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ルンバは条件反射で掃除する

みなさんの家にはロボット掃除機はありますか?

我が家のロボット掃除機はもうかなり古くてしかも低価格帯のルンバで、頻繁に使わないので7年ほど経った今でもまだ現役で利用できています。
ブラシとバッテリーは一度交換しましたがそれだけです。

別の掃除機がなぜか2台もあるのでルンバはたまにしか動かさないのですが、これを動かすたびに、
「こいつはいつ見ても同じところを繰り返し掃除してるな」
と感じます。

当時のルンバは、AIは走行パターンの選択に使われるのみで、繰り返し部屋内を往復し障害物に当たっては避けながらごみを見つけるという、無駄の多い条件反射的なアプローチを取っていました。

もちろん今のルンバはそうではなく、早く確実に掃除できるようセンサーで部屋をスキャンし、AIがコンピュータ内でマッピングされた部屋を一度で無駄なく掃除できるようになっています。
センサー、AI、バッテリーなどの進化がそれを可能にしました。

このようにルンバはいきなり理想形を目指すのではなく、その時に実現可能な方法でまず市販し、フィードバックを得て改善を繰り返すという方法を取っていました。

ルンバのiRobot社は1990年(平成2)に設立され、ロボット掃除機という新分野で12年かかってようやく商業的な成功を収めたそうで、そのようなチャレンジ精神と現実的で地道な改善の両輪で今や不動の地位を獲得しています。


宇宙開発のPDCA


日本で宇宙用ロケットの開発をリードしているのはJAXAです。

JAXAは他国と比べて低予算でも高い技術を実現しているという非常に優秀な組織です。
ロケットの打ち上げ失敗率も非常に低く、何と2005年から48回連続で打ち上げに成功しています。すごいですね。

ただ裏を返せば、日本の宇宙事業は予算が少ないため失敗が許されず、精度をひたすら高めて職人技で勝負する技術力の高さが必須であり、巨大な予算や開発規模がないための苦肉の策とも言えます。

そしてその比較対象となるのは、テスラのイーロン・マスク氏が創業したSpaceXです。

マスク氏の手法は、未来のビジョンを語って投資を募り、再投資して実績を上げ、時価総額を上げる。
その資金を総投入して多少の失敗など気にせず開発を繰り返し、民間の宇宙開発として他の追随を許さないレベルに達しています。

すでに2021年に、打ち上げたロケットを無事に自動で着陸させるという世界で唯一の技術を実現しています。
ただし当初は着陸後に派手に炎上してしまい、実験は失敗に終わりました。

しかしSpaceXはそのような失敗も織り込み済み(?)で、豊富な資金力で実験回数を重ねて成功確率を高めるという強力なアプローチを行っています。


現代のシュリーマンを育てる


私は無条件にアメリカのやり方がよいと賛成はしませんが、革新的な技術やゴールは普通にやっていては一生たどりつけないのも確かです。
JAXAのようなアプローチは魅力的ですが、SpaceXのような巨大な資金力と物量に勝つのは至難の業です。

「トロイの木馬」の発掘に成功したシュリ-マンという人がいますが、彼は資産家になった後の人生の後半に、ただの伝説で実在しないと思われたトロイアの遺跡を発掘しようと挑戦を行い、諸説ありますが実際に成功してしまいます。

彼はその実現のために多くの私財と時間を使い、執念の研究で遺跡の位置を特定し、無許可の発掘(盗掘?)まで行ったという逸話が残っています。

ルンバやSpaceXに限らず、初めて何かを実現するにはチャレンジ精神とその裏の合理的な努力が必要で、多少の失敗や回り道は気にしない強さも必要だと思います。

社会の側も、そのような新しいチャレンジのリスクを気にしすぎて拒絶するのではなく、それを育てて賢く利用したほうが、大きな成果を享受できる可能性が高まるのではないでしょうか。



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