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氷河期世代の何もしない復讐

就職氷河期世代の皆さん、お元気ですか?

一般的には1993~2005卒の人を指しますが、バブル崩壊後の就職難が最もひどかったと言われる2003年からすでに20年が経ちました。

ご覧の通り、1992年から95年にかけて大学生の就職率が激しく下落し、その直前までバブルの好景気だったせいで、当時の大学生は阿鼻叫喚の就職難にいきなり突き落とされました。

そしてその状況は回復せず、1998年のアジア通貨危機でさらに拍車がかかり、1999年と2003年に底を打ちます。
そこからITバブルなどで一時期回復しましたが、2008年のリーマンショックでまた2年ほど悪化し、その後のいわゆるアベノミクスの時期にようやく回復しました。

もはや懐かしさを感じるこれらの歴史について、今回私もその世代のひとりとして振り返ってみたいと思います。


初期:何が何だか分からない暗い日々


もう、とにかく仕事がないんです。

少し前まで多くの採用をしていた会社が軒並み採用自体を中止し、学生はどうすることもできないまま数少ない採用を行っている企業に殺到し、多くの人が不採用となりました。

最近の氷河期世代批判として、当時の人々に対して努力不足を指摘する若い人の声がXなどにありますがそれは事実誤認です。
採用試験に落ちたのなら努力不足もあるでしょうが、採用中止では何もしようがありません。

企業の採用が一斉になくなるなんていう事態は後にも先にもあの時しかないので、若い方が想像できないのも無理はありませんが、もう少し調べてから発言したほうが良いと思います。

そして私はIT系の勉強をしていたため、幸いとある中小企業にぎりぎりで滑り込めました。
なので当時仕事がなくて苦しんだ多くの人よりは恵まれていると思います。


でもその会社はブラックでした。

まさしく人権などない大手企業の下請けの奴隷で、離職率が凄かった…
若い新人女性が身も心もボロボロになって毎年田舎に帰る、みたいな場所。
あとベテラン社員が悲しいくらい貧乏で精神か体を病んでいました。
だから頑張って会社を移りましたが、その先もまたブラックでした。

そこは今では禁止されている二重派遣を行い、派遣先も奴隷のような労働条件のため派遣された社員が突然逃げ出し捜索願が出され、次にやってきた社員は急に音信不通になったと思ったら今度は逮捕され、というのが私の向かいの席でたて続けに発生し、明日は我が身と思ってまた会社を移りました。

立ち止まって考えることもできないまま怒涛の数年が過ぎていました。
もう本当に二度と味わいたくはありません。


中期:仕事はある、でも24時間のハラスメント


IT系企業(ベンチャー)に移ると仕事は死ぬほどあり、初めてその面では充実した時間を過ごせましたが、とにかくハラスメントだらけ。

ある上司は若い営業補佐の女性を客先でひどいあだ名で呼びつけるような人で、彼の下で私が担当する仕事が遅延した際は、それによる損害として数百万を弁償しろと理不尽に凄まれました。

さすがにお金は弁償せずに済みましたが、それを取り返すために私ひとりで3日徹夜させられ、その後しばらくして倒れました。
あの吐きそうになりながら過ごした3徹は一生忘れません。


そんなドブラック企業に見切りをつけ移った別の会社では、とある超大企業のクライアントの人から昼夜どころか休みも問わず携帯に鬼電され、苦情対応、仕様変更、値引き交渉などをさせられました。

日曜の午後、穏やかな公園で遊んでいたはずなのに、携帯でクライアントからの理不尽な苦情対応を延々とさせられた経験も忘れられません。
あんな会社今すぐ消えてほしいと今でも思います。


後期:ようやく人として普通の生活を目指せるように


そして時は2010年代になり、運よくホワイト企業に移ることができました。
でもいろいろありすぎてさすがにもう疲れた、というのが本音です。

もちろん仕事はまじめにしているし、やりがいもあるし恵まれてもいますが、過去10年以上に渡る精神と肉体のすり減り具合がすごくて、もはや仕事人生の最終段階に到達した感がかなりあります。

あんな人を人と思わず使い捨てられるような仕事ばかりだった平成の混乱状態の中、寝ないで頭をひねって凌いできた自分をただほめたいです。


就職氷河期世代の方で、私のように若いときは苦労をして、その後ようやくある程度やっていけている人に聞きたいですが、そういった「もう十分やりきった」感はないでしょうか?

私の考えですが、氷河期世代の人は私を含めもうかなり気持ちの面で消耗してしまっていて、社会貢献や相互扶助、政治への参加といった自己犠牲が含まれる前向きな活動に消極的な人が多いと思います。

自身が助けられた経験が非常に少ないので助けることに対して常に懐疑的で、そのためか社会に向けた発言もとても少なく、世間に対し「何もしない復讐」をしているように感じます。


労働力不足、少子化といった、人が足りない等による社会問題は、それによって明らかに加速し深刻化していると思います。

でも仕方ありませんよね。
これ以上苦労しそうなことには二度と関わりたくないですから…
どうせ誰も助けてくれないし…


最後に、もう20年以上も前の出来事をぐちぐち言っても何にもならないし、若い人にとっては知らない話だし、そしてあの苦しみはもう忘れてそっと心にしまっておいた方が利口なのも分かっています。

でも、きっと当時のことを未だに思い返してさまざまな思いにとらわれてしまう同世代の人がいるはずで、そういった人のためにもあの忌まわしい記憶を文字で残しておきたいと思っています。




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