マンションを終の棲家にするなんて
「住宅すごろく」という言葉をご存じですか?
昭和の昔は、最初は賃貸アパート、そして賃貸マンションに移り、結婚して分譲マンションを買い、子育ては郊外の新築一戸建てで、といったモデルケースがありました。
私もいつの間に親世代のそういった道をなぞるように進んでいました。
ただそれは、バブル崩壊後の不況で不動産が値下がりしたときに運よくマンションを買い、さらに少し景気が回復した際にたまたま一戸建てを買うべき事情があっただけで、ただの偶然です。
ただ現在はもちろんそんな常識は消えてしまい、マンションにずっと住み続けたいという人が過半数を占めています。
現在マンション住民の6割がそう考えていて、住み替え想定は意外にも2割もいないそうです。
でも私は小規模マンションの管理組合の理事長をやった際にマンション管理の内情を知り、マンションを終の棲家になんてほんとに大丈夫?と疑問を持たざるを得ません。
管理組合という脆弱な組織
お住まいのマンションで理事長や役員等をやられた方なら実感として分かると思いますが、たいていの管理組合というのは非常に細い糸のような信頼関係しかない脆弱な組織です。
もちろんそうではなく、住人が太いパイプで結ばれたマンションもあるでしょうが、多くはただただ無関心な人の集まりに過ぎません。
そしてその信頼さえ、近年多発している管理費や修繕費の急な値上げや高価な設備の修理といった金の問題によりあっけなく瓦解し、短気なお年寄りはキレるわ、無責任な賃貸オーナーは逃げるわ、管理会社は住民と喧嘩できないのでひたすら日和見的な発言しかしないわ、という悲劇がやってきます。
そして結果としてすべての問題が先送りされマンションの修繕は行われず、年々住環境が悪化していきます。
私はそういった問題を垣間見て、自分が住むマンションが本来行うべき修繕等を行えずズルズルと資産価値が下がっていく未来が見えました。
一戸建てに引っ越すタイミングが来たのはちょうどそんな時でした。
でもそのマンションの住人を責める気はありません。
なぜなら高齢の方は急な多額の出費に対応するのが難しく、そういった態度にならざるを得ないのが理解できるからです。
でもそれを知ってしまったあとは、マンションを終の棲家にすることに対する怖さが自分の中に生まれました。
自分も老人になったらあの人達と同じ反応をするはずですから…
立派過ぎるマンションが重荷に
私だけかもしれませんがとても気になっていることがあります。
それは、実は多くのマンションって普通の社会人が暮らすには立派過ぎるんじゃないか?ということです。
10年以上前ですが、バブル期以降に建てられた東京や近郊のマンションを何軒も内見して回った時期があります。
お高いものから小規模なもの、都心近くからけっこうな郊外まで見ましたが、どれも見栄を張るための設備や装置、共用部の豪華な飾りといった無駄に凝ったデザインが多く、でも必要性はあまり感じられませんでした。
それらはマンションの価格を押し上げ、さらに修繕の際に非常にコストがかかるやっかいな代物です。
壁の煉瓦風タイルはただの薄っぺらい装飾なのに張り替えるとすごい値段がする、なんて物件購入前の勉強不足の自分には想像つきませんでした。
そういった設備やデザインが本当に好きなら何も問題ありませんが、特に興味のないそれらの飾りのために不必要な費用を払い続けるのは、私には正直言って難しかったです。
私の結論
高価でしかも長期間保有する家というのは、購入時だけでなく維持管理のための費用が絶対に必要ですが、マンションは共有物のため個人の裁量で修繕内容や費用、更新時期の調整ができません。
多少汚くたって機能してればいいからまだ交換しないでその分別のことにお金を使おうとか、逆にちょっと高いけど最新設備に交換して暮らしやすさを向上させよう、みたいな自由はないのです。
(理事長になって住民を説得し実現するという手はありますが大変です)
もちろんマンションには一戸建てにはない防犯性の高さ、災害にも耐える丈夫さ、共用設備の便利さといった利点があるので、それらとリスクのバランスを考え選ぶのがいいと思います。
というわけで、あなたは終の棲家に何を選びますか?
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