらITリテラシーが低いリーダーからは決して高品質のITサービスは生まれないので、遠回りかもしれませんが、教育から始めるのがよいと思います。



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